うなぎが有名な観光地と言えば、浜名湖を有する静岡県や、名古屋・ひつまぶしが名物の愛知県を想像するかもしれない。しかし、熊本県の南、人吉市にも、知る人ぞ知るうなぎの名店がある。全国からファンが集まり、平日でも行列が絶えない「上村うなぎ屋」だ。 身の引き締まった肉厚の国産うなぎを、こだわりの炭火で焼き上げたうな重は絶品。早速紹介しよう。

「うな重(6切れ)」(3,900円・税別)

ふわっふわな肉厚うなぎがたんまり6切れ

創業100年余りの歴史を誇る同店。うなぎは南九州の4業者から仕入れ、5~10日間ほどくみ上げた地下水で泳がせるのがこだわりだ。これにより、うなぎの身が引き締まっていくという。

店内には地下水を入れた樽の中で泳ぐうなぎが

生きているうなぎをさばいた後は、秘伝のたれをつけながら、地元産の木炭を使用した炭火で焼き上げる。店員さんいわく、うなぎは、仕入れ場所や時期によって固さがさまざま。「うなぎの様子を見て、焼き加減を調節している」とのことだ。

ずっしりと重い肉厚のうなぎ。蒸しているのではないかと思うほどふわふわだ

まず注文したのは「うな重(6切れ)」(3,900円・税別)。一口ほおばると、表面はパリパリに焼き上げられていて香ばしい味わい。と思えば、中身はふわっふわで、かむとすぐに身がほろほろとほぐれ、うまみがあふれてくる。同店では、関東風のようにうなぎを蒸してはいないが、焼いただけとは思えない、ふんわりとやわらかい食感が口の中をほっこりさせてくれる。

ご飯の下に、さらにうなぎを発見!

どんどん食べ進めていくと、うなぎの下に敷き詰められたご飯の、さらに下にもうなぎを発見! こんな至福の瞬間があるだろうか! 量も多く、同じ味が続くので、途中で飽きてしまいそうだが、たれにしつこさがなく、油がまろやかなので、女性の私でもペロッとたいらげてしまった。

箸でつかむとくずれちゃう! ふわふわ度が増すせいろ蒸し

同店は、バラエティーに富んだメニューをそろえているのも特徴だ。次に注文したのは「せいろ蒸し(4切れ)」(2,700円・税別)。せいろに入れたご飯の上に、焼き上げたうなぎを乗せ、蒸して仕上げた一品だ。

「せいろ蒸し(4切れ)」(2,700円・税別)せいろのケースのまま登場する

ふたを開けると、ご飯と共に蒸されたうなぎが登場!

まず、ふたを開けた瞬間に、湯気と共にせいろの香りが広がる。うなぎを箸で持ち上げてみると、簡単に崩れてしまうほど、身はほろほろに蒸されていた。口の中にいれると、"ふわっとろ"という表現が近い、不思議な食感。蒸されて油が落ちているので、うな重よりもさっぱりとした味わいだ。

箸でつかむとくずれてしまうほど、身はほろほろとしている

塩焼きは酒のつまみにたまらない!

さらに、うなぎの塩焼きとご飯がセットになった「塩焼き定食」(3,700円・税別)というメニューもある。レモンを搾り、ポン酢を付けていただくと、うなぎとは思えないほどのさっぱりとした味わい。パリパリとした食感が際立った一品だ。

「塩焼き定食」(3,700円・税別)

この定食には、うなぎの骨せんもついてくる。これらのメニューのほかにも、う巻きやうなぎの湯引き、うざくなど、一品料理が豊富で、お酒を飲みながらでも楽しめそうだ。

人吉市は、米焼酎やアユなどの川魚も味わえる街。全て街を流れる球磨川が育んだ名物で、うな重のご飯も、地元産の米を使っている。うなぎ目当てに日帰りの旅行もいいが、地域の温泉宿に泊まり、ぼーっと川のせせらぎを眺める時間を作ってみるのも、いいかもしれない。

●information
上村うなぎ屋
住所: 熊本県人吉市紺屋町129
アクセス: 九州自動車道人吉インターチェンジから車で7分、くま川鉄道湯前線・人吉温泉駅から徒歩8分
営業時間: 10~14時、17~21時
不定休

※記事中の情報・価格は2016年10月取材時のもの