番組の舞台はアメリカ・アラスカの地へと移る。北極圏で進行している、温暖化を加速させる可能性がある現象とは永久凍土の氷解だ。今、アラスカの各地で永久凍土が溶け出しているという。

研究プロジェクトのメンバーであるアラスカ大学の岩花剛氏は、永久凍土からある物質が溶け出すことを懸念している。それは、温室効果をもたらす気体・メタン。永久凍土内に枯れ葉などが閉じ込められ、長い時間をかけて分解されたメタンが、氷が溶けると共に大気中に放出されることで温暖化が加速する可能性があるのだ。

氷の中から大気中の1万倍の濃度のメタン

温暖化は、地球が太陽から受けた熱が温室効果ガスによって閉じ込められることで起きる。二酸化炭素など、現在排出されている温室効果ガスのうち、メタンの割合は16%だ。今後この数値がどう変化するかは予測不可能で、永久凍土に含まれるメタンは地球温暖化の予測に含まれてない。

だが、北極圏ではメタンの放出が次々に確認されている。シベリアの大地にぽっかりと大きく穴が開いたクレーターが映し出されたが、これは地下のメタンが一気に噴出した痕跡とされているとのこと。

メタンの温室効果は二酸化炭素の28倍で、永久凍土は北半球のおよそ4分の1を占める。今度どれほどのメタンが放出され、どれだけ温暖化に影響を与えるのか――。その答えの糸口を探るべく、岩花氏は日々、まだ溶けていないアラスカの地下深くの氷の層を調べている。

これまでにアラスカの10カ所以上で氷をチェックしてきたが、中には大気中の1万倍の濃度のメタンを持つ氷の層も見つかっているという。「地球全体の気候変動を予測するにあたってパズルの一部分が欠けている」と話す岩花氏は、今後3年かけて温暖化への影響を見ていくそうで、さらなるサンプル採取に励む。

このメタンに示されるように、北極海の温暖化は既に後戻りできないところまで来ている。続いて、北極海を覆う氷は温暖化で溶け出しているが、その氷の減少がさらなる悪循環を招いている現状が紹介された。

北極海に浮かぶ白い氷は、太陽光を反射させる役割を持つ。その一部が溶けると、太陽光が反射されずに熱が海に吸収され、海水温度が高くなる。その影響で周辺の気温が上昇し、水蒸気が発生すると次なる異変を生む。それは巨大低気圧だ。

北極海の様子を映したデータでは、風が強まっている場所で氷が減少していることが確認された。巨大低気圧が起こした風で氷が砕かれ、さらに気温が高まりやすくなる。そして高まった気温が次なる巨大低気圧を招く――。まさに負の連鎖と言えるだろう。地球の今後の異常事態を左右するクライシス(危機)は、今この瞬間も北極で起きているのだ。

都市を水没させるほどの積乱雲

温暖化による影響の視点を、世界から日本に戻そう。深刻な温暖化が日本にもたらす影響として懸念されているのは、巨大積乱雲(スーパーセル)だという。短時間で急速に発達する積乱雲の幅は通常、数キロから十数キロと考えられている。ただ、温暖化で水蒸気が大量に発生すると、その幅が数十キロから100キロまで及ぶスーパーセルになると考えられている。

気象庁 気象研究所室長の加藤輝之氏は、温暖化が進んだ今世紀後半を想定し、スーパーセルの発生頻度を推計。これまでほとんど発生していなかった北海道で3倍、東北で2倍と比較的高い頻度で発生するようになるのではないかと考えている。

スーパーセルによる被害をシミュレーションしたところ、1時間に100mm超の雨が2時間以上続いた場合、マンホールから水が噴出。あふれた水は地下鉄に流れ込むなどし、都市を完全に水没させるという。