『アイドルマスター SideM』のCD「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE 13・14・15発売記念イベント」が11月19日、六本木ニコファーレで開催された。

今回のイベント…というか「11月19日」には「アイドルマスター」全体として見てちょっと特異な仕掛けがあったように個人的に思うので、先に触れておきたい。

本イベントでは昼の部において、ソロ曲中心で構成される新CDシリーズの第3弾「THE IDOLM@STER SideM ORIGIN@L PIECES 03」が2017年2月1日に発売され、参加メンバーが柏木翼、伊瀬谷四季、東雲荘一郎、姫野かのん、古論クリスであることが公開された。夜の部ではそれに加え、同じく2月1日に『アイドルマスター SideM』の新全体曲「Beyond the Dream」を46人(と各属性ver.)で歌うCDをリリースすることが発表され、さらにmobage版『アイドルマスター シンデレラガールズ』と、DS『アイドルマスター Dearly Stars』に登場した876プロがコラボする新情報が紹介された。

え、『シンデレラガールズ』? と現場でも驚いたのだが、実は今日11月19日のほぼ同時刻に、東京近郊で『アイドルマスター シンデレラガールズ』の5周年を祝うニコ生イベントが行われており、876プロとのコラボはそちらで公開されたばかりの情報だった。

F-LAGSのメンバー・秋月涼は、2009年に発売されたDS『アイドルマスター Dearly Stars』に出演した時は「本当は男の子なんだけど女装してアイドルになった」という設定で活動をスタートし、物語の中で正体を明かして男の子アイドルとなり、さらにその先に続いていく男子としてのアイドル活動が『アイドルマスター SideM』で描かれる……というちょっと入り組んだことになっている。今日同時進行で行われていた『シンデレラガールズ』ニコ生イベントでの発表を待って、ほぼ間をおかずに三瓶由布子が参加するステージでもその報がもたらされることで、876プロ時代から見てきたであろうプロデューサーと、315プロとしての秋月涼のプロデューサーたちが一緒にこのニュースを祝福したわけだ。

ステージでの三瓶はもちろん315プロの、F-LAGSの秋月涼としてトークやライブを大いに盛り上げたのだが、「夢色VOYAGER」で男の子としての涼の歌声を0から作り上げることと『Dearly Stars』で物語を演じながら男の子としての歌を作っていった時の経験を比べたりと、315プロの涼を形作った経験としての876プロ時代のことを自然に、思い入れを込めて語っていた。

『シンデレラガールズ』で何らかの形で876プロが動き出そうとするその瞬間、少し離れたステージで三瓶が「未来」の涼がこれから仲間たちと踏み出す一歩の歌を歌っている……という状況を、『シンデレラガールズ』チームと『SideM』チームが一緒に作り出した、ということはとても興味深く思える。幾つもの世界をつなぐ存在である涼を演じる三瓶は、「現在・過去・未来、すべてのあなたを愛し続けています!」と、7年前に男の子アイドルとして初めて歌った曲のフレーズを、現在進行形に変えて叫んでいた。

いくつものパラレルをはらみながらも、アイドルマスターの世界がどこかで確かにつながっている感覚。この会場で声を合わせた「アイマスですよ、アイマス!」のコールと、終演後に恒例になっている「アイマス最高!」の叫びは、これまでになく胸に迫るものだった。

兄弟親戚の集まりのようなチーム感とライブで見せた色とりどりの個性

さて、メインの315プロに絞ったレポートを引き続きお届けする。今回のイベントは、10月26日に発売された「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE-13 もふもふえん」「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE-14 F-LAGS」「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE-15 Legenders」の発売を記念したもの。

イベントにはもふもふえんから岡村直央役の矢野奨吾、橘志狼役の古畑恵介、姫野かのん役の村瀬歩、F-LAGSから秋月涼役の三瓶由布子、九十九一希役の徳武竜也、兜大吾 役の浦尾岳大、Legendersから葛之葉雨彦役の笠間淳、北村想楽役の汐谷文康、古論クリス役の駒田航とフルメンバーが出演。MCは柏木翼役の八代拓が担当した。

『SideM』では唯一の女性キャストの三瓶が参加、そして生身の男性キャストがメンバー全員小学生のユニットをステージでどう表現するのかが注目されたもふもふえんだったが、蓋を開けてみるとちょっと座長的なポジションの三瓶ともふもふえんの村瀬が軽妙な掛け合いを見せ、その2人がそれぞれのチームメンバーとがっちり団結しているので、自然とまとまりが出た感じだ。Legendersのメンバーも笠間が積極的に他ユニットに絡みに行ったり、他ユニットからも駒田の「海」や「船」をテーマにした台詞や発言をみんなでいじりにいったりと、掛け合いはばっちり。コミュニケーションがスムーズだからこそ、八代も進行だけでなくお約束のもふもふえん大好きネタに乗っかっていったりと生き生きしていて、この10人は本当にバランスがいい。旗上げをモチーフにしたゲームコーナーも、勝ち負けよりも八代の無茶振りをいかに面白く切り抜けるかを仲間同士で競っている感じで、とても楽しい時間だった。

トークで盛り上がったのは、男性が変声期前の子どもとして歌い、女性が男性と混ざって男の子アイドルを演じて歌うからこそのキーの設定の話だ。F-LAGSの場合は、徳武がキャラクターとして歌うために半音落としてもらい、そのことが申し訳なくてメンバーに泣きそうになりながら謝ったそう。一方、もふもふえんは誰よりも高い声が出る村瀬が収録の際、さくっとキーを上げたことをけろっと報告して矢野たちを青ざめさせたそうで、エピソードにもユニットの関係性が出て面白い。だが収録スタッフたちは矢野と古畑の音域をしっかりと把握した上でキーを上げる判断をしたそうで、本当にちゃんと歌えたことに矢野たちもスタッフへの信頼を新たにしていた。

Legendersは、昨年夏にスタートした「新アイドル発掘オーディション」企画により、候補生9名の中からファン投票で選ばれたユニットだ。トーク中はノリノリでふざけまわったり、無意味に密着していったりと茶目っ気のある3人だが、真剣になるべき時は誰よりも真剣なのが魅力だろうか。楽曲に関しては笠間が「Legacy of Spirit」と「String of Fate」は2曲でひとつ、あわさることでLegendersの関係や寄り添い方が見えると語っていたのが印象的だった。ファン投票で選ばれたこともあり、応援と支えでこのステージに立てたことを繰り返し、真摯に感謝する3人だった。

ライブに関しては、やはり「もふもふえん」という個性は飛び抜けていた。古畑演じる志狼の少年っぽいやんちゃさや、村瀬演じるかのんのキュートの極みさはある程度想像もできたが、さわやかな好青年風の矢野がライブ中は「かわいい……!」としか言いようがないのには本当に驚かされた。もふもふえんという存在自体が年齢や性別や次元を超越してここまでかわいいと、自然と三瓶演じる涼はまっすぐでかっこよくて発展途上の少年そのものに映る。声優、役者という職業のすごみを改めて感じる形だ。

ライブでのLegendersは面白いユニットで、葛之葉雨彦役の笠間と古論クリス役の駒田が、ボーカルが圧倒的に分厚い上に引き出しも多い両輪として強烈な個性を発しているのだが、その間に柔らかくしなやかな印象の汐谷が入ることで、ユニットとしてのまとまりがぐっと出る。イントロの独特の表現と、彼らが「時計」と呼ぶムーブはすごく面白いので、セカンドライブに参加する人はぜひ注目してほしい。

ラストはもちろん、全員揃っての「DRIVE A LIVE」。今日この日はやはり秋月涼の新しい物語を想起しがちだが、どのユニットの歌として考えても想像が広がってしっくり来るのはやはり素晴らしいテーマソングだ。参加ユニットによってがらりと色を変える曲でもあるが、もふもふえんのスーパーハイトーン&キュートボイスが三枚加わった「DRIVE A LIVE」は別の歌と言ってもいいぐらい面白く魅力的だし、それを受け止めるのがLegendersの強い大人のボーカルだったのも組み合わせの妙と言える締めくくりだった。

「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE 13・14・15発売記念イベント」セットリスト

M-01 : うぇるかむ・はぴきらパーク! / もふもふえん
M-02 : 夢色VOYAGER / F-LAGS
M-03 : Legacy of Spirit / Legenders
M-04 : With…STORY / F-LAGS
M-05 : String of Fate / Legenders
M-06 : もっふ・いんざぼっくす♪ / もふもふえん
M-07 : DRIVE A LIVE / 全員