はしかの予防接種、いつ受けるべき?

感染の拡大が懸念されている「はしか」(麻疹)。子どもの予防接種は1歳と小学校入学前の2回が推奨されていますが、それ以外の年齢でも打ったほうがいいのでしょうか。また、はしかに感染したと判断する方法はあるのでしょうか。広島市民病院小児科の小児科医、竹中美恵子先生に聞きました。

Q.まず、はしかの症状について教えてください

熱が上がり、せきや鼻水が出るといった風邪のような症状が2~3日続きます。そのあと、熱が1度下がり、再度発熱が出るときに一気に体に赤い発疹が出ます。特徴的なのは、口腔内(こうくうない)に出るコプリック斑と呼ばれる、はしか特有の白いブツブツです。またこの病気の怖い点は合併症で、気管支炎、中耳炎のほか、脳炎、髄膜炎、肺炎など命に関わる病気が引き起こされてしまいます。

Q.どうしたら、はしかと判断できますか? 治療法はありますか?

初期の段階では、はしかかどうか判断することは難しいでしょう。血液検査で診断することもできますが、結果が出るのは1週間後となってしまいます。しかし、熱の出方が激しいので、風邪のような症状と、高熱が出た段階で受診されるといいと思います。

もし、はしかの患者さんに接触しても、72時間以内にワクチンの予防接種をすると効果的と言われています。接触後5~6日以内であれば、ガンマグロブリンと呼ばれる血液製剤を打ち、症状改善を期待することはできますが、安易な方法ではないので、個人のクリニックで受けるのは、難しいことが多いです。周囲に感染者がいたり、流行地域であったりした場合は、大きい病院に足を運んだ方がいいかもしれません。

Q.はしかを予防するMRワクチンの1回目の接種は、1歳児が推奨されていますが、0歳児で受けても大丈夫ですか?

生後6カ月以降であれば、可能です(ただし有料)。基本的に生後6カ月までの赤ちゃんは、胎児の時に胎盤から受け取った母親からの免疫や、母乳の成分によって、感染症に対する免疫力が高いとされています。しかしそれ以降は、母親由来の免疫が落ちていくのです。 そのため、はしかの感染予防のためには、1歳児未満であってもハイリスクな場合は受けておいても良いでしょう。

しかし生後6カ月~12カ月の時期は、まだ母親由来の免疫が残っている可能性があるので、ワクチンによる免疫が十分についているかは分からない状況です。そのため、1歳児の定期接種の際にも、必ずワクチンを打っておきましょう。

Q.MRワクチンの2回目の推奨接種時期は、小学校入学前とされています。それより前にワクチンを打つと、効果が薄くなるのですか?

効果が薄くなるということはありませんが、母親由来の免疫の下がる1歳と、集団行動を行う小学校入学前に行っておくのが一般的です。それ以外でハイリスクな状況があれば、その都度かかりつけの小児科の先生にご相談される方が良いと思います。回数を打つことで悪いことはありませんが、はしかのワクチンは5人から10人に1人は発熱が出ることがあるので、むやみやたらに打てば良いというものではありません。

Q.MRワクチンは何回打っても大丈夫ですか?

ワクチン接種の回数が多い分には、問題ありません。ワクチンを打っていても免疫が十分についていなかったり、年月がたって免疫の力が弱まってしまったりする可能性もあります。心配に思う方は、年齢や性別など、総合的にハイリスクか判断する必要がありますので、かかりつけの医師に接種すべきかご相談されてみてくださいね。

Q.ワクチンを打ったあとは、どれくらいで効果が出ますか?

ワクチン接種後、5~7日でウイルスが増殖し、抗体が作られ、10日後くらいには免疫ができていきます。ワクチンを打ったとしてもその時期までは、感染が流行している地域への外出は避けるようにした方が無難かもしれません。

※写真と本文は関係ありません

竹中美恵子先生

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。以後、広島市立広島市民病院小児科などで勤務し、現在に至る。1児の母でもある。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている