【インタビュー】

森永乳業のカップアイス「MOW」は、なぜV字回復できたのか?

森永乳業のカップアイスクリーム「MOW(モウ)」(手前)

年々盛り上がりを見せる「冬アイス」。暖かい部屋で冷たいアイスクリームを食べる“プチ贅沢”を楽しむ人も少なくない。今やアイスは夏限定の嗜好品ではなく、すっかり通年商品と化している。加えて、大人向けの高付加価値商品や旬のフレーバーを楽しめる商品を、各社が競って発売するようにもなった。

実際、日本アイスクリーム協会の調査によると、2011年からアイスクリームの売上高は右肩上がりとなり、2015年には4,647億円を記録。中長期的に見ると5,000億円市場に拡大することが予想されている。

アイスクリーム類及び氷菓販売金額の推移(出典:日本アイスクリーム協会)

市場が大きくなるとともに、各社がしのぎを削る“アイス戦国時代”に突入。そんな中、2003年に誕生した森永乳業のカップアイスクリームブランド「MOW(モウ)」は2009年まで躍進を見せていたが、そこから2015年の大幅リニューアルの時期まで、長い低迷時期が続いていた。

しかし、2015年度の売上額は前年比150%を記録、カップアイス市場において、いま最も勢いのあるブランドである。では、見事なV字回復の影にはいったいどんな取り組みがあったのか? 同社 冷菓事業部でMOWブランドを担当する、蓮沼裕二氏に話を聞いた。

競合だらけのバニラカップアイス界で、いつしか存在感がなくなっていた……

-- 2009年から売上が落ち込んだ原因は何だったと分析していますか?

冷菓事業部でMOWブランドを担当する、蓮沼裕二氏

蓮沼氏(以下、蓮沼):大きく2つの原因があります。1つはこちらからの情報発信量やお客さまとの接点を持つ場が少なかった点です。MOWの魅力や特徴を伝え続けることが、おろそかになっていたんです。

発信の手段は、基本的にパッケージとテレビCMがメインで、ほかは店頭で食べ方を提案する程度でした。スマホやSNSなどの普及でお客さまの接触するメディアが増え、情報収集経路が多様化していましたが、そういった時代の変化への対応が遅れてしまっていたと思います。

2つ目はバニラカップアイスの競合商品が多い中で、MOWの独自性をうまく打ち出せなかったことです。競合環境の変化が激しく、その中でMOWは埋もれていってしまったんです。生まれ変わらないとお客さまが離れ続けてしまい、最後にはブランドが死んでしまう……という危機感を覚えていました。

-- そんな中、2015年に大幅なリニューアルを行っていますが、何を変え、何を変えなかったのでしょうか?

蓮沼: まず、変えなかったのは、MOW誕生以来ずっと守り続けている「素材本来のおいしさを楽しんでいただく」という要素です。ミルクのコクにすっきりとした後味、なめらかさの3つをキープし、乳化剤や安定剤は使わない。MOWの良い部分は変えないようにしています。

一方、変えたのは大きく2つです。1つは、ミルクとバニラのバランスを調整したことです。味わいはリニューアルの度に細かくチューニングし、改良していますが、今回は高級感のあるバニラの味を追求しました。バニラアイスとひと口に言っても、カスタード系の味もあれば、ミルク寄りの味もあります。弊社が運営するMOWファン向け公式コミュニティ「MOW CLUB(会員数:約38,000人)」でヘビーユーザーからいただくご意見や、お客さまサービス部に寄せられるご意見や感想、消費者調査で得た率直なコメントなどから、今の時代に皆さまがバニラアイスに求めるものを改めて受け止めてみると、バニラの味わいを増やす必要性に気づいたんです。

そうはいっても、単にバニラ香料を使うのではなく、厳選したマダガスカル産の天然バニラ香料を使っています。試行錯誤しながら100回を超える施策をくり返し、MOWがずっと大事にしてきたミルク感はそのままに、高級感のあるバニラの味を楽しんでいただけるようにしました。

もう1つ、大きく変えたのはパッケージです。2003年(初代)からの変遷を眺めると、2013年(8代目)にガラッと変わり、2015年(9代目)には非常に珍しいデザインになっています。

MOWパッケージの変遷

発売当時~2013年までは、パッケージでソフトクリームのようなイメージを打ち出していました。ミルク感やなめらかな触感、すっきりした印象を持っていただけるように、という狙いがあったんです。

2015年のリニューアル時には、アイスの美味しさを真正面から伝えたいという想いから、半円型のアイスをパッケージ中央に配置したシンプルなデザインにすることで、他社のバニラカップアイスにはない、MOWの新たなアイコンとなり得るデザインに刷新しました。独自性や目新しさを感じていただき、さまざまな競合商品がひしめく店頭で目につき、手にとっていただけるような見せ方を意識しました。

お客さまからは「高級感がある」「おいしそうに見える」といった反応が寄せられています。高品質だから高価格という常識を覆し、私たちが打ち出した新コンセプト「Next Premium」(お手頃価格でおいしさだけはプレミアム)の手応えを感じています。

-- 必ずしも「値段が高い=質のいいもの」は、受け入れられなくなってきたんでしょうか?

蓮沼: 近年、消費傾向に変化が見られるようになったと感じています。「安ければいい」「高ければいい」ではなく、「お手頃価格なのに、質の高いもの」を見抜く方が増えている印象です。不景気だからこそ、納得のいく価格で良いものを選びたい、という考え方が根づき始めたのでしょう。

-- Next Premiumを打ち出したリニューアル後、購入するお客さまの層に変化は見られましたか?

蓮沼: もともと60:40くらいで女性が男性を上回っていて、とくに30~40代女性のお客さまが多かったんです。リニューアルをきっかけに、メインユーザーの30~40代女性も伸びましたが、顕著に伸びたのが20~30代男性でした。

男性は後味に甘さが残るのを嫌う方が多いですが、MOWは濃厚ながらも後味すっきりを目指しています。また、新たなパッケージや新CMの効果で、店頭で初めて手にとってくださる男性もいたのだと思います。オフィスでは昼食後の休憩タイムや残業中、帰宅後にお酒を飲んだ後などのタイミングで食べる男性が多いようです。

-- 最後に、今後の展望や方向性について、お話いただけますでしょうか?

蓮沼: 2015年は新規購入者を増やすことに注力していましたが、来期はロイヤリティを上げて、何度もリピートしてくださるお客さまも増やし、新規とリピーター両方を上げていくステージに入ります。より多くのお客様にMOWの「価格以上のおいしさ」を楽しんでいただきたいと思います。

現状は「バニラ」「生チョコ仕立て」「抹茶」の定番商品3点に加え、秋限定フレーバーの「あずき」(9~3月までの限定発売)の4品発売しております。

限定フレーバーの「あずき」

いつもとは異なる毛色のため、普段MOWを購入しない層の方も買ってくださるんです。時代の変化やお客さまの求めるものを読み解きながら、随時より良くブラッシュアップし、鮮度感の高い商品を提供し続けたいと思っています。

なお、同社はこのインタビューのあと、20~30代女性をターゲットに、数量限定・コンビニエンスストア限定商品として、イタリア産の栗粒入りマロンソースとマロンペーストを使用し、隠し味に洋酒(コニャックナポレオン)を使用したオトナ向けフレーバーリッチな「MOW(モウ) イタリアンマロン」を12月12日より提供すると発表している。



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