地震発生のメカニズムとその予測に迫ったNHKスペシャルが放映された

NHKは9月11日、「MEGA CRISIS 巨大危機~脅威と闘う者たち~ 第2集 地震予測に挑む ~次はいつ どこで起きるのか~」と題したNHKスペシャルを放映。昨今、日本列島各地で起きている大規模な地震が起きているメカニズムや、その危機を未然に防ごうとする人々の姿を紹介した。

番組内では、次に巨大地震が来るとおぼしき地域も具体的に紹介。放映後にはその賛否などをめぐり、視聴者がさまざまなコメントをインターネット上に書き込んでいた。

大地震は次の地震への「火種」をうむ

2016年4月に2度の大きな揺れを観測した熊本地震は、4月14日と16日の2度に分け、熊本県をはじめとする九州地方に大きな被害をもたらした。全国には2,000を超える活断層があるとされているが、その中で次はどこの活断層に危険がおよんでいるのか――。その予測を科学的に実証しようと挑んでいるのが、東北大学 災害科学国際研究所の遠田晋次教授だ。

「大きい地震が起こりやすくなった状態、もしくは起こりにくくなった状態をある程度明示することは可能」と話す遠田教授は、地震が起きる場所にはそのきっかけ、いわば「火種」があると考えている。

その火種の実態を初めてつかんだのは、1999年にトルコで起きた地震だ。同年8月にトルコ北部を走る北アナトリア断層の一部がずれ動き、M7.6の地震が発生、それから3カ月もたたないうちにM7.2の地震が発生した。遠田教授は、密接した地震には関係があるとみており、その発生メカニズムを以下のように考えている。

(1)活断層の一部がずれ動き地震が発生すると、動いた断層の両端で地盤が大きくひずむ

(2)その後、小規模な地震がひずんだ場所で発生しやすくなる

(3)ひずみと小さな地震が重なった所に火種が起きる

(4)火種が起きた場所にずれ動きやすい活断層があると、火種がきっかけとなって次の地震が発生する

実際、1999年のトルコでは、最初のM7.6の地震で5つの活断層がずれ動き地震が発生。そしてひずみが生じたエリア付近に小規模地震が発生して火種ができた。3カ月後の地震は、その火種の中の活断層がずれ動いて起こったとみられている。この現象が、「地震が起きて火種が生まれやすくなると、周辺で次の地震が起きやすくなる」との考え方を導き出した。

日本でも、熊本地震の2度目の地震(いわゆる本震)がこの現象に当てはまると考えられている。テレビ画面には、4月14日のM6.5の地震でずれ動いた活断層の周りを取り囲むようにひずみが生じている映像が映し出された。そしてひずみ付近で小規模地震が発生して火種が生まれ、その2日後に火種の中の活断層がずれ動いて本震が起きたのではないかとの説明がなされていた。

熊本地震のきっかけは2000年にあった?

遠田教授は、今回の熊本地震の前にも火種があったのではないかと考え、過去の地震データを詳細に解析した。すると、鍵となる一つの地震が浮かんだとのこと。それは、2000年6月に熊本で起きたM5の地震。活断層を中心に十字架のような形でひずみができ、小規模地震が起きて地震の火種が生まれた。4月14日の地震は、その火種から伸びる活断層がずれ動いて発生したという。

地震の火種を見れば、次に大きな地震が来る場所がわかるのではないか――。遠田教授が過去20年のデータを調べたところ、以下の2カ所で火種が見つかった。

一つは新潟県糸魚川市から静岡県静岡市駿河区付近に至る「糸魚川-静岡構造線断層帯」。この周辺の牛伏寺断層は注意が必要と指摘している。もう一つは宮城県仙台市周辺の「長町-利府線断層帯」。こちらは1998年に火種が発生していると考えられている。仮に長町-利府線断層帯が一度にずれ動いた場合、国の想定によると仙台市で最大震度7の地震が発生し、最悪の場合、死者は1,000人に達するとされている。

日本地震学会の山岡耕春会長によると、火種は消えることもあるし、火種ができたからといって必ず地震が起きるわけではない。ただ、周辺の活断層で起きる地震発生に近づくプロセスであることは間違いないと山岡会長は指摘。そして、牛伏寺断層による地震は「ある意味、いつ来てもおかしくない」そうで、長町-利府線断層帯による地震も同様だと警鐘を鳴らす。

遠田教授は「日本全国どこでも地震が起きるという伝え方をしてしまうと逆に意識しなくなると思いますので、『主要な活断層はここにある』とか、そういう情報をいかに減災に結びつけられるかということが重要」と話す。次は全国2,000の活断層のどこに具体的な危険が迫っているのか――。遠田教授の闘いはこれからも続く。