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健康維持に、ストレス発散にと、スイミングを趣味にされている方は多いのではないでしょうか。でも、妊娠した後もスイミングは続けて大丈夫なのでしょうか。今回はEn女医会の産婦人科専門医・間瀬有里先生にお聞きしました。

適度の運動なら大丈夫

ーースイミングは、妊娠後も続けて大丈夫でしょうか?

体の負担にならない程度でしたら、どんな運動も大丈夫ですよ。とくに、普段から慣れている運動はいいですね。スイミングを趣味にしていらっしゃるなら、浮力を上手に利用したマタニティスイミングもあるので試してみてはいかがでしょうか。

ーー体の負担になっているかどうかを知るにはどうしたら良いでしょうか

忘れてはいけないのは、「妊娠している=いつもと同じ体ではない」ということなんです。自分では気づかないうちに、高血圧や糖尿の傾向が始まっているかもしれません。その場合は、軽い運動でも負担になってしまうことがあります。必ず妊婦健診をうけて、医師と相談してください。

スイミングが危険な場合もある?

ーースイミングをしないほうがいい場合もありますか?

もちろんあります。合併症がある、切迫流産の危険がある場合などはもってのほかです。また、通常のスイミングはよくても、競技水泳のトレーニングとなると話は違ってきます。どの程度本格的に泳ぐかにもよりますが、激しい運動の場合はコーチと医師との緻密なやりとりが必要になってくるでしょう。

ーースイミングの教室によっては、医師の診断書が必要なこともあるようですが

ありますね。診断書を求めてくる教室のほうが信頼できますよ。「いま妊娠何カ月で、どんな状態にあるから、これくらいの運動は大丈夫」など、教室と医師とが連携していればより安心ですから。基本「安定期に入るまではプールに入らない方がいい」という方針の教室が多いと思います。

気をつけるべきことって?

ーー医師や教室と相談し、スイミングをしてもOKになったとき、それでも気をつけなくてはならない点はありますか?

妊娠中は、普段より体が敏感になっていると思った方がいいです。そう考えると、いつもは問題がないプールの消毒液にかぶれてもおかしくはないですし、塩素消毒はされていても共同で使うプールに違和感を覚えることもなくはないかもしれません。シャワールーム、ロッカールーム、バスタオルの衛生管理も心配になります。

ーーなぜ妊娠すると敏感になるのでしょうか

妊娠すると、免疫力が落ちるからです。そもそも免疫とは、さまざまな細菌やウイルスから体を守るために備わっている力です。妊娠中も免疫力が強いままだと、母体が赤ちゃんを排除すべきものとして認識してしまうことがあるのです。赤ちゃんの半分は父親由来のものでできているので、異物だと判断されてしまうことがあるのですね。だから、赤ちゃんを守るために、母体は一時的に免疫の機能を低下させて対応するのです。

ーーいつもより自分を守るための方策が必要なのですね

そうです。妊娠していなくても、体が弱っているときに病院に行くと、待合室にいるだけで風邪をもらってしまったり、インフルエンザにかかってしまったりします。そんなときには危ない場所は避けるべきですよね。それと同じで、妊娠しているときには体が敏感になっていることを知る必要があります。

ーー適度な運動は問題ないけれど、どんな危険性があるかは確認したほうが良いのですね

そうですね。病気ではありませんが、妊娠中なのだということは忘れないようにしましょう。

ーーありがとうございました!

■プロフィール
間瀬有里
2003年 日本医科大学卒業。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加するEn女医会に所属している(En女医会とは、会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用し、医療分野での啓発活動を積極的に行っている団体)。
産婦人科専門医、指導医。医学博士。大学病院助教を経て、現在、東京ミッドタウンクリニック勤務。長年の大学病院勤務経験を生かし、現在は健診業務から一般外来診療まで幅広く対応している。二児の母としても、日々奮闘中。