娘さんに絵本の読み聞かせをする、フリーアナウンサーの高島彩さん

2人の娘を育てながら、フリーアナウンサーとして活躍している高島彩さん。このほど、初めての子育てエッセイ『彩育 伝える、変わる。』(1,400円・税別/KADOKAWA)を出版した。

今回は、同書にも率直な言葉でつづられている子育ての悩みや、仕事への思いなどを、インタビューでお聞きした。

自身も本に救われた

――なぜ育児についての本を出されようと思ったのですか

書きためていた子育ての記録をまとめたいという思いがあったのと、私自身、子育て中に読んだ本に、救われた経験があったからです。

私がはっとさせられたのは、絵本『ぐりとぐら』の作者、中川李枝子さんの育児本の中に出てきた「子どもは子どもらしいのがいちばんよ」という言葉です。

いつのまにか「お利口なお子さんですね」と言われることに喜びを感じるようになっていた頃、泣いてわがままを言うわが子を前に、イライラとため息ばかりついていました。しかしその言葉を読んで、そうだ、子どもなんだもの、思う通りにいかなくて当然だわ。むしろ、子どもらしくて良いじゃない! と思えたら、とても気持ちがすっきりしたのです。「ちゃんとしなさい」という必要はないのだと、思えるようになりました。

子育てに悩んだり、陰鬱な気分になったりしたときに、面と向かって言葉を投げかけられても、受け入れられないことってありますよね。でも本であれば、読みたいときにいつでも読むことができて、なんとなく開いたページで出会った言葉が、気を楽にしてくれることもあると思いました。

言えなかった「ミルクを足している」という言葉

――著書の中でも、特に授乳についての悩みや葛藤は、共感するお母さんが多そうです

1人目の時は、母乳育児にこだわりを持っていました。出産後、3カ月間は母乳が思うように出ず、ミルクを足していたのですが、「おっぱいで育てていて偉いわね」と声をかけられると、とてもミルクを足しているだなんて言えなくて。母乳神話に心を支配されていた時期はつらかったですね。どうしても母乳を飲んでほしくて、1時間おきにおっぱいを吸わせて、睡眠不足でフラフラで、あの日々は"母乳との戦い"という感じでした。

その後はだんだん軌道に乗って、母乳が出るようになったのですが、振り返ってみれば母乳にこだわる必要はなくて、ミルクを足せばよかったなと思います。あの時の精神状態は、「ひとりぼっち」という感じ。周囲は励ましてくれるけれど、母乳を出すのは私だし、母乳が出なくて寝られないのも私ですから。

2人目がうまれてからは、仕事中に子どもを預けることも考えて、母乳メインに少量のミルクを足す混合栄養にしました。そうすると、母乳もよく出るし、「困ったときはミルクが助けてくれる」と気が楽になります。今はミルクやおっぱいに関しては、ストレスゼロです。

とはいえ、他人から「ミルクを足してもいい」と言われても、母乳で育てたいと思うお母さんの気持ちはとてもよく分かります。そういうお母さんも、「ミルクを足すのは悪じゃない」「母乳育児はみんな大変なのだ」と思うことで、息を抜いてほしいなと思います

断乳は、おっぱいにお花を描いた

――断乳のエピソードが書かれているのも印象的でした

2人目を授かったタイミングで、長女の断乳に取り組みました。しかし、本やインターネット上の情報を探しても、「子どものためには卒乳がいい」「お母さんの都合でやめてはいけない」という言葉に出会うことが多く、具体的な断乳の方法はあまり見つからなくて……。なので参考になればと思い、その時の記録をのせました。

――どのように断乳されたのですか

おっぱいにアンパンマンの絵を描く話を聞いたことがあったのですが、私の場合は、お花の絵を描きました。家の中にお花のアートが飾ってあったので、娘にとって、なじみがあったからです。にこにこ笑っているお花が、枯れてなくなるというストーリーを作り、「お花が咲いて、枯れたんだよ。土に返ってバイバイだね」と、娘には、おっぱいにさよならしてもらいました。

娘におっぱいをあげる時間は、私にとって至福の時間だったので、幸せな時間を失うようで、授乳中に見上げて笑うあの顔をもう見られないなんて……と私の方が断乳への悲しみがあったと思います。でも、断乳したとたんよく寝てくれるし、今では、「すっきりした!」と思えるのですが(笑)。