都市部を中心に展開されているカプセルホテルが、劇的な進化を遂げていることは何度かレポートしてきた。今回、進化系カプセルホテルの一翼を担ってきたとも言える、「ナインアワーズ成田空港」がどんなところなのか、その使い心地を紹介しよう。

「ナインアワーズ成田空港」は近未来的な空間が広がっている

「タモリ倶楽部」も注目

11月26日に放送されたテレビ朝日の人気番組「タモリ倶楽部」では、進化系カプセルホテルが取り上げられた。都内のカプセルホテルを全軒制覇(2014年度)したこともある筆者は、その番組にゲストとして登場したのだが、同番組ではカプセルユニットメーカーを訪れた。なぜ、その話をここでするかというと、ナインアワーズ成田空港ではその会社が製造したユニットが使用されているのである。

カプセルホテルは法律上、"簡易宿所"というカテゴリーである。ホテルのようなゲスト各人の個室ではなく、複数人で同一空間を共有する形態だ。カプセルは個室ではなくあくまでもベッド。簡易という名の通り、気軽に利用できるというイメージがある。

そうした意味で"空港"と"カプセルホテル"は親和性が高い。そもそも空港とホテルは切っても切り離せない。空港周辺にホテルが多く存在する例は多いし、空港内にホテルがある場合もある。トランジットはもちろん、搭乗時間帯によっては空港至近のホテルは利用価値が高い。

ナインアワーズ成田空港は成田空港第2旅客ターミナルに隣接している

特に近年拡大傾向にあるLCCに搭乗する際には、早朝・深夜といった非有効時間帯に空港を利用するケースもある。エコノミーな旅を求める利用者にとって、空港に隣接するリーズナブルなカプセルホテルという形態の宿泊施設は願ったり叶ったりと言えるだろう。

ナインアワーズ成田空港は第2旅客ターミナルに隣接しているほか、フレキシブルな利用形態を提案している点も魅力。宿泊(チェックイン12時~チェックアウト10時)はもちろんであるが、1時間から利用可能な仮眠(9時~18時の間)、シャワー(24時間)のみの利用もできる。

24時間、さまざまなニーズに合わせてサービスを展開している

カプセルユニットはまるで小宇宙

宿泊は4,900円~、仮眠は1時間1,500円~、シャワーは1,000円といずれもリーズナブル。公式サイトからの予約であれば、さらに割り引かれるケースも。深夜到着/早朝出発などに仮眠利用はもってこいだ。それも、1時間単位の課金なのでお得感が高い。多様な利用形態に合わせるよう、導線にもこだわっている。受付を済ませると更衣室・ロッカースペースへ。ロッカースペース・更衣室の奥はすぐにトイレやシャワーなので、シャワー利用のみでもスムーズに利用できる。

ロッカースペースと更衣室は同じスペース

ロッカーのサイズも空港ホテルならでは。スーツケースの収納を念頭にしているため、他のカプセルホテルロッカーでは見られない容量だ。ロッカースペースは更衣室にもなっており、受付にて渡された館内着に着替え、スリッパへ履き替える。

スリッパのほか、館内着も用意

更衣室・ロッカースペースからは、直接カプセルスペースへもアクセスが可能。カプセルスペースのドアを開けて驚くのが、楕円形のユニットから漏れる印象的な明かりだ。生活感とは無縁の、例えるならば近未来を感じさせる"小宇宙"のよう。カプセル内部に入り寝そべると、卵型であることがやけに落ち着く。程よく柔らかな明かりでいつの間にか夢の中へ。

卵型のカプセルの中でぐっすり

2014年7月の開業から約2年経過したナインアワーズ成田空港。その後、進化系カプセルホテルはブームとなり、さまざまなコンセプトを有する施設が誕生。中でもナインアワーズ成田空港は、デザイン性の高さや利用形態の提案なども含め、今のブームの発端として一翼を担ってきたカプセルホテルだ。やむを得ず利用するといった消極的な利用が定番だった業態だが、そこへ行くためにというデスティネーションの要素も併せ持つカテゴリーとして、新たなステージへと発展している。

※価格は税込

筆者プロフィール: 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)

ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。

「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」