冷凍食品や加工食品を子どものお弁当に使うのはNG?

子どもがいると何かと忙しく、冷凍食品や加工食品に頼りたくなることもあるはず。だが最近では、お弁当に冷凍食品や加工食品を使うことを控えさせる幼稚園もあるという。

親として、食品添加物を含む冷凍食品や加工食品とは、どのように付き合っていけばよいのだろうか。日本獣医生命科学大学 応用生命科学部で食品安全学を教える吉田充先生に話を聞いた。


食育的な観点から使用を判断するのも一案

日本で食品添加物を使用するにあたっては、さまざまな細胞試験や動物試験をした上で、厳しい使用基準が決められている。そのため吉田先生によれば、食品添加物が入っているものを日常的に食べていても、健康的には問題ないと考えられているという。しかし、食育的な観点ではどうなのだろうか。

吉田先生は「食について、お子さんに何を教えたいかということによるのではないでしょうか」と答えた。例えば最近の子どもは酸化防止剤などの食品添加物が使われている魚の切り身をよく食べているが、食品添加物が問題なのではなく、魚といえば切り身しか食べたことがないということの方が気になるのだとか。「魚の形を知らない子どももいます。本当に命を頂いているのだという実感を持ってもらうためにも、魚を丸ごと1匹買ってくるという機会があってもいいですよね」。

ペットボトルのお茶は、酸化防止剤としてビタミンCが入っているため、色が変わりにくい。そのため、ペットボトルのお茶ばかり飲んでいると、家でお茶をいれ、時間がたって色が変わると「腐ったのではないか」と勘違いする子どももいるそうだ。そもそも家庭に急須や茶葉がなかった場合には、子どもたちに日本の伝統食である「お茶とは何か」を教えることは難しくなってしまう。果たしてそれで、いいのだろうか。

「お弁当に冷凍食品や加工食品を禁止するのも、そういうところからきているのではないでしょうか」と吉田先生は分析する。

考えるべきは食品添加物より栄養バランス

また「何が正しいかというのは難しい」と前置きしつつ、「食品添加物を心配するより、栄養バランスを気にしたほうがいい」と注意する。スナック菓子の食べすぎは、スナック菓子に含まれる食品添加物よりも、塩分のとり過ぎになりやすいこと、脂質や炭水化物をとりすぎてカロリー過剰になりやすいことの方が問題、という例もあるからだ。

そんな中でも1つだけ、子どもにとらせすぎないよう気をつけた方がいい食品添加物が"合成甘味料"。「カロリーゼロだからと言っても合成甘味料の入った甘い飲み物ばかり飲んでいると、甘い味に慣れてしまい、水やお茶のような甘くない飲み物を飲みたくなくなってしまうこともあるのです」。甘い味を好む結果、糖分を多くとる食生活になり、将来的に肥満や糖尿病のおそれも出てきてしまうとのことだ。

食品添加物を避け、極力手作りにすることで、食材そのものの味を教えたり、家庭の味を子どもに伝えたりできるメリットはあるだろう。しかし、それにこだわるあまり、親が料理を過剰にストレスに感じたり、栄養バランスが崩れたりしたら本末転倒。冷凍食品や加工食品をやみくもに毛嫌いするのではなく、上手に活用することで、バランスのよい食事を作っていくことが大切といえそうだ。

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吉田充先生 プロフィール

日本獣医生命科学大学応用生命科学部食品科学科 食品安全学教授。農学博士。専門は生物生産化学・生物有機化学、食品科学。食品安全学教室では、多くの食の安全に関する問題の中からテーマを設定し研究活動を行っている。