海外メーカー製デジタル・オーディオ・プレイヤー(DAP)が勢いに乗る昨今だが、ポータブルオーディオの元祖たる「ウォークマン」が手をこまねいて見ているわけはない。2013年に"ハイレゾ・ウォークマン"初代機の「NW-ZX1」を発表、2015年には後継たる「NW-ZX2」を送り出した。フラッグシップの名に相応しい、ソニーの持てる技術を惜しみなく投入した力作だ。

課題がなかったわけではない。ソニーが誇るフルデジタルアンプ「S-Master HX」を核とした設計により、DSD再生はPCM変換せざるをえない(S-Master HXの技術的な詳細は割愛する)。これもひとつの判断であり設計のあり方なのだが、DSDネイティブ再生にこだわるユーザの支持を得にくかったことは確かだ。バランス接続(ZX2はグランド分離接続に対応してはいたが)の対応についても、プラグの統一規格が存在しなかった事情はあるにせよ、海外勢に先手を取られてしまった感は否めない。

そして、新フラッグシップのWM1シリーズが発表された。「NW-WM1Z」と「NW-WM1A」の2モデル、基板デザインなどベース部分は共通だが、シャーシなど物量の部分と細部の作り込みが異なる。これが、かなりの気合いを感じられる製品なのだ。

見どころは大きく5つ。DSDネイティブ再生の対応とJEITAが規格化した4.4mmバランス端子の採用、シャーシの改良とオーディオパーツの見直し、そしてAndroid OSに代わる独自OSの採用だ。いずれもNW-ZX1から始まる"ハイレゾ・ウォークマン"の進化の過程において重要な変更であり、音質に影響する要素として見逃せない部分だ。