ダッソー・システムズは11月3日から4日まで、中国・上海にて製造業向けプライベートイベント「Manufacturing In The Age of Experience」を開催した。同イベントでは世界有数のコンサルティング会社であるボストン コンサルティング グループ(BCG)のMoundir Rachidi氏が登壇し、業務プロセスに生産性・柔軟性をもたらす「オペレーション 4.0」について語った。

BCGのMoundir Rachidi氏

オペレーション 4.0時代はすぐそこに

イベント2日目の全体講演に登場したBCGのMoundir Rachidi氏。同氏はデータの力をベースとした第4次産業革命により"オペレーション 4.0"への移行が進んでいる(あるいは必要である)とする。このオペレーション 4.0という言葉はあまり聞き慣れないかもしれないが、「製造現場、製造業に限らず変革が起きている」(Rachidi氏)ため、こうした単語を使っているとのことで、インダストリー 4.0をより広い枠組みで捉えた言葉だ。とはいえ、イベント自体が製造分野向けであったためか、同氏の説明は製造業を主眼に置いたものとなった。

Rachidi氏は第4次産業革命によりオペレーション 4.0時代に突入しつつあるとする

同氏は「世界の人口は70億を超えており、10年で90~110億人に増えるのではないかと予測されている。一方、過去50年を振り返ると成長が鈍化している。これは生産性が低下しているためだ」と、この状況を打破するために新しい技術を活用してオペレーション 4.0時代へと進む必要があるとし、それを実現するテクノロジーとして自律型ロボット、アディティブマニュファクチュアリング、拡張現実(AR)、産業用IoT、ビッグデータ解析、シミュレーション、クラウドなどを挙げた。

さらにRachidi氏は「(オペレーション 4.0への移行は)なぜ、今なのか。それはロボット(をはじめとするテクノロジー)の価格が下落している一方で、そのパフォーマンスが向上しているからだ。また、これらのテクノロジーが使いやすくなり、特別なスキルを必要としなくなった」とし、オペレーション 4.0実現に向けた環境が整いつつあるとする。

オペレーション 4.0に必要なテクノロジーは揃っている。また、コストも低下している

同氏が説明するオペレーション 4.0のメリットはIoT、IIoTなどの説明で出てくるものとほぼ同じだ。「より複雑性の高い製品を低コストで開発できるし、サプライチェーンの上流から下流までを考慮した意思決定が実現する。また、より小ロット、もしくは顧客のニーズに近い多様な製品を生産する事が可能となる」(Rachidi氏)

テクノロジーが揃いつつある中で、Rachidi氏はオペレーション 4.0への移行には「いくつかの注意点がある」と語る。同氏が挙げた「オペレーション 4.0の落とし穴」は以下の通り:

オペレーション 4.0への取り組みでありがちな落とし穴

  • テクノロジーへ投資することに満足すること: 導入だけでなく、パフォーマンスへの向上にフォーカスすべき
  • オペレーション 4.0をトップダウンまたはボトムアップだけで行うこと: 予算、実行部隊を全体として検証すべき
  • オペレーション 4.0はリーン生産方式などと相反するものとして位置づけること
  • 人事やシステム部門などを置き去りにしてしまうこと: 実際にオペレーション4.0を実行する部門も忘れてはならない
  • オペレーション 4.0を技術部門だけで完結しようとすること: 企業戦略に組み込むこと、すなわちCEOを巻き込むことが重要

続いて同氏は、BCGがドイツ、フランス、中国、米国の企業に対し行った、オペレーション 4.0の成熟度に関する調査結果を紹介し、5段階評価でほとんどの企業が"検討していない""検討中"といったフェーズにあり、実際にオペレーション 4.0を実現できている企業は存在しないと指摘。その後「過去の産業革命は特定の地域が先行したが、今回の革命はグローバルで起きている。誰にでもチャンスがある」と語った。

オペレーション 4.0へのレースは始まったばかりだ