Microsoftの米国本社でSurfaceシリーズなどを担当する、Microsoft VP Devices BusinessのBrian Hall(ブライアン・ホール)氏が来日。日本マイクロソフトの社屋にて、過日発表されたSurface StudioやSurface Dialなど新デバイスの特徴、Microsoftにおけるデバイス開発の方向性を説明した。

去る2016年10月26日(米国時間)、Microsoftは発表会を開催し、「Microsoft Surface Studio」を始めとするデバイス群を披露。現時点では、日本市場への投入時期などは明かされていないが、これまでにない野心的なデバイスであることに間違いない。Hall氏はSurfaceファミリーの拡充について、自社の戦略とアプローチを次のように説明した。

Microsoft VP Devices Business Brian Hall氏

「我々はシンプルな目標を持っている。それが『新しいカテゴリーを生み出すこと』『デバイスを持つ利用者に誇りを与える』の2つだ」(Hall氏)。

1つめの目標は、既にSurface Proシリーズが2in1 PC市場を開拓し、OEM PCベンダーが多くの2in1 PC市場に参入していることからも、「新たな市場」を生み出したのは明白だ。この点について、Hall氏は「ここ数年のタブレット市場を変化させてきた」と述べつつ、Surfaceシリーズに似た2in1 PCが増えてきている状況を、「真似されていることを誇りに思っている」と語った。

米国本社の発表会では、グラフィックパフォーマンスの向上やバッテリー駆動時間を増やした「Surface Book With Performance Base(以下、新Surface Book)」を発表しているが、これも「新しいカテゴリーを生み出す」ための戦略という。

「ノートPCへの見方を変えるため、究極のノートPCであるSurface Bookを強化した。MacBookよりも素晴らしいキーボードを備えている」(Hall氏)。

今回、Hall氏は、日本のシニアリーダーや小売業の責任者、小売りの現場関係者などとミーティングするために来日。現場の反応として、「『Appleの新製品が期待外れだった』という声に驚いている」としつつ、新Surface Bookを訴求している。Surface Bookが対MacBookであることは、初代モデル発表時に各デバイスを比べるデモンストレーションでも明らかだが、新Surface Bookの性能や可能性にはかなりの自信が見て取れる。

外観は同じだがバッテリー駆動時間など内部的な見直しを行った「Surface Book With Performance Base」

注目のSurface Studioについては、文字どおり「新しいカテゴリーを生み出す」デバイスだが、Hall氏は「机を新しいスタジオへ変化」させるデバイスであるとアピールした。発表会を視聴した限り、Hall氏の言葉を借りれば「個人が持てる大きなキャンバス」として魅力的なデバイスである。

Surface Studioは、クリエイティブ分野のプロフェッショナルに訴求するデバイスのように見えるが、多くのオフィス現場でSurface Studioを活用する価値を次のように強調する。

「Surface Studioは、PDFやWord、PowerPointなどのドキュメントレビューにも最適だ。また、(Skype for Businessなどを用いた)電話会議システムとしても活用できるため、他のデバイスコストと比べてもエグゼクティブには価値がある」(Hall氏)。

米Microsoft Storeで既に予約完売となったSurface Studioは、2,999~4,199ドルと比較的高額だが、その理由は「デバイスを持つ利用者に誇りを与える」と連動する。

「ユーザーには、美しく作り込まれたデバイスをバックから出すことに誇りを持ってほしい。我々は情熱を持ってSurface Book/Studioを作り込み、時に高額になってしまう」(Hall氏)。

例えば、Surface Studioのきょう体は、レーザーで測定した上で適合することを確認してから設計するなど完璧(かんぺき)を目指したという。また、Surface Pro 3 Type Coverについても同様の取り組みを行ったとHall氏は語る。「それぞれのキーをカットし、1つ1つ製造」(Hall氏)し、利用者が使っていく上で高い誇りを持てるような製品開発を今後も続けていくとした。

米国で発表された「Surface Studio」。ディスプレイの角度を変えることで、デスクトップPCながらも2in1 PC的な利用スタイルを実現する

Surface Dialについては、「ユーザーの作成環境に没入感を持ち続けるデバイスを提供したかった。色を変える作業だけ取っても、デバイスを持ち変えるのではなく、直感的に操作するためにはマウスでは不十分」(Hall氏)という。Surface Dialは、ディスプレイに直接貼り付けて使う「オンスクリーン」はSurface Studioのみとなり、Surface Pro 4/Bookは机上などで使用する「オフスクリーン」環境となる。

ただ、「今後タイミングを見て、(Surface Pro 4/Bookでも)オンスクリーンで使えるシナリオも考えている」(Hall氏)と述べた。ちなみに、Surface Dialはオープンな設計になっているため、OEMベンダーが似た機能を持つデバイスを製造可能である。Surfaceファミリーをお使いの読者諸氏は、今後に期待してほしい。

3Dドローイングや3D CADといったアプリケーションと相性のよい「Surface Dial」。既にsiemensの「NX」シリーズで利用可能だという

Hall氏はMicrosoftのデバイス戦略について、複数のデバイスを必要とする利用者と、スマートフォン1つで済ませる利用者のダブルシナリオを想定していると話す。

「スマートフォンで済ませるユーザーにはキーボードとマウスを接続するだけで済むContinuum for Phoneを提供し、複数のデバイスを必要とするユーザーには需要に合わせたSurfaceファミリーを提供する」(Hall氏)。

元々はソフトウエア企業だったMicrosoftがPC市場に参入し、それまでにないPCのあり方や利用スタイルを生み出してきた。Hall氏が冒頭で掲げた2つの目標に沿って、Microsoftは進み、新たなSurfaceファミリーデバイスの価値を高めていくだろう。余談だが、巷のウワサにのぼるSurface Phoneについて、Hall氏はコメントを控えた。

阿久津良和(Cactus)