SIXは、曲に合わせて歌詞を表示するワイヤレススピーカー「Lyric speaker」の発売日を、11月14日に決定した。価格は324,000円(税込)。発売日決定に合わせ開催された完成披露会では、GLAYのギタリストTAKURO氏らが登壇し、Lyric speakerの魅力を語った。

Lyric speaker。曲調に合わせてフォントと動きが変わるモーショングラフィックを生成する

Lyric speakerは、スマートフォンとWi-Fiで接続するワイヤレススピーカーだ。音楽を再生すると、スピーカー本体がインターネットを介してシンクパワーの「プチリリ歌詞データベース」に接続し、楽曲の歌詞情報を取得。同時に、産業技術総合研究所のデータベースで、楽曲の雰囲気を自動解析する。これにより、スピーカー前面の透過型液晶ディスプレイに、曲の雰囲気の合ったフォントや動きで歌詞を表示できる。現在は、約120万曲の歌詞を表示可能だが、今後も邦楽・洋楽問わず対応曲を拡大していく。

SIXの斉藤迅氏は、開発の経緯について「一昔前はCDの歌詞カードを読みながら音楽と向きあう時間があったが、ダウンロード配信で音楽を聴くようになり、歌詞をじっくり味わう場所がなくなってきている。テクノロジーが進化していく中で失っていく豊かさを、テクノロジーの力でもう一度取り戻したいと考えた」と説明した。

「歌詞の魅力を存分に楽しんでほしい」とSIXの斉藤迅氏

披露会には、開発の段階からアドバイスをしていたというGLAYのギタリストTAKURO氏と、Mistletoeの代表取締役社長兼CEO 孫泰蔵氏も登壇。孫氏は「iPod以来の画期的な発明だ。刺激の強いミュージックビデオが主流になっている現在、歌詞の力が相対的に低くなっていた。Lyric speakerはあらためて歌詞の持つ力を体験できる新しいメディアと言える」と絶賛した。

「斉藤さんからは、価格設定と製品クオリティのバランスについて相談をもらったが、(クオリティ重視に)振り切ったほうがよいとアドバイスした」と孫泰蔵氏

TAKURO氏も、ミュージシャンの立場からLyric speakerの魅力を伝えた。同氏は歌詞を書く際、たとえば「あいたい」という言葉にはどの漢字を使うか、平仮名にしようか、と悩むこともしばしばで、歌詞の響きだけでなく文字としての表現にも強いこだわりがあるという。Lyric speakerについては「文字からビートが感じられて、見ていて飽きない。歌詞カードを読むのとは違った楽しさがある。テクノロジーの進化によって音楽が身近になっていくほどに、なぜか歌詞だけが置いてけぼりになっているという印象がミュージシャンにはある。作詞家は、言葉の一つひとつを搾り出すように作っているが、その言葉を思っていた以上に表現してくれるのが良い。作詞家冥利につきるスピーカーで、よく作ってくれたと感謝している」とコメントしていた。

「歌詞の言葉選び、漢字選びにはすごくこだわっている。そんなミュージシャンの意向を十分に汲んでくれるスピーカーができた」とTAKURO氏

また、「斉藤さんは、勝手に作ったフォントとモーショングラフィックの雰囲気をアーティスト側が受け入れてくれるのかと気に病んでいたが、これに賛成しないアーティストはいない」と断言。「若いアーティストは、自分だったらこんな使い方をしたい、こんな雰囲気にしたい、この曲はこんな雰囲気なんだと理解できるし、それにより表現の幅がさらに広がる。音楽に関わっている人々の気持ちをよく理解している」とエールを送った。実際、ミュージシャン仲間にLyric speakerの話をすると興味を持たれることが多く、GLAYのボーカルTERU氏はすでに2台予約注文したという。

孫氏は、同スピーカーが今後、海外で高い評価を受ける可能性があると話した。「RAP GENIUSという、ラップの歌詞解説サイトがアメリカで大流行している。ラッパーが何を言っているか知りたいという、リスナーのニーズにマッチしたものだからだ。ラッパー自身、"何を語るか"を重要視し始めているので、Lyric speakerもヒップポップカルチャーのファンやアーティストに大いに支持されるのではないか」。

背面

スピーカーユニット

SIXでは、Lyric speakerの歌詞表示システムでミュージシャンを支援する「Lyric Culture Project」を開始。スピーカーで採用している表現エンジン「Lyric Sync Technology」を使った歌詞やモーショングラフィックを、期間限定でミュージシャンに無償提供するものだ。動画サイトへのアップやライブでの使用など自由に使ってほしいとしている。孫氏は「ライブ会場でプロジェクションマッピングを使い、音楽と歌詞の海に囲まれる、そんな演出も生まれるかもしれない。Lyric Sync Technologyから新しい音楽の形が生まれる可能性もあるだろう」と期待を寄せていた。

TAKURO氏も同プロジェクトを支持する。「ミュージックビデオの演出がエスカレートしている傾向にあるが、(今の風潮は)ちょっと違うんじゃないかと、Lyric speakerを見たときに気付かされた。Lyric Culture Projectは、資金をかけられない若手ミュージシャンが、自分たちの思いを伝えるための良い手段になる」と評価した。

【動画】Lyric speaker visualize “Flying Lotus - Never Catch Me ft. Kendrick Lamar”