画像と本文は関係ありません

「どんどん体重が増えてしまって困る」「お医者さんに注意されてしまった」というような話をよく聞く妊娠後期の体重増加。今回は妊娠中の適正体重について、En女医会の産婦人科専門医・間瀬有里先生にお聞きしました。

ーー妊娠後期、お母さんの体重がピークに達したとき、赤ちゃんの大きさ、羊水の量などはどのくらいになっているのでしょうか?

赤ちゃんが3kg程度、胎盤が700gくらいでしょうか、そして羊水が1L弱なので、あわせても5kgはないのが通常です。しかし、その他にも乳腺の発達や赤ちゃんを守るために母体にも多少の脂肪がつきますから、通常5kgからそれ以上の体重増加が見込まれます。

体重が増え過ぎると危険?

ーー最終的にはどのくらいの体重増加が理想的なのでしょうか?

適正体重はBMIの数値によって違います。BMIが19~24の場合は、7~12kg増くらいでおさめたいですね。BMI25以上の場合は、5kg増までが理想です。

ーー体重が増えすぎると、どんな問題が起こってくるのですか

分娩のときに難産になりやすいという俗説もありますが、それよりも、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病になる危険性が高くなることのほうが心配です。妊娠すると胎盤から分泌されるホルモンの影響で、血糖を下げるインスリンの働きが弱められてしまうため、血糖が高い状態になりやすいのです。

糖尿の傾向が現れたら、血液検査をしながら食事のコントロールをしたり、1日に何回かに分けて食事をとる「分食」をして血糖値の急激な昇降を避けたりします。症状が進めば薬を使わなくてはならないこともあります。

ーー体重が増えすぎてしまったらどう対処すれば良いのでしょうか

体によいものばかりを食べているように思っていても、くわしく調べてみると、食べるタイミング、食事の質、1日にとる総カロリーなど、問題が見つかることが多くあります。前述の高血圧症候群や糖尿病の症状が現れないように、栄養士による栄養指導などを提案することもありますから、妊婦健診の際に医師に相談してみましょう。

体重が増えなすぎるのも危険!

ーーでは、逆に体重が足りないということもあるのでしょうか

あります。実は、昨今問題になってきているのが、妊婦の痩せ過ぎの問題なんです。お母さんが痩せ過ぎている場合、赤ちゃんが小さく生まれる確率が高いというデータがあります。あまり小さく生まれると、将来その子が肥満になったり、成人病を発症しやすくなったりするというデータもあります。

ーー体重は、必要があって増えるはずですよね?

その通りです。日本はわりと妊娠時の体重管理が厳しく、毎週毎週○○g増えたから気をつけようというふうに、厳密に計測する方も多くいらっしゃいます。しかし、体重の増え方は人によって違いがありますし、朝の体重と夕方の体重とでは差が出ます。

私は「そこまで厳密に計測する必要はない」と考えていますが、こうした厳しい管理が妊婦にダイエットさせているのだとしたら、問題ですね。体重は赤ちゃんを育てるために必要があって増えているのです。その基本を忘れてはいけません。

ーー臨床の現場では、食事に関してどんなカウンセリングをしますか?

私は、たまたま今週は増えてしまった、という方にはあまり注意はしません。普段気にしていても、そういう週もありますから。一方、たった1週間で5kgも増えているのに気にしていない方も中にはいて、そういう人にはじっくりお話しするようにしています。なかには、その体重増加が病気のサインであることもありますから、そのためにもきちんと妊婦健診を受けることが大切ですね。

ーーありがとうございました!

■プロフィール
間瀬有里
2003年 日本医科大学卒業。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加するEn女医会に所属している(En女医会とは、会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用し、医療分野での啓発活動を積極的に行っている団体)。
産婦人科専門医、指導医。医学博士。大学病院助教を経て、現在、東京ミッドタウンクリニック勤務。長年の大学病院勤務経験を生かし、現在は健診業務から一般外来診療まで幅広く対応している。二児の母としても、日々奮闘中。