10月19日、イベリア航空(本社: マドリード)のマドリード=成田線の初便が成田空港に到着した。約18年ぶりとなる日本再就航にあたり、同路線における狙いを同社CEOらが語った。

10月19日、約18年ぶりにイベリア航空機が日本の地を踏んだ(初便はエアバスA340-600型機を使用)

初便のみA340-600型機を導入

同路線は成田とマドリードを結ぶ唯一の直行便であり、エアバスA330-200型機(ビジネスクラス19席/エコノミークラス269席の全288席)を導入。初便のみ、A340-600型機(全346席)を特別導入し、乗客330人を乗せた同機は成田に着陸後、水のアーチで迎えられた。

イベリア航空は6月にマドリード=上海線を開設し、成田線は同社にとってアジアで2番目の就航先となる。経営再建後、同社は国際線ネットワークの拡大を進めており、上海線や成田線のほか、5月にはプエルトリコ線、8月からヨハネスブルグ線を再開している。成田線は成田発を月/水/土曜日とマドリード発を火/金/日曜日の週3往復便で年間9万席を提供する運航となるが、路線が軌道に乗ったタイミングで毎日運航を目指すという。

日本路線にはA330-200型機を投入

成田=マドリード線運航スケジュール(10月30日マドリード発便以降の冬ダイヤ期間中は1時間早まる)

日本人向けのサービスも開始

ツインエンジンを搭載したワイドボディーなA330-200型機には、新設計されたビジネスクラス(Business Plus)とエコノミークラスを設置。ビジネスクラスでは2mのベッドに変形する座席を使用し、全ての座席から直接通路へアクセス可能。電子機器向け電源・プラグや15.4インチのディスプレースクリーンを備える。

ビジネスクラス

エコノミークラス

成田線では機内に日本人クルーを配置し、マドリード空港でも日本人スタッフがサポート。機内ではビジネスクラスとエコノミークラスともに、日本食を選ぶこともできる。全クラスでお味噌汁やご飯を提供する他、メインディッシュはビジネスクラスでは醤油仕立ての鴨肉の蒸し煮、クルマエビ、チキン、シーフェンネル、タラバガニのパイなどを用意。エコノミークラスではカレー風味の豚肉とサイシン(菜心)ご飯とシイタケ、あるいは緑色野菜とチキンを添えた焼きそばを選択できる。加えて、ビジネスクラスでは日本酒も振る舞われる。

また、機内雑誌『RONDA』を日本語でも用意し、日本人の乗客に向けたコンテンツを掲載。機内販売では、日本路線限定の商品も取りそろえる。その他、10月1日からは同社の公式Facebook(スペイン語/英語/日本語)およびTwitterで日本の乗客向けの情報発信をしている。

南米へもスムーズな旅を実現

今回の再開には、5月に日本=スペイン間の航空交渉での調印で日本=スペイン間のオープンスカイが実現するなどの公的機関の支援のほか、2015年のスペインへの日本人観光客数が60万人以上(前年比+26.7%)になるなど、増加する訪日観光客が背景にある。

会長兼CEOのルイス・ガジェゴ氏

日本再就航での目標について、会長兼CEOであるルイス・ガジェゴ氏は「日本とスペイン間、特にマドリードにおける観光産業の強化」「南米路線への送客」と定めている。同社は現在、134機の航空機を駆使し、世界48カ国・125都市以上の地へ毎日約600便を運航。2015年時点での割合として、欧州路線は全体の19%(別途、スペイン国内は11%)に対し、南米路線は53%を占めている。

「イベリア航空は欧州から南米へ週250便を運航しています。アジアから南米へは、ペルーやアルゼンチンなどで日系の人々の需要が旺盛です。北米経由で南米に行く場合、時間の長さのほか、ビザや荷物などの問題も生じますが、イベリア航空を利用すればフローがよりスムーズになるでしょう」(ルイス氏)。

CCOのマルコ・サンサビーニ氏

CCOのマルコ・サンサビーニ氏はさらに、EUにとって日本が主要ビジネスパートナーであることを見据え、今後の運航状況によってはビジネスクラスを拡大する用意もあると話す。特に、同社はJALやブリティッシュ・エアウェイズ、フィンエアーと共同事業を展開しており、コードシェア提携の拡大でさらに利便性が高まる。

同社は経営再建において、「定時性の向上」「保有機材の刷新」「キャビンの刷新」を積極的に展開。定時性に関しては米FlightStats(フライトスタッツ)社が発表した2015年度の実績において、JAL(89.44%)に継ぐ世界第2位(88.97%)となっている。保有機材に関しては、2013年~2014年にA340-300型機を8機導入、2015年~2018年にA330-200型機を13機導入、そして、2018年~2021年にA350-900型機を16機導入する。

なお、A340-600型機に関しては、17機に対して新しいキャビンとインターネット接続環境を整備・刷新。今後の機材に関しては、「オペレーションに慣れている」(ルイス氏)という観点から、エアバス機での展開を構想している。

今後も継続して、撤退した路線への再就航を目指す

イベリア航空はルイス氏のもと、2015年に過去6年間続いた営業赤字から脱し、黒字化を達成した。「今回の再就航は、夢をのせる新時代の幕開けと言えるでしょう。われわれはまだ道半ばではありますが、着実に進んでいます。日本路線に導入するA330-200型機は、燃費もよく環境へも優しい機材です。機材の刷新とともに、今後も撤退した路線への再就航を推進していきます」とコメントしている。