火加減を間違えて料理を台無しにしたことはないだろうか。筆者はある。というか、成功した時の方が少ないと言っていい。料理上手な読者はご存じないかもしれないが、ペペロンチーノはオリーブオイルを熱しすぎると茶色く仕上がるのである。パスタとは思えない苦味がしたが、泣きながら食べた。

そんな筆者がこのたび、リンナイのショールームで自動調理機能がついた最新ガスコンロの機能を体験する機会に恵まれた。果たして最先端の自動調理機能は、料理下手でも使いこなせるのか? その機能が秘める可能性について紹介しよう。

アプリと連動する最新の自動調理機能、どこまで使えるのか!?

価格は27万4,000円から

今回筆者が見学したのは、リンナイのガスビルトインコンロ「DELICIA(デリシア)」。最新モデルは2016年8月に発売されている。幅の長さやオーブン接続の有無、電源が乾電池かコンセントか、などによって異なるが、気になる価格は27万4,000円~33万1,000円だ。「あ、買えないな」と思った筆者であったが、ガスコンロの買い替えや家の建て替え、引っ越し等の予定がある人は参考にしていただきたい。

今回、自動調理の実演で使用した「RHS71W22E4VC-STW」(33万1,000円)。幅75cmのワイドタイプでAC100Vのコンセント給電、オーブン接続あり

従来の自動調理機能も搭載

さっそく機能を見ていこう。「DELICIA」シリーズではこれまでも、鍋やグリルを使って自動で米が炊けたりケーキが焼けたりといった自動調理機能が既に搭載されていた。これはこれで非常に便利な機能である。が、白いご飯にこれといってこだわりがない人は炊飯器でも十分だろうし、ケーキに関しては言わずもがな、趣味の領域だ。

ガスコンロで炊くご飯は、なんといってもおこげが魅力

グリルでケーキも自動調理できる

裏返すだけでハンバーグができる!?

しかし、今回発売されたモデルには業界初の「コンロオートメニュー」が追加された。この機能を使えば、フライパンで「焼き餃子」「ハンバーグ」「煮魚」、鍋で「里芋の煮物」「茶碗蒸し」といったポピュラーなおかず計5種類の自動調理が可能となる。

たとえばハンバーグの場合、ひき肉やつなぎで作ったハンバーグのたねをフライパンに並べて、オートメニュースイッチを押すだけ。その後の火加減は全てコンロ任せだ。ハンバーグの場合のみ、手動で肉を裏返す必要があるが、裏返すタイミングもコンロが教えてくれる。これは間違えようがない……。

最新のコンロではポピュラーなおかずも自動調理可能。ハンバーグは、たねを並べて途中で裏返すだけで調理完了だ

ちなみに、グリルやオーブンのような密閉された空間と違い、上部が開かれたフライパンは自動の火力調整が難しいそう。また、使用するフライパンによっては火の通り方に差が出る場合もある。そのため、自動調理の導入にあたっては"推奨フライパン"の設定が避けられないそうだ。現に、リンナイはティファールの「グレージュ・プレミア フライパン 26cm」(メーカー希望小売価格5,000円)を推奨している。

そうしたデメリットも含めて、業界で初めてリンナイがこの機能を導入した背景には、「安全、安心、調理失敗の減少」を求める消費者の声が"推奨フライパンの購入"に対する懸念よりも大きくなってきたという流れがあるという。

自動調理の際は、鍋底に接するセンサーで調理器具の温度変化を測る。鍋やフライパンがコンロから離れると火が自動で弱まるなどの安全装置付き

アプリで選んでコンロ任せ

さて、おかずが自動で作れるのはとてもありがたいが、定番とはいえメニューが5種類では活用の幅は限られる。そこで登場するのが、Bluetoothでコンロと連動するスマートフォン向けアプリ「デリシアプリ」だ。

「デリシアプリ」で自動調理メニューを拡張!

同アプリには、9月27日現在61種類のレシピが登録されている。その中から好きなレシピを選び、表示される手順通りに素材を下ごしらえし、アプリで「レシピをグリルに送信」ボタンを押せば、そのレシピに最適な火加減で調理をしてくれるのだ。自動調理のメニューが増えれば増えるだけ、あらゆる料理で調理の手間が省けることになるのでありがたい。

レシピを選び、「グリルに送信」ボタンを押す

コンロの点火ボタンを押せば調理がスタート。あとはできあがるのを待つだけだ

とはいえ現在、フライパンを使うレシピは3品とラインアップはやや心もとなく、しかもそのうちの1品は「羽根つき焼き餃子」なのでデフォルトのメニューと餃子がかぶっている。鍋を使ったレシピも現在は4品と少なめだが、レシピは1週間に1品のペースで追加され、10月20日までに100レシピに達する予定とのことなので、このあたりは今後に期待だ。

一方で、グリルを使ったレシピは豊富だ。専用の「グリルプレート」(4,800円)を使えば13品、「ココット」(1万3.800円~)を使えば11品、「ココットダッチオーブン」(1万3,800円~)を使えば19品の自動調理が可能。とはいえそれぞれの器具を買いそろえる必要はあるので、家族の好みやライフスタイルと相談しつつ使っていくのがいいだろう。

専用「グリルプレート」(4,800円)

専用「ココット」(1万3.800円~)

専用「ココットダッチオーブン」(1万3,800円~)

料理好きには"鬼に金棒"

今回体験した「DELICIA」の自動調理は、1から10までコンロ任せで料理ができる、といったものではない。しかし、料理の工程で最も難易度が高いのは火加減や加熱時間の調節だと筆者は思っているので、その点を任せっきりにできるのは非常に心強く感じた。

何しろ、一度火にかけてしまえば後はコンロが完璧に調整してくれるので、その間別の料理の下ごしらえに集中できるのだ。自動調理とはいえ火のそばを離れるわけにはいかないので、料理の時間を短縮したい人というよりは、たくさんの献立を効率よくそろえたい人に向いているだろう。

また、これらの機能を使う前提として、素材の下ごしらえは正しくできている必要があるため、茶色いペペロンチーノを作り上げてしまうような人間にはまだ早いということもわかった。料理に親しみ、料理の楽しさを知った人にこそ"鬼に金棒"となり得るのが最先端のガスコンロと言えそうだ。

※価格は全て税別。記事中の情報・価格は2016年9月時点のもの