くも膜下出血では「今までに経験したことのない突然の痛み」や「後頭部をハンマーで殴られた痛み」のような頭痛を経験することがある

脳梗塞脳出血と並び、脳卒中の3大疾病の一つであるくも膜下出血。名称は聞いたことがあっても、その実態を正しく理解できている人は多くはないはず。実は20代から働き盛りの40~50代まで、幅広い世代で発病リスクがある病気なのだ。

本稿では高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師の解説をもとに、くも膜下出血の原因や症状などを紹介する。

主な脳出血の原因

脳の表面は「硬膜」「くも膜」「軟膜」と呼ばれる3つの膜で覆われており、くも膜の下(内側)の部分に出血が認められる疾患の総称がくも膜下出血となる。その原因は外傷や脳腫瘍などを除けば、「脳動脈瘤(りゅう)の破裂」がほとんどを占め(80~90%)、それ以外では若年者に多い「脳動静脈奇形(AVM)からの出血」がある。

脳動脈瘤の破裂

血管の一部が膨らみ、「脳動脈にできたこぶ(瘤)」を意味する脳動脈瘤ができてしまい、その部分が破裂して出血することが原因で起きる。膨らんだ部分の血管は引き伸ばされることになり、粘土を薄く伸ばしたときのように破れやすくなるという仕組み。くも膜下出血の原因として最もメジャーで、働き盛りの40~50代によくみられる。また、女性は男性に比べて約2倍発症しやすいという報告もある。

脳動静脈奇形からの出血

先天的な脳の血管異常である脳動静脈奇形から出血して発症するパターン。脳動静脈奇形は血管の先天的異常が原因とされ、動脈から毛細血管を介さず「ナイダス(異常血管の塊)」を形成し静脈へ移行しまっているため、正常な血管よりも大量の血液が流れやすい特徴がある。ナイダス周辺の正常な血管に血液がいかない一方、脳動静脈奇形に血液が多く流れて負荷がかかりやすくなることで、結果として破裂しやすくなる。発生頻度は年間10万人に1人と脳動脈瘤に比べれば少ないが、10~30歳代での発症が多く、脳動脈瘤破裂に比べるとかなり若い。