トヨタ自動車とスズキが業務提携に向けた協議を開始した。環境、安全、情報などの分野で技術開発競争が激化する自動車業界で、互いの思惑が合致した感のある両社の提携話。「アライアンスは不得意」だったと自ら認めるトヨタが、自動運転をはじめとする先進技術の世界標準化に向けた「仲間づくり」で大きく動き始めた。

両社が提携に求めるものは

提携を持ちかけたのはスズキの方だ。同社の鈴木修会長は9月、トヨタ名誉会長の豊田章一郎氏と会談し、トヨタからの協力を得られないかと提携について相談した。トヨタの豊田章夫社長と鈴木会長が提携について話したのは先週のことだという。

提携に向けた協議の開始をアナウンスする場となった記者会見では、提携の内容やスケジュールなどについて多くの質問が出た。協議開始を決めてから「稼働日でいうと2日くらい」(豊田社長)しか経っていない段階ということで、両社トップは「具体的なことはこれから」と口をそろえた。

会見に臨むトヨタ自動車の豊田章夫社長(左)とスズキの鈴木修会長

会見で詳しい話は聞けなかったが、両社が提携に期待することは多少なりとも伝わってくる。スズキがトヨタに求めたのは、自動運転やコネクテッドカーなどに関する先進技術だろう。軽自動車を中心に、価格競争力の高いクルマを作る技術を磨いてきたスズキだが、「良品廉価のクルマづくりでは行き詰まってしまう」と鈴木会長も語るように、先進技術にキャッチアップしていくことが、業界で生き残っていく上で重要と判断したようだ。

トヨタが提携に関する発表で強調しているのは「標準化」と「仲間作り」だ。たとえば自動運転を例に取ると、欧米の自動車メーカーは業種を越えたアライアンスを形成し、自分達が開発を進める技術を世界標準として打ち出そうとしている。豊田社長は「環境、エネルギー、安心、安全はもちろん、自動運転をはじめとする先進技術・将来技術の開発も求められている」と自社の状況を説明し、「1社で(対応していくの)は限界。経営資源もあるし、インフラとの協調、(先進技術の)標準化に向けた仲間づくりも重要」と提携の意義を語った。