国内外の航空・宇宙関連企業などが集まる展示会「2016年国際航空宇宙展」(主催:日本航空宇宙工業会)が、10月12日から15日にかけて、東京ビッグサイト(東京都江東区)において開催された。

この催しは国内外の航空・宇宙に関連する企業・団体が一同に集まり、トレードや情報交換などの促進を図ると共に、航空宇宙関連産業の振興と航空宇宙産業に対する国民の理解ならび若年層の関心喚起などを目的として行われているもので、1966年から数年おきに開催されており、今回で14回目。今回は国内外から合計792もの企業や団体が出展し、50年の歴史のなかで過去最大、日本最大規模の開催となった。

米国の大手航空宇宙企業であるロッキード・マーティンは、日本の航空自衛隊への導入も決まっているF-35A「ライトニングII」戦闘機のモックアップ(実物大模型)のほか、スカパーJSATも発注した衛星バス「A2100」などを展示した。

F-35A「ライトニングII」

F-35Aのモックアップ

F-35Aのモックアップ

上から見たF-35Aのモックアップ

米国のロッキード・マーティンは、F-35A「ライトニングII」戦闘機のモックアップ(実物大模型)を展示。コックピットに座ることができ、連日長蛇の列ができるなど、今回の最大の目玉となった。

F-35は米国のロッキード・マーティンを中心に開発された戦闘機で、ステルス性能をもつほか、戦闘機や爆撃機、攻撃機の任務をこなせるマルチロール能力や、強力なセンサーを積み、また他機との情報共有ができるデータ・リンク能力などをもっている点を特長としている。

F-35には、通常の滑走路で運用されるF-35A、短距離離陸・垂直着陸ができるF-35B、そして空母での運用ができるF-35Cがあり、これらは機体構造を共有して造られている。

F-35は米空軍、米海軍、米海兵隊をはじめとして、世界各国で導入が予定されており、日本の航空自衛隊でも、2011年にF-4EJ改の後継機としてF-35Aを導入することを決定。現時点で計42機のF-35Aを導入する計画で、2016年度中にも日本に引き渡され、米国内で訓練を行った後、早ければ来年度にも青森県の三沢基地に配備される予定。また、導入する42機のうち38機については、三菱重工の名古屋工場で組み立て製造が行われることになっている。

上から見たF-35A

F-35Aのウェポン・ベイの内部

F-35は単座(一人乗り)の戦闘機だが、ミサイルや爆弾を胴体内に格納するため、ずんぐりむっくりとした形をしており、意外と大きいという印象を持った。

F-35のインテーク(空気取り入れ口)は、奥で折れ曲がっており、正面から見ると塞がっているようにも見える。これは敵からのレーダーを反射しにくくするための工夫

機体の側面には日の丸が描かれていた

このモックアップは、今回のような展示会や航空ショーなどで披露するために作られたもので、世界各地を巡っている。ただ、展示する国や場所に合わせて細かい演出が入っており、たとえば今回展示されたものには日の丸が描かれていた(ただし低視認性を重視し、白い円になっている)。

EOTS (Electro Optical Targeting System)

EOTSの模型。F-35の機首の下部に装備されるため、実際の装着の向きはこの模型とは上下逆転する

コックピットにあるタッチパネル式のモニター

F-35Aのモックアップの傍らには、同機に装備されるEOTS(Electro Optical Targeting System)の模型も展示された。

EOTSはF-35にとって、空から地上を攻撃するための"眼"のような機器で、機首の下部に装備される。この中には赤外線センサーや光学センサーが入っており、取得した地上の情報をコックピットのモニターに映す。

このモニターはタッチパネル式になっており、たとえばパイロットはEOTSのセンサーが捕捉した映像を見ながら、タッチで詳しい状況を確認したり、攻撃する対象を選んでミサイルや爆弾で攻撃するといったことができる。

F-135エンジン

F-135エンジンの実物大模型。垂直離着陸ができるF-35B用の、ノズルが下を向くタイプ

エンジンを製造するプラット&ホイットニーのブースでは、中の構造が見える模型を展示していた

F-35は、プラット&ホイットニーが開発したF-135ジェット・エンジンを装備する。通常離着陸型のF-35A、短距離離陸・垂直着陸型のF-35B、空母艦載機型F-35Cで、それぞれ違いに合わせたエンジンが用意されている。

推力は、F-15やF-16が装備しているエンジンの約2倍に近く、つまり双発機であるF-15とほぼ同じ推力を、この1基のエンジンだけで出すことができる。

A2100衛星バス

ロッキード・マーティンのブースでは、A2100衛星バスの模型も展示された。

A2100衛星バスの模型

衛星バスとは、電力や通信、姿勢制御など、人工衛星にとって基本的な機能をもつ「箱」のことで、そこに衛星のミッションにとって必要となる機器(ミッション機器)を搭載し、衛星が造られる。かつての人工衛星は、衛星ごとにバスもミッション機器も毎回新しいものが造られていたが、A2100をはじめ、最近の人工衛星は衛星バスを共通化し、そこに顧客の目的に合わせて機器を搭載することで、さまざまな性能の衛星を低コストに造ることができるようになっている。

こうした衛星バスは、ボーイングやスペース・システムズ/ロラール、エアバス・ディフェンス&スペース、三菱電機など各衛星メーカーもそれぞれ独自のものを開発している。

A2100が初めて採用されたのは1996年に打ち上げられた「AMC-1」で、設計寿命の15年を達成。以来、米軍の軍事衛星から、民間の通信衛星に至るまで数多く採用され、現在軌道上で運用されている通信衛星のうち、40機以上がこのA2100を使用している。日本でも、スカパーJSATが同バスを使った通信衛星を発注しており、2019年度に打ち上げられる予定。

また、ロッキード・マーティンは、自社資金を投入した数年にわたる改良を重ね、宇宙機の電力や推進力、電子機器の強化を図るとともに、最新の製造技術を採用することによる製造コストの削減と製造期間の短縮を実現している。