2011年に開催された「第36回ホリプロタレントスカウトキャラバン~次世代声優アーティストオーディション~」にてファイナリストに残り、その後ホリプロ所属の声優アーティストとなった山崎エリイ。同じくホリプロ所属の木戸衣吹とユニット・every♥ing!を組み、積極的にアーティスト活動を続けている。

山崎エリイ(やまざきえりい)。1997年11月20日生まれ。千葉県出身。ホリプロ所属。主な出演は『サムライフラメンコ』森田萌役、『パンでPeace!』逢沢ゆう役、『レーカン!』小川真琴役など。声優ユニットのevery♥ing!としても活動中

今回は、2016年11月16日に1stアルバム『全部、君のせいだ。』でアーティストデビューする山崎エリイにインタビューを実施。本アルバムの魅力についてたっぷりと語ってもらった。

自分だけのオーディションじゃなくなってきた

――今回はソロデビューについてももちろんですけど、「第36回ホリプロタレントスカウトキャラバン~次世代声優アーティストオーディション~」のこともお聞きできればと思っています。オーディションを受けた当時はまだ13歳でしたね。

はい。3歳の頃からクラシックバレエをやっていたので、人前に立ったり、拍手をもらったりする機会が多くて、好きだったんです。同時にディズニー作品やアニメもよく観ていたので、漠然と「人前で声を使うお仕事ができたらいいな」と思っていました。

――そこでオーディションを受けることに?

そうなんです。お母さんが履歴書を送ったので、私はほわほわした状態で受けましたね。1次、2次、3次オーディションを一日かけておこなって、二泊三日の熱海合宿予選を経ての本戦という長い期間だったんですけど、私は何も分かっていなかったので、落ちる前提で受けたようなものでした(笑)。13歳なので、家族以外の人と泊まって学ぶ、なんて経験はなかなかないじゃないですか。最初、泊まるのも不安だったんですけど、周りのみんなが優しくて、恵まれたなあって。朝から晩まで演技、ダンス、ウォーキング……という過密スケジュールをこなせたのもそのおかげだと思います。

――なかなかハードですよね。お母さんが最初に履歴書を送ったということは、声優という仕事もまだ知らなかった?

声優やアーティストという職業のことだけでなく、オーディション自体もわからなかったです。パフォーマンスも、クラシックバレエとはまた違う自分を表現しないといけない。オーディションでは20秒くらいの自己PRコーナーがあったんですけど、何をしていいかわからずずっと歌っていたらサビまで行かずに終了になってしまい、「落ちるだろうなあ」と。

――その時に歌われたのは。

『カードキャプターさくら』が大好きだったので、一次予選では「Honey」、本戦では「プラチナ」を歌わせていただきました。ちなみに、二次予選で歌ったのは松田聖子さんの「天使のウィンク」でした。

――松田聖子さんも大好きですもんね。自身の思いとは裏腹にオーディションを勝ち抜いていった。

毎回予選の合格者は番号を呼ばれるんですけど、いつも番号を見ないで帰ろうと荷物をまとめて、そこで引き止められる、というのを繰り返していました。まさか本戦までいくとは思わなかったです。本戦の決勝大会は品川ステラボールで、お客さんの前で演技をして歌うと聞いた時に、「これは自分だけのオーディションじゃなくなってきたんだな」と思いました。だからこそ、一所懸命に挑戦して、自分の中でいま出し切れる何かを伝えればいいんだなという気持ちに切り替わりました。当時のことを思い返すと、恥ずかしい……というよりは、泣けてきちゃう。オーディションというよりは、みんなで一致団結して一つのパフォーマンスを作ったという感じでした。

――知らないことだらけの中でファイナリストまで残り、そして声優への道へ。

現場で覚えていくことが多かったので、失敗もしましたけど、その分たくさんの経験にもなりました。初めてお仕事をした時も、アフレコスタジオにはたった4本のマイクしかないのに、代わる代わるつなげていって、驚いたと同時に尊敬しました。初のレギュラー作品が『サムライフラメンコ』というTVアニメなんですけど、この時も、緊張しすぎて声が震えてしまい、他のキャストさんやスタッフさんたちに助けられました。何も知らないからこそやってしまう失敗が多かったんですけど、それを言わずに温かく見守って下さった。その環境がありがたかったです。

私はどういう人間なのかを見つめ直す機会に

――山崎さんは、2016年11月16日にアルバム『全部、君のせいだ。』でソロデビューをされます。

ソロデビューが決まった時は、正直ドッキリかなと思ったくらいびっくりしました! 初めて話を聴いたのが、今年の頭くらい。マネージャーさんから「はじまるよ」と言われたんですけど、そこがタクシーの中だったんです。

――会議室に呼び出されて……とかではなく。

はい。もう、「へ……?」って混乱してしまいました。タクシーを降りる時に運転手さんから「あの、おめでとうございます。がんばってください」と言われたのが印象に残っています(笑)。でも、最初は一人で作品を作るということが想像できず、しばらくふわふわした状態でした。楽曲の資料をいただいてから、「自分の名前でやるからこそ、自分が一番シャキッとしていないとダメなんだ」という熱意が生まれました。

――そこで現実感が芽生えてきたんですね。アルバムデビューが決まり、周囲から言われて印象に残っていることはありますか?

まず家族にはすごく感動されたんですけど、「でも、出来るの?」と言われました(笑)。もともと私はしっかりしていない、基盤が本当にあるのだろうか、という人間なので、心配されました。だからこそ、がんばろうと思いましたし、自分のあり方や見せ方、私はどういう人間なのかを見つめ直す機会にもなりました。制作期間が4カ月あったので、のびのび考える時間があったんです。家族と「今回はどんな曲もらったの?」という会話をしたり、浮かんできたアイデアをメモしたり、少し生活が変わりました。

――「曲を出す」というよりも、「自分を見つめ直す」ですね。

そうなんです。あと、ホリプロメンバーのMachicoちゃんや京香ちゃんとディズニーランドに遊びに行ったんですけど、そこで「おめでとぅ~!」って言ってもらえて嬉しかったです!

歌うときには自分も変えていかないといけない

――アルバムの制作会議みたいなものには参加されていたんですか?

やはり初めてのアルバムということで、全体的なコンセプトやジャケット写真などは、私のアイデアを混ぜて作っていただきました。ただ、シングルで3曲を集中的に、とかではなく11曲あるアルバムだったので、すごく悩みました。11曲すべてに目を通さなくてはいけないのももちろんですけど、一曲ごとのテーマや、制作者さんの想いを受け入れて形にしなくてはいけないので。でも、「この曲はこう歌ったから、次の曲はこう歌ってみようかな」みたいに、楽曲を通して新たな自分を探していくようで、楽しかったです。

――『全部、君のせいだ。』は、多種多様な楽曲のジャンルで構成されていますよね。全体的なコンセプトはどのような?

実は、アルバムのテーマがあまりにもふわっとしているんです(笑)。私が好きな80年代風の音楽をベースにしつつ、幻想的で独特な世界観を持つ楽曲を揃えています。一曲ごとに個性が強いので、それらを一つにまとめようとするとパンクしてしまうと思います。だからこそ、歌うときには自分を変えていかないといけないんです。

――そんな個性的な楽曲の数々については、後ほどじっくりとお聞きしたいと思います。その前に、山崎さんは『サムライフラメンコ』をはじめとした作品でキャラクターソングを歌ったり、ホリプロメンバーでもある木戸衣吹さんとのユニット・every♥ing!としても活動したりしています。ソロで表現していく上で、意識された部分は?

キャラクターソングは、まずキャラクターになりきった上で、ガッチリと固定された世界観の中でキャラクターを通して表現していきますし、ユニットだと、ユニットのテーマが存在しています。でも、ソロだと一人で様々な楽曲の世界観を表現していかなければいけない。今回は、80年代風もあれば、クール系もゴシック系の楽曲もあるので、「いろいろな見せ方ができる人間になればいいな」と思っていました。でも、ちょっとプレッシャーもありました。一人でやるということもそうなんですけど、スタッフさんたちに負けないよう、私もしっかりと軸をちゃんと持ってお仕事に取り組みたいと思いました。