説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、『iPhoneもメモリ容量の大きいほうが高速なの?』という質問に答えます。

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基本的な考えかたとして、スマートフォンを含むコンピュータは物理的なメモリ(RAM)容量の大きいほうが有利です。プログラム全体を通しての処理速度にせよ、タップやドラッグなどシステムとの連携を含めた反応の鋭さにせよ、物理メモリ容量は大が小を兼ねます。製品価格と技術面を無視すれば、1ギガよりも2ギガ、2ギガよりも3ギガ欲しいところです。

しかし、RAM容量の差が処理速度を大きく左右するわけではありません。RAM容量の大きいほうがスピード低下現象を招きにくいことはありますが、積極的な速度向上要因とはなりません。パソコンの場合、RAM容量によってプログラムの処理速度が大きく影響を受けることがありますが、iOSではそれほど問題にならないのです。

パソコンの場合、プログラムの作業領域が不足すると、ストレージ上にバッキングストアと呼ばれる領域を確保してデータを移動させますが(ページング)、iOSにはバッキングストアのしくみが存在しません。iOSの場合、作業領域が不足した場合、ストレージ上に存在して書き換えることがないデータはRAM上から消去してしまい、再び必要となった時点で読み取り直します。

バッキングストアを利用するシステムの場合、ページングが発生すると処理速度に悪影響が生じます。バッキングストアとして利用されるストレージのほうが、RAMに比べアクセス速度で劣るためです。iOSはバッキングストアを使わないため、その心配はありません。

新しいiPhoneは、iPhone 7が2ギガ、iPhone 7 Plusが3ギガと容量に差がありますが、デュアルカメラ搭載により必要なメモリサイズが増えたためと考えられます。RAM容量の大きいほうがストレージからデータを読み取る回数が少なく、複数のアプリを起動してもメモリ不足により終了させられる機会は減ると考えられますが、SoCの「A10 Fusion」はクロック数などスペックが同一ですから、気にかかるほどのパフォーマンス差を生じることはないでしょう。

iPhone 7とiPhone 7 Plusのメモリ容量に差はありますが、アプリの実行速度にはほとんど影響しません