ジェムアルトは9月6日、IoTのセキュリティや認証、収益化を実現するソリューションについて記者説明会を開催した。ジェムアルト アジア・パシフィック地域&チャネルマーケティングディレクターの鈴木信太郎氏は、「ジェムアルトの各チームがIoTにコミットし、サービスとして提供する」と取り組みを説明した。

ジェムアルト アジア・パシフィック地域&チャネルマーケティングディレクターの鈴木信太郎氏

IoT(モノのインターネット)ビジネスに関しては各社が注目し、さまざまな取り組みやソリューションを既に実現している。だが、もっとも重要なのは、作り上げたソリューションをどのように収益化させるかだ。今回ジェムアルトは、IoTのセキュリティや認証、収益化を実現するソリューションについて幅広く説明したが、その中でもIoTのソフトウェア収益化に注目し、その内容をご報告する。

ジェムアルト ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアプリセールスコンサルタントの前田利幸氏は、General Electric CEO Jeffrey Immelt氏の発言「今の時代すべてはソフトウェアだ」を引用し、あらゆるデバイスベンダーがソフトウェアソリューションで差別化し、収益化につなげる時期に達したと語った。

IoT市場は既に多くの企業が参画しているレッドオーシャン市場だが、そこで差別化・収益化を実現するのはライセンシングとエンタイトルメント管理だと前田氏は強調する。IoTデバイスによる差別化ではなく、デバイス上もしくはクラウドを含めたソフトウェアでソリューションを確立しなければならないという。同氏は米国調査ガートナーが発表した「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2016年」を取り上げ、IoTに対する期待度の高さと黎明期を脱しつつあることを示し、「市場を切り開くベストなタイミングと考えている」と語った。

ジェムアルト ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアプリセールスコンサルタントの前田利幸氏

ジェムアルトは、ソフトウェアのライセンシングおよびプロテクションを可能にする「Sentinel LDK」や、ライセンス管理ソリューション「Sentinel RMS」、拡張性のあるエンタープライズライセンス管理ソリューション「Sentinel EMS」などを提供しているが、これらを組み合わせることでソフトウェアの収益化が可能だという。

収益化の根幹は、「ソフトウェアの暗号化」「コピープロテクション」「アンチデバッキング」の3つでソフトウェアを保護し、需要に応じたライセンシングで柔軟性を持ち、多様なエンタイトルメント管理でデバイスベンダーに利点を提供するという。前田氏は本来なら得られる利益や利益損失のリスクを回避するために、ソフトウェアの保護が欠かせないと語りつつ、ライセンシングと利用状況の追跡により既存顧客へより高価な製品・サービスを提供することで利益幅の増加につなげるアップセルを実現。そしてライセンス管理作業の自動化やバックオフィス業務の連携といったコスト削減を目的とするエンタイトルメント管理で、ソフトウェアによる収益化を実現する説明した。

機能別ライセンシングの事例として前田氏は次のように説明している。「ソフトウェアの機能を数段階に区分(セグメント)化し、それぞれをライセンス管理することで、顧客が利用したい機能のみ有効化できる。そして、需要に応じた機能と価格を提案する」。その結果、ハイエンドレンジに位置する顧客と、エントリーレンジに位置する顧客に対して、機能は異なりながらも同一のパッケージが提供可能になり、ハイエンドな顧客は顧客単価増。エントリーレンジの顧客には値引きせずに顧客層を広げることが可能になるという。

顧客の需要範囲に合わせて提供する機能とライセンスを制御し、幅広い収益化モデルを作り出す

また、セグメント化した機能の一部を顧客需要や設計に応じてサブスクリプション型から、永久ライセンス型に変更することで、「製品を売り切るビジネスモデルから、継続的に利益を生み出すサービスへ転換できる」と語った。ハードウェアベンダーは共通のハードウェアで異なるエディションを展開・量産できるため、利益化につなげられる。同社では、既にネットワークデバイスなどを製造するハードウェアベンダーの導入実績があるという。なお、ソリューションの価格はビジネス規模に応じて変化する。

ハードウェアは共通化しながらも機能を制御することでコストを大幅に削減する収益モデルも披露

もう1つのアプローチとして、ソフトウェアの利用状況データを収集し、従量課金制による収益化もアピールした。各機能を利用した時間や回数で課金する方式を想定しているが、ハードウェアベンダー側でもリアルタイムデータから将来的な需要を予測できるため、両者の利益化につながる。仮にデバイスがオフライン状態でも、ローカル側にキャッシュされたログを利用し、一定期間はオフラインでも利用可能。蓄積した利用履歴をクラウドに上げることで対応し、「我々は市場に合わせたパッケージと製品を提案できる」と語る。同社は今後、パートナー企業と協業したエコシステムを構築しながら、サービスソリューションで市場開拓を目指すとしている。

阿久津良和(Cactus)