エプソンは9月29日、Android 5.1を採用したメガネ型ウェアラブルデバイス、「MOVERIO」シリーズの新製品を発表。メディア向けに開催された発表会とタッチ&トライの様子をレポートする。

MOVERIOシリーズの最新モデル「BT-300」

エプソンのMOVERIO(モベリオ)シリーズは、2011年に産業用として初代「BT-100」をリリースし、2014年に第2世代(現行機種)の個人用「BT-200」をリリース。今回の新モデル「BT-300」は、第3世代の個人向けデバイスだ。11月30日の発売を予定している。メガネ型デバイスを装着し、視界の中でリアル風景とスクリーン投映を重ねるシステムだ。いわゆる「AR」(Augmented Reality:拡張現実)と呼ばれるものの一種である。

発表会では、セイコーエプソンの津田部長とエプソン販売の蟹澤部長がプレゼンに立ち、それぞれ製品開発とプロモーションの立場からBT-300の魅力について語った。

視界に映像だけを浮かべる独自のテクノロジー

津田部長は、BT-300がBT-200の後継機であり、2011年の初代機以来のロードマップに従って開発したと述べる。基本的には従来機と同じ用途を想定しており、どこをどのようにブラッシュアップしたのか詳しく説明した。

セイコーエプソン ビジュアルプロダクツ事業部 HMD事業推進部 部長 津田敦也氏

エプソンのスマートグラス、ここまでのロードマップ。第1世代の開発時からロードマップは基本的に変更されていないという。第4世代も詳細は明らかにできないものの、予定通りの内容で開発しているそうだ

MOVERIOは、ヘッドセット(メガネ)部分と、バッテリーを内蔵したコントローラー部分という大きく2つのパーツで構成される。ヘッドセット部分は前モデルのBT-200と比べて20%軽量化しており、これにはエプソン独自技術のSi-OLED(シリコン有機発光ダイオード)が大きく寄与した。また、Si-OLEDは映像の高画質化・高コントラスト化にも貢献している。

ヘッドセット部分はより軽く、スタイリッシュになった

照度センサーを搭載することで、ディスプレイの自動輝度調整が可能に。フレームの付け根部分に搭載するカメラは、BT-200の30万画素から500万画素へと大きく引き上げられた。カメラは写真・動画の撮影や、画像認識に利用される。

ディスプレイの解像度は1,280×720ドット、コントラストは100,000:1だ。BT-200ではそれぞれ960×540ドット、230:1だったので、こちらもかなり大きくスペックアップしている。Wi-Fiは従来の2.4GHz帯を使うIEEE802.11b/g/nに加え、新たに5GHz帯を使うIEEE802.11a/ac/nに対応した。

コントローラーも大きく変わった。ピンチやフリック、スクロールといったマルチタッチ操作に対応するトラックパッドに加え、十字キーと決定キーを搭載。アイテムの選択や決定などの操作性が大きく向上している。

CPUにはIntel Atom X5 Processorを採用。OSとしてAndroid 5.1を搭載する。microSD/microSDHCメモリーカードスロットやMicro USBポートを備え、容量の大きな動画なども手軽に読み書きできる。

コントローラーはスマートフォンより一回り小さいくらいの大きさ。バッテリーを内蔵しているため、少し厚みがある。W56×D116×H23mm

新機種BT-300と現行機種BT-200をスペック表で比較したもの。機能と性能が大きく向上していることが分かる

ヘッドセットのレンズ部分にシースルーの映像を投影する仕組みには、エプソン独自の光学技術が詰め込まれている。レンズ(導光板)の内部に設けられたハーフミラーが外界光をそのまま通し、投射映像は反射して目に入るようにすることで、映像が視界に浮かんで見える。

独自のLED積層構造は、光共振器を利用するスマートフォンのディスプレイや、白色発光素子のいいとこ取りをした特長を持つ。広色域、高効率、微細化可能などの優位性に加えて、高輝度・長寿命もメリットだ。

BT-300の光学エンジンの仕組みとSi-OLEDの仕組み

BT-200のユーザーからのフィードバックが多く、エプソンとして改善したかった点の1つが、視野の中にスクリーンイメージが見え、映像に枠が付いたように感じるという声だった。これはコントラスト比に起因する問題で、BT-300では100,000:1のコントラスト比を実現したことにより、情報と視野に境目ができず、見たい情報が背景から美しく浮かび上がるようになった。

パネルサイズは従来の5.1インチから0.43インチに微細化し、精細度は575ppiから3,415ppiへと向上。ドットピッチが44umから7.5ummへと圧倒的に細かくなり、粗の目立たない滑らかな映像表示が可能だ。

BT-200では「情報が何もない部分」の映像もスクリーンイメージとして投影されてしまい、見づらさの1つになっていた。BT-300では文字や図形だけが視野に浮いている表現も自然に見せられる