『アイドルマスター』シリーズの我那覇響や『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』のタカオなど、様々な作品に出演し、ライブでも抜群のパフォーマンスを見せつける声優の沼倉愛美。彼女は、声優デビューから8年目を迎えた2016年11月2日、TVアニメ『魔法少女育成計画』の主題歌「叫べ」でソロアーティストデビューを果たす。

沼倉愛美(ぬまくらまなみ)。1988年4月15日生まれ。神奈川県出身。アーツビジョン所属。主な主演は『アイドルマスター』我那覇響役、『恋愛ラボ』倉橋莉子役、『アイカツ!』藤堂ユリカ役、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』タカオ役、『ハナヤマタ』常盤真智役、『SHOW BY ROCK!!』レトリー役、『魔法少女育成計画』リップル役など撮影 メインカット:西田航(WATAROCK)、インタビューカット:河邉有実莉(WATAROCK)

今回は、「叫べ」の聴きどころやソロアーティストデビューへの心境、これまで音楽とどう向き合ってきたのか、そして今後のアーティスト像などについて語ってもらった。

「自分の歌」となるとわからなくなるんです

――ソロデビューおめでとうございます! 沼倉さんは様々な作品でキャラクターソングを歌われていますけど、意外なことにソロは今回が初めてなんですよね。

実は今回、はっきりと「ソロでやりませんか」とお話をいただいたわけではないんです。ユニット・Tridentでも活動させていただいたTVアニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』のスタッフさんたちと、とても良い関係性を築くことができて、その流れでソロデビューの話が立ち上がりました。

――前々から「ソロでやりたい」という気持ちがあったわけでは?

個人として自分を表現することがそんなに得意なわけではないので、挑戦という感じが近いですね。でも、以前から「ソロとしてやってみればいいのに」と言われることも多かったので、それなら一度挑戦してもいいかなと思って始めました。いまは不安も多く、きちんと自分に向き合ってものにしていかないといけない、頑張らないといけないという思いが強いです。

――沼倉さんほどの人が「ソロ活動は挑戦」と言われるのに驚きます。歌うこと自体は好きなのでしょうか。

歌うことは好きです。でも、「自分の歌」となるとわからなくなるんですよ。キャラクターとして「こういう風に歌いたいな」とか「どう歌えばお客さんにキャラクターをわかってもらえるかな」と考えることの方が得意ですし、やりがいを感じていました。ソロとキャラクターソングではアプローチの仕方や考え方が違うので、今回はそういったことを勉強してみようと思っています。

――ライブのパフォーマンス力も圧倒的なので、ソロでもやりたいという気持ちにあふれているのかと思っていました。

声優を目指していた頃は、憧れも含めて「人気者になったらこういうこともできるかな」とか、そういう気持ちは少なからずありました(笑)。声優デビューをして8年目ですけど、まずお芝居を確立することのほうが大事だし、やりたいことはそっちだなと。いつまで経ってもお芝居はうまくならず、まだまだ足りないと思っているので、ソロで歌うということに気持ちが向かない時期は長かったです。音楽自体はずっと大好きなんですけどね。

――デビューする前から音楽に触れていたのでしょうか。

私からやりたいと言って10歳から6~7年間、電子オルガンのテクニトーンを習っていましたけど、今ではもう指が動かないですね(笑)。その時にある程度の譜面を読めるようになり、今歌う時に役立っています。曲を耳だけで覚えると意外と大変なんですよ。音符を見ただけでその音を出せるわけではないんですけど、次の音が高いのか低いのかの指針になる。そういった情報があると助かります。

どの曲を聴いても我那覇響なんです

――沼倉さんが大勢の前で歌ったのはお仕事を始めてからですか?

えーと、小学校の時の合唱コンクールとか。それから高校の時、中学時代の先輩がアコギをやっていて、ミニライブをやるというので呼ばれて歌ったことがあります。先輩がギター、私の友だちがピアノで、私がボーカル。

――そうなんですか! その時の選曲は?

SMAPさんの「夜空ノムコウ」や槇原敬之さんを歌いました。ただ呼ばれて歌っただけで、めちゃくちゃ緊張したというわけでもなかったんですけど、すっごく気持ちよかったです!

――そうやって音楽と触れ合ってきた経験がいまにつながっているのかなと思います。仕事関係での初歌唱は『アイドルマスター』のオーディションで歌った「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」ですか?

そのオーディションが初めてでした。「これで評価されるんだ」と思うと緊張しましたねー。まだオーディション自体も2回か3回目くらいで慣れていないし、知らないおじさんたちが見ているし(笑)。セリフを言った時の記憶はありますけど、歌った時の記憶はないですね。

――オーディションで歌うということは、今後歌を仕事にするということでもありますよね。「歌わない声優」という選択肢もあったのかなと。

あの時はまだ声優としてデビューもしていないので、仕事を選ぶことなんてできるはずありませんしね。それにまだ夢の中にいたんですよ。現場にも出ていないので、「歌を仕事にする」ということもわかっていませんでした。まだ憧れの方が強い時期なので、この先自分がどう仕事していくということまで考えが及ばず、責任感もありませんでした。まだ10代で「オーディションをもらえたことがうれしい」というくらいの時期でした(笑)。

――今は音楽や歌に対して向き合えていると思いますが、当時と比べたらいかがでしょうか。

まず、歌は相当うまくなりました(笑)。『アイドルマスター』は、いまでもゲームの新作が発売されるたびに過去曲が収録される。つまり、いろんな人がお金を出して、ド下手な時に歌った我那覇響の歌を聴いてくれるんですよ。でも、その時その時の良さがあると思っていますし、8年前に歌ったようなニュアンスは今では出せないと思います。響として何百回もレコーディングをしていますけど、そのたびに自分も、楽曲も、響も成長していっています。だから、どの曲を聴いても我那覇響なんです。