『ナイトスクープ』『鳥人間』を世界に販売

『探偵!ナイトスクープ』のプレゼン

『鳥人間コンテスト』のプレゼン

今回のMIPCOMでも、NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ、朝日放送、読売テレビの8社が共同でバラエティ番組を売り込む恒例となったプロジェクト「トレジャー・ボックス・ジャパン」(以下TBJ)による公開プレゼンテーションが行われた。

各局が世界に売り出したい番組を開発し、NHKが『昔話法廷』、日テレが『究極の○×クイズSHOW!! 超問!真実か?ウソか?』、テレ朝が『キスマイGAME! 無人飛行型ロボット"ドローン"とかくれんぼ!』、TBSが『珍種目No.1は誰だ!?ピラミッド・ダービー』、 テレ東が『世界!ニッポン行きたい人応援団』、フジが『ホールインザロード』などを紹介する中、関西の2局はそれぞれの局を代表する長寿番組を新たに海外に向けて売り出した。

朝日放送は、西田敏行が局長役を務める『探偵!ナイトスクープ』、読売テレビは夏の風物詩『鳥人間コンテスト』である。どちらも海外では受け入れやすい素人さんを主役にした番組。日本で長年にわたって高視聴率実績を積み上げてきたことを強みに、会場では早速商談が進められていた。

フジテレビと中国・湖南テレビの共同制作『夏日甜心』

往年のスタイルの番組が実際に海外でヒットするケースも多い。フジテレビが中国の湖南テレビと共同制作した『夏日甜心』がまさにそれ。女性アイドル候補生31人が、毎週いろいろな企画にチャレンジし、その結果によって数名が脱落、最終的に残った3人がデビューするという内容は、中国版『夕やけニャンニャン』と言っていい。中国好みに合わせて、大規模なセットとSNS連動で人気を集め、今年の夏に湖南テレビの週末のゴールデンタイムで11回放送されると、高視聴率を獲得した。

『鶴瓶大新年会』のアイデアを活用

フジはその番組のゲームコーナーのゲーム案を作り、同局の美術チームとも連携しながら設計図を日本側が提供し、中国側が実際にセットを製作したという。番組を企画し、現地では制作指導にあたったフジテレビ国際開発局企画担当部長の藤沼聡氏は「以前、元旦の特番で担当した『新春 鶴瓶大新年会』という番組用に考えたゲームアイデアのストックと、その改良版などを、今回の中国の番組『夏日甜心』で活用しています。また、今の日本では「ちょっと危険かも」と自主規制しそうな、それでいて面白い展開が期待できる「フィジカルゲーム」をメインにしました」と話す。

フジテレビ国際開発局企画担当部長の藤沼聡氏

そんな中で、藤沼氏は日本との違いも発見。「中国は、安全性に対してちょっと無頓着なところがあり、現場で逆に我々が気をつかってしまう場面もあります。日本では通常、ゲームセットなどはコスト面や作業のしやすさなどから木材を選びますが、中国ではほとんどが鉄骨で製作されていることにもびっくりしました。重いことは重いのですが、丈夫なので安全性には問題なかったです」と教えてくれた。

フジテレビは、上記の中国とのケースのような、相手国に合わせて番組を"カスタムメイド"する番組フォーマット販売を進めている。中国とはこの番組の成功により、タッグを組んだ湖南テレビから、別番組で同様のプロジェクトのオファーが来ているところだ。他国にもこの動きを広げようとカンヌで発表したところ、中国の別のテレビ局や制作会社数社、韓国・タイ・アメリカの制作会社数社が興味を持ち、現在交渉を重ねている。

藤沼氏は「番組を"カスタムメイド"するこのビジネスは、アイデアさえ湧けば、そのチャンスは地域を問わず無限にある。もちろんいいアイデアであることがマストですが、ゲームに限らず、いろいろなジャンルの企画に対応していこうと計画しています」と意気込む。

日本のバラエティがふとしたきっかけで世界でヒットするケースは、まだまだ出てきそうだ。