フリーランスに限った話ではないのだが、フリーランスにとって"健康"は資本である。風邪をこじらせたら確実に予定外の収入減に見舞われるし、大病を患ったら築いてきたものが台無しになりかねない。人生何が起こるか分からないけど、少なくとも自己管理ができていなくて、そんな事態に陥らないように健康維持には気をつけている。面倒くさくなったり、夜中のラーメンの誘惑に駆られたら、最近はイチローを思い出すようにしている。42歳、刈り込まれた頭髪はグレーなのにあのスピードで長打を積み重ね、日々の準備を怠っていないから不安定な出場でもハイアベレージをキープしている。そりゃ、まぁ、もちろんイチローに比べたら、自分はレシプロ練習機みたいなものだけど、ちゃんとメンテナンスし続けたら、それなりに長く飛び続けられると思うのだ。

50メートルの耐水性能、GPSを備え、デュアルコアプロセッサで性能が向上した「Apple Watch Series 2」

そのためには、まず自分が毎日どれだけ体を動かしているかを知ること。Nike+iPod以来、アクティビティトラッカー、スマートフォン、フィットネストラッカー、スマートウォッチ等々、ワークアウトのコンパニオンを求めて散財を重ねてきた。そんな私にとって「Apple Watch Series 2」はエポックメイキングなデバイスの登場である。そう唱えると「GPSを搭載して防水になっただけでしょ」とクールに返されることが少なくないが、「なにをおっしゃるウサギさん」だ。Apple Watchの体験はそのままに、ほぼ同じサイズでGPS内蔵と防塵・防水を実現しているのがスゴいのだ。

Series 2でApple Watchはフィットネスに路線変更したという指摘もあるが、オリジナルモデル発表時にAppleはApple Watchのポイントを「先進的な時計」「人々を結ぶ新たな方法」そして「健康&フィットネスのコンパニオン」としていた

どういうことかというと、今日の運動やアクティビティをトラッキングするデバイスは以下の3つに大別できる。

  1. ディスプレイのないシンプルなトラッキングデバイス。Fitbit FlexやJawbone Upのようなブレスレット型、Misfit Shine/Flashのようなメダル型など。加速度計を使って歩数や動きを計測する。

  2. 心拍数計を備えたアクティビティトラッカー。個人的にお気に入りだったのはFitbit Charge HR。「心拍数って必要?」という人が少なくないが、心拍数によってカロリー消費が正確に測れるので、どれだけ運動しているかを知るという目的では重要。また、ウエイトトレーニングやヨガのような移動しない運動もちゃんと記録できるようになる。

  3. GPS内蔵のフィットネストラッカー。走行ペースなどをきちんと把握するには位置を正確にトラッキングする必要がある。スマートフォンのGPS機能を利用するという方法もあるが、走行ペースまでしっかりと把握したい人=けっこう本気でワークアウトしている人にとって、最近の巨大化しているスマートフォンはワークアウトの邪魔になるのでGPS内蔵のトラッカーが求められる。また、トラッカーがGPS内蔵で防塵・防水だったら水泳やMTBのトレールランようなスマートフォンを携帯できない時でも運動を記録できる。

左から(1)Fitbit Flex、(2)Fitbit Charge HR、(3)GarminのVivoactive HR

「2」と「3」の間には大きな隔たりがある。GPS内蔵のフィットネストラッカーやGPSウォッチは、サイズが大きくてフィットネス感の強いデザインのものが多く、スポーツウエアやアウトドアウエア以外の服装に合わせるのが難しい。手軽に使えて普段も常に身に付けていられるのは「2」まで、「3」の機能はフィットネスを本気で追求する人たちにユーザーが限られている。

でも、「3」の機能は普通の人たちのエクササイズやワークアウトにも大いに役立つのだ。ミラーレスカメラに使われていた1インチの大型センサーがコンパクトデジカメにも採用され始めてから普通の人たちが高品質な写真を気軽に楽しめるようになったように、もし「3」の機能が普通の人たちにもたらされたらワークアウトやエクササイズの楽しみ方が変わるはずだ。

初代Apple Watchは「2」のデバイスだ。私は発売と同時に入手し、アクティビティの目標の達成度をひと目で確認できる標準アプリ「アクティビティ」を気に入って、ずっと使い続けている。それ故にApple Watchが「2」のデバイスにとどまっているのが残念でもあった。10キロ・ランとかに出る前の準備で高いペースを維持しながら走りたい時や水泳の時などは別のデバイスを使っていて、付け替えたり、充電とか複数のデバイスの管理を面倒に感じていた。

そんな苦労がApple Watch Series 2で解消された。

3つのカラフルなリング(ムーブ、エクササイズ、スタンド)を一周させたらその日の目標達成、リングを閉じずにはいられなくなるデザインが秀逸な「アクティビティ」アプリ。家族や友だちとアクティビティを共有して達成を競うことも可能

Apple Watch Series 2に関してはすでに数多くのレビュー記事が書かれていて、GPS搭載に伴って内蔵バッテリーが大きくなり、ケースが0.9ミリ厚くなったのをがっかりな点に挙げるレビューが少なくない。私の見方は逆だ。比べるなら、GPSを内蔵した既存のゴツいフィットネストラッカーや大ぶりなGPSウォッチである。0.9ミリの厚み増しは、Apple Watchのデザイン性を損なうものではない。言われなければ、大きさの変化に気づかない人も多いと思う。その程度のサイズの変化でGPSと防塵・防水を実現した。注目すべきは、どんな時でも身に付けていられるデザインで「2」と「3」の隔たりを埋めていること。オリジナルApple Watchのファッション性のまま「3」の機能までカバーできる。だから、エポックメイキングなデバイスなのだ。

常に身に付けていられるオリジナルモデルのデザインはそのまま、がSeries 2のスゴいところ

「3」ほどのフィットネストラッキングが不要なら、オリジナルApple WatchがデュアルコアCPU搭載の「Apple Watch Series 1」になって引き続き販売されている