食事について

――隠居生活では食費にどれくらいお金をかけていますか?

買い物は週に大体2回で、1回の買い物に使うのは1,000円くらいですかね。1週間のメニューを考えてから買い物をします。米は無農薬の玄米を知り合いの農家さんに分けてもらっています。野菜はまるごと使うことを考えます。例えばキャベツを1玉買ったら1週間でどうやって使い切るかってことをメインで考えています。

――「自炊」は結果的にお金がかかる、という人がいます。隠居生活で身につけた「自炊代を安く抑える方法」を教えてください。

毎日の基本メニューがあって、大体毎日同じものを食べています。朝はスコーンと紅茶、お昼は麺類で夜は玄米と味噌汁という基本のメニューを決めておくと、買うものが決まってきて、余計なものを買うことがなくなります。

――とても穏やかに冷静に物事を見て考えているように感じますが、食生活は関係あるんでしょうか?

肉は瞬発力がある食べ物ですが、玄米菜食をしていると、感情をコントロールできるような気がします。玄米菜食の「感情が穏やかでいられる」という効果は、出方がゆるやかなので、年単位で続けることが必要です。時間はかかりますけど、今強欲で困っている方におすすめです(笑)。

――お話を伺っていると、仙人のような生活を楽しんでいると感じます。大原さんは物欲とどうつきあっていますか?

物欲はあまりないですね。欲しい物も思いつかない。強いて言えば、神社行ったときにおみくじを引くくらいです。大吉が出たらそれを集めてて、本のしおりにしています。本を開いたときに「ああ、俺は大吉だ!」って良い気分になれます(笑)。

大吉のおみくじを本に挟んでしおりに

――「物欲はあまりない」とのことですが、物を購入するときに気をつけていることはありますか?

物は必要な分しか持っていませんし、必要がなくなれば人にあげてしまいます。買うときは、処分するときのことを考えています。立派な物は必要なくて、例えば衣装ケースなら厚手のたためる段ボールで良いと思っています。

――「ミニマリスト」「ミニマリズム」(最小限のもので暮らすライフスタイル)に少し近いものがあると思うのですが、それらについてどう思いますか?

私は「持たない生活」も、「年収90万円」も目的にしているわけじゃないんです。あくまでも自分が求める快適さの結果なのです。自分が快適だと思うことが、結果として物を持たないことであれば良いと思います。

人付き合いについて

――最近はSNSなどで「●●に行った」「□□を食べた」といったアピール合戦があります。「いかに自分が充実しているように見せられるか」を気にする人も多いようです。そこから抜け出すためにはどうしたらいいですか?

本当に抜け出したいのなら、自分自身に何が快適なのか問いかけることが近道だと思います。でも、抜け出してつらかったら意味がないですよね。アピールすることが好きで快適なら、それで良いんじゃないかなって思います。

――例えば人から食事や遊びに誘われたらどうしますか?

年収90万円ということを知ると、そんなすごい(お金がかかる)ことに誘われないですし、うまく回っているんです。自分らしさを選択できることが1番の贅沢なんじゃないかな。

――そんな大原さんが今でもつきあっている人はどんな人ですか?

会社員の方は少ないですね。フリーの方やミュージシャンの知り合いが多いです。社会にとらわれていない人とのつきあいが多いですね。

――外食や遊びに行って贅沢をしたいとは思いませんか?

率先して人づきあいをしに行くタイプではないので、遊びに行きたい、外食をしたいとはあまり思いません。会いたくない人に会わなくて良いとか、行きたくないところに行かなくて良いとか、いかに自分が快適に過ごすことを実行することが贅沢だと思っているので、私が贅沢だと感じていることは、あまりお金を使うものではないんです。

――人生観ですね。自分で快適を選んでいるという。

そうですね。お金があってもなくてもどっちでも良いんです。今ワンルームで快適に過ごしてますけど、豪邸に住んでても、何とも感じないだろうと思っています。自分の価値観や、快適の実感が先にあるんです。その快適さを得ようとした結果が年収90万円だっただけです。そう考えると、執着がなくなるからとても楽なんです。

――「人は平等というが、『経済力』は平等ではない」と著書にありますが、その事実を受けいれるにはどうしたらよいでしょうか。

大人になって様々な視点でものが見られるようになってから、お金持ちにはお金持ちなりの大変さがあるということがわかりました。その視点で考えることができたのは、「世の中にはどうにもならないことがある」ということを知っていたからではないかと思っています。生かされていると謙虚に考えることができますし、社会との向き合い方も自分で選択できるのではないでしょうか。視点を変えることができると、とても楽になりますね。