シグマは、世界最大級の写真関連展示会「Photokina 2016」で3本の新レンズを発表した。広角ズームレンズの「SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art」、大口径の中望遠単焦点レンズ「SIGMA 85mm F1.4 DG HSM | Art」、単焦点の望遠レンズ「SIGMA 500mm F4 DG OS HSM | Sports」、いずれも高い画質を実現した点をアピールしている。新レンズについて、同社代表取締役社長の山木和人氏に話を聞いた。

Photokina 2016におけるシグマブース

シグマの山木和人社長

新レンズのSIGMA 85㎜ F1.4 DG HSMは、「一番いい性能を出そう」(山木社長) という考えから開発されたレンズで、「バランスをとって、中途半端になっては意味がない」(同)と、とにかく画質を追求した製品だという。85㎜の単焦点レンズでは、独カールツァイスの「Otus 1.4/85」が最も高画質というのが山木社長の判断で、シャープネスや色収差を抑えている点など、このレンズを画質のベンチマークに試行を重ねたそうだ。

シグマが発表した3本の新レンズとシネレンズ群

Otus 1.4/85は高画質だが、マニュアルフォーカスで高価。シグマの85㎜ F1.4では、AFに対応しながら同クラスの画質を目指して開発を進めた。その結果、中心から周辺まで「フラットに性能が出ている」と山木社長。シャープネスやボケ味も重視して、色収差では特に軸上色収差の解消に注力した。

山木社長は、「見方によってはOtus 1.4/85を超えている部分もある」と自信を見せる。Otus 1.4/85は40万円を超える価格だが、その半額以下を想定しているとのこと。現時点では価格は未公表だが、米国のカメラ店「B&H」では約13万円の値付けが公開されていたようだ。一概に日本の価格と比較はできないが、半額以下という価格は間違いなさそうだ。

以下4枚、SIGMA 85mm F1.4 DG HSM

SIGMA 12-24mm F4 DG HSMは、「広角ズームのパイオニア」であるシグマが放つ最新モデル。2003年の初代12-24mm以来、3代目に当たる今回のレンズでは、初めてF4通しの明るさを実現した。このレンズを開発している最中の2015年2月には、キヤノンが「EF11-24mm F4L USM」を発売。山木社長は「(11mmとは) やられたよ」と笑うが、それを受けて再検討した結果、無理をして12mm以上の広角にはせず、画質と明るさを重視して開発することを決めたそうだ。

広角ズームでF4通しを実現しながら、低価格に抑えられた秘密は、大口径非球面レンズにある。通常、大口径の非球面レンズは1つ1つ研削して仕上げていく。これは直接コストに響く部分で、シグマでは今回、非球面レンズにモールド成型を採用した。これまで、モールド非球面レンズは小型のレンズで使われていた技法だが、次第に大きなレンズにも適用できるようになりつつある。

一眼レフ向けで最大のグラスモールド非球面レンズは直径50mmだという。これに対して、12-24mm F4では、直径80㎜のグラスモールド非球面レンズの製造を可能にした。山木社長は「これがブレークスルーになった」と熱が入る。他社では製造できない80mmの非球面レンズを、photokinaの会場で海外のメーカーに見せると、驚いたうえで「うちに納入しないか」と誘われるのだそうだ。ちなみに、前述の米B&Hでは15万円ぐらいの値付けが出たとか。

以下4枚、12-24mm F4 DG HSM

500㎜ F4 DG OS HSMは、プロ仕様の超望遠単焦点レンズ。同様のレンズはキヤノンやニコンも持っているが、100万円を超える価格帯であり、これを低価格化することがプロジェクトのコンセプトだったという。価格以外でも負けないように、「光学設計は当然最高性能だし、防塵防滴、マグネシウム合金を使って軽量化を図り、フードもカーボン素材にした。そこはケチらない」と、100万円クラスのレンズに負けない仕様にしたと話す。

SIGMA 500mm F4 DG OS HSM

シグマはphotokinaの前にシネレンズを一気に発表した。これは、既存の同社の写真用レンズをシネレンズ向けに再設計したことから、一気にラインナップを拡充できたのだという。例えば「24-35mm T2.2 FF」は「24-35mm F2 DG HSM」だし、「18-35mm T2」は「18-35mm F1.8 DC HSM」、「50-100㎜ T2」は「50-100㎜ F1.8 DC HSM」、「85㎜ T1.5 FF」は「85㎜ F1.4 DG HSM」といった具合で、すべて同じ光学設計だ。実は85㎜ F1.4は、写真用より先にシネレンズとして発表されていたというわけだ。

光学設計が同じでメカ部分だけを新規設計しているため、写真用レンズと含めて量産効果が働き、低価格化を実現できるというのがメリットだ。ちなみに、シネレンズでは写真用レンズの設計値であるF値に対して光の反射や吸収を考慮した「T値」を使う。T2クラスのズームレンズは「業界に2本しかなく2000万円以上する。これを50万円以下にする」と山木社長は語る。

なお、開発中の「sd Quattro H」は2016年末までの発売を予定しているとのことだ。

SIGMA sd Quattro H