幅広い世代が罹患する恐れがあり、予後も悪いくも膜下出血。発症すると即死する確率も2割におよぶとされているが、一人でも多くの患者を救うべく疾患を早期発見するための技術や治療方法も日進月歩している。

今回は高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師に、くも膜下出血の検査・治療の方法を伺った。

さまざまな検査方法

脳にある「くも膜」の下(内側)の部分に出血が認められる疾患の総称であるくも膜下出血の原因は、脳腫瘍や動脈解離などもあるが主に「脳動脈瘤(りゅう)の破裂」と「脳動静脈奇形(AVM)からの出血」に大別できる。リスクファクターは「飲酒」「喫煙」「高血圧」で、これらの因子を持っている人や、身内がくも膜下出血を罹患した人、断続的な頭痛といった発病の兆候が見られる人は、早期発見のために定期的な検査をした方がよい。

くも膜下出血が疑われる症例に対する検査方法は複数ある。以下にまとめたので参考にしてほしい。

CTスキャン……放射線などを利用して物体を走査後、コンピューター処理によって物体の内部画像を構成する検査方法。全身を撮影するために必要な時間は2~30秒程度ときわめて短い。

3D-CT angiography……造影剤を投与してCTスキャンを行い、脳血管の状態を調べる検査法。血管造影検査に比べ、空間分解能・血行動態評価の面では若干劣るものの、低襲性で検査時間も短く、利便性が高い。また、任意の方向から病変の観察が可能なため、形態評価および術前の手術シュミレーションに応用が可能である。

MRI……強力な磁石でできた筒状の構造物内に入り、磁気の力を利用して体の臓器や血管を撮影する手法。脳や筋肉など、水分の多い部分の画像診断に優れる。

MRA……「MR Angiography」の略で、「血管の検査に特化したMRI」というイメージを持つとわかりやすい。脳全体に張り巡らされている血管を詳細にとらえ、くも膜下出血の最大の原因である脳血管のこぶ(脳動脈瘤)の早期発見などに役立つ。

頭部CT(左)と3D-CT angiography(右)の画像。画面の三角部分がくも膜下出血で、矢印部分が脳動脈瘤(高島平中央総合病院提供)

脳血管撮影……カテーテルと呼ばれる細長い管を体の中に入れていき、血管内に造影剤を入れて調べる検査。血管内を造影剤が流れていく様子を連続的にエックス線撮影することで、非常に微細な血管でも写し出すことが可能。

基本的にはCTスキャンとMRIを複合的に用いて検査し、くも膜下出血が確認されたら出血原因を調べるためにMRAや3D-CT angiography、状況によっては脳血管撮影を行うケースが多いという。

「MRAの優れている点は放射線の被ばくもなく、注射などもしないため侵襲性が少ない(生体の内部環境を乱す恐れが少ない)ことから、『体に金属が入っている』など、よほどの事情がない限り誰でも安全に検査を受けることができます。ただ、低侵襲である一方、『動脈瘤がどのような形なのか』といった細かい部分がわかりにくいです。その場合は、より細かいところまでわかる3D-CT angiographyや脳血管撮影を用います」。