2016年10月25日(米国時間)、MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド14955を、ファーストリングを選択したPCとモバイル向けにリリースした。OSビルド14951で加わった高精度タッチパッドのUX改善や、Windows Inkの改良、Ubuntu 16.04の公式サポートに加えて、OSビルド14955向けに「メール」および「カレンダー」がバージョンアップしている。

OSビルド14951の配信トラブル?

周知のとおり、Windows 10 Insider Preview ビルド14951が2016年10月19日(現地時間)にリリースしている。だが、筆者の環境では一切配信されず、PCはもちろんモバイルも無反応だった。Microsoft WDG(Windows and Devices Group) ソフトウェアエンジニアのDona Sarkar氏が記事を投稿したのは15時半(日本は朝7時半)だが、筆者の環境ではどのデバイスにもOSビルド14951は配信されなかった。

仕方なく彼女のTwitterアカウントを見ると、配信が先でブログ記事の投稿は後回しだったようである。さらに日本時間朝9時の時点でWindows 10 Mobile Insider Previewの配信に問題が発生しているらしく、日本時間14時半では苛立ちを隠せないようなコメントを投稿していた。情報収集していると、Microsoft Communityに改善する方法が投稿されたので、筆者も試してみたが結果は変わらず。

22日時点のWindows 10 Mobile ビルド14946。一瞬だけOSビルド14951が現れたが、インストールはできなかった

翌日23日の状態。エラーメッセージが出るようになり、その後は「最新の状態」というつれないメッセージが現れるのみ

結局、PCは1台だけOSビルド14955に更新できたが、2-in-1 PCおよびWindows 10 Mobileデバイスは本稿を執筆している現在もOSビルド14946のままである。そのため本稿ではOSビルド14951およびOSビルド14955に加わった変更点を紹介していく。

OSビルド14951の変更点

まずOSビルド14951では、高精度タッチパッドの改善追加や、Windows Inkの機能追加、カメラに関するアップデートが行われた。OSビルド14955ではUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーションの「メール」「カレンダー」を更新し、「ナレーター」の機能改善を行っている。

高精度タッチパッドは、さまざまジェスチャー機能を備えているが、OSビルド14951では、任意のキーボードショートカットキー登録や、アクションとして音量調整が可能になったという。前述のとおり筆者の環境では検証できないものの、このまま進んでいけばタッチパッドの機能拡張はRedstone 2(開発コード名)のキーポイントに数えられそうだ。

Windows Inkは、ペンの色と太さを変更する際にドロップダウンリストを閉じる必要がなくなり、色ないし太さを選択するとリストが自動的に閉じるようになった。また、定規の種類として分度器が新たに加わっている。こちらもタッチ機能を備える2-in-1 PCがOSビルド14946のままのため、実際に試した訳ではないが、Microsoftの説明によればピンチ操作でサイズを変更できるそうだ。

2-in-1 PCがOSビルド14955にならないため、デスクトップPCで動作確認。ドロップダウンリストから<Protractor>を選択することで分度器を選択できる

「フォト」をバージョン16.1017.10000.0に更新し、Windows Inkを利用した書き込み機能をサポートしている。Microsoftの説明によれば編集済み画像や動画はそのまま共有できるという。Windows 10 Mobile Insider Preview ビルド14946上の「フォト」も同バージョンに更新されていたものの、Windows Ink機能を備えていないため、PC版のようなペン操作はできなかった。

「フォト」を起動するとペン機能のサポートや編集機能の強化をアピールするダイアログが現れる

PCおよびモバイルの「カメラ」にも改良が加わり、シャッターボタンのデザイン変更や、ダッシュボードからセルフタイマーを呼び出せるようにするなど、UI周りの改善を加えている。ズームスライダーやPC上では[スペース]キーで撮影可能になるなど使い勝手も向上しているが、OSビルド14955上の「カメラ」を起動しても、PCに接続したWebカメラが動作せず、正しく動作しなかった。筆者のPCにはマイクロソフト製Webカメラと、マウスコンピューターのWindows Hello用カメラの2台を取り付けているためかもしれないが、デスクトップアプリ版Skypeは正しく動作しているため、「カメラ」側の問題だろう。ちなみに連続撮影の改善やサイズの大きい動画を撮影するためのSDカードサポート改善も加わったという。

その他にも開発者モード切り換え時の再起動を不要にし、「ナレーター」がテーブルを読み上げるときの発声を遮らないようにする改善も加わっているが、個人的にはBUW(Bash on Ubuntu on Windows)環境のUbuntu 16.04化、WSL(Windows Subsystem for Linux)とWindows 10の相互運用性向上が大きなトピックだ。内部ロジックを変更することで、相互的なパイプ処理を可能にしている。Windows 10側で処理したテキストファイルの内容を、「tail」コマンドにオプション「-f」を加えて逐一監視するなど、その自由度は大幅に向上しそうだ。

BUWの再インストールか「do-release-upgrade」コマンドを使った手動アップデートで、Ubuntu 16.04に更新できる

BUW上からWindowsのコマンドを呼び出し、Linuxコマンドと組み合わせたコマンドライン操作を可能にしている

OSビルド14955の変更点

冒頭で述べたように配信トラブル(?)があったせいか、OSビルド14955は少々早めに公開された。そのため改善点は少なく「メール」は新しいウィンドウでメールメッセージを開くことが可能になり、アクションセンターなどに現れる通知からメールに対するアクションの実行を追加。Twitterのように「@mentions」で特定の相手に注意をうながす機能が加わった。このメンション機能はメール本文中に記述し、メールアドレスを記述するという。また、「ナレーター」には、Officeのリボン内グループなど移動する他の領域に対して通知する機能が加わった。

メールの本文作成中に、「@」を入力すると自動的に候補リストが現れる

ここからはPC版とモバイル版の修正内容と既知の問題を紹介する。まずはPC版OSビルド14951の修正箇所から。

  • Surface BookやSurface Pro 4などコネクテッドスタンバイを備えるデバイスで、BSoD(BlueScreen of Death)が発生する問題を修正した。
  • Forza Horizon 3やGears of War(および一部のサードパーティ製ゲーム)のインストール時にストレージがネイティブ4Kセクターもしくは4Kセクターサイズドライブの場合、0x80073cf9エラーでインストールに失敗する問題を修正した。
  • ReCoreやGears of War 4、Forza Horizon 3、Killer Instinct、Rise of the Tomb RaiderなどWindowsストア経由で購入する大型タイトルが起動に失敗する問題を修正した。
  • コマンドプロンプトやPowerShellなどで利用するコンソールウィンドウが、異なるDPIスケーリング設定を行う複数ディスプレイ間で、正しくスナップしない問題を修正した。
  • 予定を表示するタスクバーの時計とカレンダー表示領域で、「Outlookカレンダー」の設定配色で表示される問題を修正した。
  • 「設定」の<アカウント/サインインオプション>からPIN設定を追加する際、ドメインに参加しているPCで一部の項目がグレーアウトしてしまう問題を修正した。
  • 「Grooveミュージック」で大規模な再生リストを登録し、曲の順番を変更するとアプリケーションがクラッシュする問題を修正した。
  • スキャンコードのマッピングロジックを変更した。例えば[CapsLock]キーを無効にするといったレジストリ設定を行っている場合、今後のビルドでも内容が保持される。
  • 「Adobe Photoshop Express」で画像をトリミングする際、<Correct>ボタンをクリックするとアプリケーションがクラッシュする問題を修正した。
  • SmartScreen有効時に「その他のユーザー」によってファイルがロックされてしまう問題を修正した。
  • 仮想マシンでRemoteFXアダプターを有効にしている際、電源を入れると0x80004005エラーが発生し、起動できない問題を修正した。

続いてPC版OSビルド14955の修正箇所を紹介する。

  • 分度器で描画を行ってから再び描画を始める際の内容を維持するように修正した。また、テキストの配色を変更し、表示内容を明確にした。
  • 「フィードバックHub」「Grooveミュージック」「ニュース」などのアプリケーションで発生していた、Microsoftアカウントでサインインできない問題を修正した。
  • 本ビルドには高精度タッチパッドに対するいくつかの修正が含まれている。
    ・指1本でマウスカーソルを移動させる際の誤動作を修正した。
    ・高精度タッチパッドを備えていないデバイスでリセット機能が現れる問題を修正した。
    ・3本指ジェスチャーしかサポートしていないデバイスで、4本指ジェスチャーの説明画像が現れてしまう問題を修正した。
    ・「Paint.NET」で水平方向スクロールバーが壊れてしまう問題を修正した。
  • 本ビルドには「ナレーター」に関するいくつかの修正が含まれている。
    ・アクティブウィンドウのタイトルを読むための[CapsLock]+[/]キーを追加した。
    ・エディットボックスにフォーカスが移動した際のスキャンモードの認識を改善した。
    ・テキストを連続的に読み上げる際、適切に止まるように改善を加えた。
  • TPM(トラステッド プラットフォーム モジュール)の設定を適切に行うため、TPM.mscを更新した。
  • タスクマネージャーが直前の起動モード(簡易表示と詳細)を忘れてしまう問題を修正した。
  • Diskpart.exeでUSBドライブのパーティションを正しく認識しない問題を修正した。
  • 「ディスクの管理」を使用してマウント可能であるにもかかわらず、特定のUSBドライブがマウントに失敗する問題を修正した。
  • 「簡単操作」に関する設定が、Windows 10 Anniversary Updateで正しく動作していなかった問題を修正した。
  • 「設定」の<ネットワークとインターネット/Wi-Fi>に並ぶ<ハードウェアのプロパティ>から<コピー>ボタンを押すと、クラッシュしてしまう問題を修正した。
  • 「エクスプローラー」でフォルダーをペーストした後に自動選択される問題を修正した。
  • Cortanaでリマインダーを作成する際、時間や場所のフィールドに入力できなかった問題を修正した。
  • コントロールパネルの「サウンド」に並ぶデバイスのプロパティダイアログから、共有モードで使用するサンプルレートとビットの深さに関する設定内容を更新した。
  • デバイスマネージャーなどに並ぶUSB Audio 2.0デバイスの名称として、デバイスベンダー/モデル名を採用した。
  • 「Microsoft Edge」で他のウィンドウにブラウザーからドラッグできてしまう問題を修正した。
  • 「Microsoft Edge」の<共有>ボタン使用して、WebページやPDFのメール送信を試みるとクラッシュしてしまう問題を修正した。

次はモバイル版OSビルド14951の修正箇所を紹介する。

  • フランス語の句読点ルールなどに対応するため、同言語用キーボード(カナダ向けは除く)を更新した。
  • 「設定」の<個人用設定/サウンド>でカメラのシャッター音に関する項目が欠落していた問題を修正した。

続いてモバイル版OSビルド14955の修正箇所を紹介する。

  • 「フィードバックHub」「Grooveミュージック」「ニュース」などのアプリケーションで発生していた、Microsoftアカウントでサインインできない問題を修正した。
  • Windows 10 Mobileデバイスを再起動すると、Windowsロゴによる起動サイクル中に固まるような「スタック」と呼ばれる現象が発生し、お使いのデバイスによっては20~30分続くことがある問題を修正した。
  • スタート画面にピン留めした「メール」アカウントの通知バナーが現れないバグを修正した。
  • 共有ダイアログが欠落するアプリケーションに対する動作を修正した。
  • データ制限を設けている環境で、制限時間を超えると頻繁に通知を受け取る問題を修正した。
  • XAMLのProgressBarコントロールを使用しているアプリケーションで、水平プログレスドットが正しくフェードアウトしない問題を修正した。
  • Cortanaでリマインダーを作成する際、時間や場所のフィールドに入力できなかった問題を修正した。

次はPC版で確認された既知の問題を紹介する。なお、OSビルド14955で修正した問題は割愛した。

  • サードパーティ製セキュリティ対策ソフトが原因で、前のOSビルドにロールバックする可能性がある。
  • 「スケッチパッド」で分度器を使用するとクラッシュする問題を確認している。

最後にモバイル版の既知の問題を紹介しよう。同じく、OSビルド14955で修正した問題は割愛している。

  • OSビルド14951がインストールできない問題を確認している。

筆者が冒頭で述べたとおり、この問題に関してはMicrosoft Communityの投稿を参考にして欲しいと、Microsoftはインサイダーに対する感謝と共にアナウンスしている。具体的にはWindows 10 Mobileの電源を確保した状態で、「設定」の<更新とセキュリティ/Windows Insider Program>を開いて、受け取りレベルを既存状態から「スロー」→「ファースト」に変更。続いて、<ネットワークとワイヤレス/機内モード>で「状態」のスイッチを"オン"に変更。<時刻と言語/日付と時刻>に並ぶ「日付と時刻を自動的に設定する」のスイッチを"オフ"に変更し、日付を7日後に変更してからWindows 10 Mobileを再起動する。

Windows 10 Mobileが再起動したら、「設定」の<ネットワークとワイヤレス/機内モード>で「状態」のスイッチを"オフ"に変更。<更新とセキュリティ/Windows Update>から更新を実行。この際エラーが発生することを確認してから、<時刻と言語/日付と時刻>に並ぶ「日付と時刻を自動的に設定する」のスイッチを"オン"に変更する。再び<更新とセキュリティ/Windows Update>から更新を実行し、やはりエラーになるので、さらにWindows 10 Mobileを再起動。

そして三度<更新とセキュリティ/Windows Update>から更新を実行すると、最新ビルドが配信されるというが、筆者はこの工程を行っても配信されなかった。まだ、試していないインサイダーの方はお時間があるときにでも1度お試し頂きたい。

  • アップデート時にエラー「0x80242006」が発生する問題を確認している。

こちらの問題に関してはMicrosoftのサポートエンジニアであるJason氏がMicrosoft Communityに投稿している。詳細手順は異なるが上記のような操作を行うというものだ。

  • これから数週間の間、Windows 10 Mobileの言語やキーボードをインストールすることはできない。必要であればWDR(Windows Device Recovery)ツールを使って初期状態から任意の言語やキーボードを選択する。
  • 「Excel Mobile」でシートを追加するとフリーズし、最終的にクラッシュする問題を確認している。

本稿はWindows 10 Insider Preview ビルド14955で執筆しているが、OSの動作自体は安定しており、既存のアプリケーションも今のところ問題なく動作している。それだけにOSビルド14951から始まった配信問題は少々残念だ。

阿久津良和(Cactus)

前回の記事はこちら
・Windows 10 Insider Previewを試す(第70回) - PCよりもモバイル版の機能改善が多く加わったOSビルド14946
http://news.mynavi.jp/articles/2016/10/14/windows10/
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Windows 10 すべてがわかる特集記事はこちら
【特集】~インストールから設定・活用まで~ すべてが分かるWindows 10大百科
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