調達資材のコストを削減する切り札として注目されるリバースオークションは、政府や自治体での劇的な成果によって一定の評価を得られたものの、民間企業に広く浸透するまでには至っていない。

リバースオークションとは、買い手側が提示した条件に対し、売り手側がより低い価格を提示していく競り下げ方式で、最低価格を提示した取引先が落札するというもの。この仕組みだけを見ればコスト削減に効果があるのは分かるが、従来の入札に比べて運用負荷の高さが導入を阻害するハードルとなっている。

通信機器や情報機器の製造メーカーであるOKI情報通信沼津工場は、従来の競争入札からリバースオークションに切替えることで調達コスト低減を実現したものの、サプライヤを一堂に集めて実施するオークションは開催できる回数に限界があった。そこでインターネットを使った非対面のWeb開催を導入し、調達業務効率を向上させた。

Web開催への全面移行に伴い、取引先企業を対象とした説明会を実施

同社が利用しているのは、リバースオークション専用に開発されたアプリケーションではなく、企業向けに開発されたシンプルなチャットツールである。サプライヤにあらかじめチャットツールのアカウントを発行しておき、オークションを実施する案件に対して参加を希望したサプライヤのみを該当案件の専用チャットルームへ招待する。

開始金額や刻み金額、決戦金額(最安値)を周知しておき、開始時刻になるとOKIの担当者から「開始時間になりましたので、入札を開始します」というチャットが飛び、それを合図にオークションが開始され、サプライヤからより低い提示金額がチャット画面に流れてくる。その間、OKIの担当者は適宜刻み金額を変更したり、入札意志が見受けられない企業へ対し退室を促すなど、円滑に進むような書き込みを行う。サプライヤが「辞退します」と発言するとチャットルームから退室させられ、最終決定金額を知ることはできない。ある提示価格に対して他社がすべて辞退すると、最終的に残った企業が第一交渉権を得るという流れになる。

PrimeChatを活用したリバースオークションの様子(デモ画面)

リバースオークションで得られるメリットとは

OKI 情報通信事業本部 情報通信沼津工場 資材部 資材第二課 課長 草野孝弘氏

「資材の高騰が続く中、1円でも安く適材適量の部材を効率的に調達することが、資材部のミッションです。これまでのやり方に加え、新たに取り入れた調達法がリバースオークションでした」と語るのはOKI情報通信事業本部 情報通信沼津工場 資材部 資材第二課 課長の草野孝弘氏だ。

「これまでの購入プロセスで相見積は個人対個人の交渉で価格が決まる属人的になりがちで、バイヤースキルによって同じ製品でも調達価格に差が出ていました。それを組織対組織の交渉に変えることで価格決定プロセスを透明化し、誰が調達を行っても同じレベルの取り引きができる仕組みを作りたかったのです」と草野氏は話す。

こうした思いから、情報通信沼津工場 資材部では、2014年より一部の取引企業とはリアルなリバースオークションを開始した。

「開始当初は、当社が日程調整を行い、会議室にサプライヤを集め実施していました。各サプライヤの営業担当者に加えて価格決定権を持つ責任者にも同席していただき、その場で交渉が決着するようにしました」(草野氏)

調達コスト低減の他に、リバースオークションにはメリットもあった。

「以前は、決まったサプライヤとしか取引していないことも往々にしてありましたが、リバースオークションとして仕組化することで、より多くのサプライヤに声をかけることが可能になり、これまで取引のなかったサプライヤにも参加いただけるようになりました」(草野氏)

一方で課題も残った。

「バイヤーからすると画期的な調達手法でも、サプライヤにとってはライバル同士が対面し、重要な価格情報を共有しなくてはならない、そうした観点で抵抗を覚えるサプライヤも少なくはありませんでした。また、参加サプライヤすべてと日程調整を行うことも難しく、効果を実感しているものの、頻繁な開催はできていませんでした」(草野氏)

こうしたことから、リアルでの開催に限界を感じ、Webでの開催に向けてアプリケーションの評価を始めた。