Alteraの買収を2015年12月末に完了したIntel。「IntelはPC向けプロセッサベンダから、クラウド時代のスマートデバイスに対応するソリューションベンダへと転身を図ろうとしており、FPGAが、そうした取り組みの中核技術の1つになろうとしている」。Intelの現状を、そう評するのは、AlteraにてField Applications Engineering and Technical ServicesやProduct Marketing, Corporate Marketing, and Technical ServicesなどのVice Presidentを歴任してきたVince Hu氏だ。同氏は現在、IntelのCustomer Experience Group, Programmable Solutions GroupのVice Presidentを務めており、FPGA製品に対するユーザーエクスペリエンスの向上などを進めている。

IntelのCustomer Experience Group, Programmable Solutions GroupのVice Presidentを務めるVince Hu氏。年に数回、ビジネスで来日はしているとのことであったが、今回、久しぶりにメディアの前に顔を出してくれた(Alteraの日本法人である日本アルテラにて撮影)

Intelが2015年6月1日にAlteraの買収を発表して以降のこの1年、「たくさんの注目を集めてきたが、多くのカスタマから、今回の統合についてエキサイティングだ」という評価を受けてきた、と同氏は語る。これは、Alteraが30年以上にわたりFPGAの開発を進めつつも、製品の長期提供を継続してきたことと、Intelが実現してきた最先端のプロセス技術やパッケージング技術、品質などが組み合わされ、幅広いポートフォリオが提供されることになるという期待などからくるものであり、実際にIntelは、そうした期待に応えるべく、新たなクラスの製品やサービスをデータセンターやIoT分野に提供しようとしている。

「戦略的サイクルの中における位置づけとして、すでにFPGAはさまざまな市場で一定のポジションを確立済みだ。今後のIntelのビジネスでも、そこを確保しつつ、さらなる分野を拡充していくことになる。例えば、IoTやスマートコネクテッドといった分野では、HUBやマシンビジョン、スマートグリッドなどでの活用が想定されるし、データセンター/クラウド分野では、SDNやVDIなどの技術の発展によるアクセラレータ的な活用などが考えられる」(同)であり、従来から強いネットワーク分野とも連携することで、FPGAがIntelの成長を加速する役割を担うことになるとする。

従来、ネットワーク分野でのFPGAの存在感は大きかったが、Intelの戦略としてはIoTやスマートコネクテッド、クラウド/データセンターといった分野でも存在感を増していき、Intelのビジネスを支える役割を担うことになる

IntelがFPGAを重視する理由の1つに、同社が以前から言い続けてきたIoTの進展に伴う2020年に500億台の機器がネットワークに接続される、という話がある。裏を返すと、そうした機器が生み出すデータ量は増加の一途をたどり、例えば2020年までに自動運転車では1分あたり40GB、VRを活用したスポーツ中継でデータセンターを活用した場合で1分あたり200GB、標準的なユーザーがスマートフォンなどのモバイル機器を利用した場合でも1日あたり1.5GBのデータが生成されると予測されている。こうしたデータをCPUのみで処理するのではなく、FPGAと組み合わせることで、さまざまなシステムにおける演算の最適化をはかり、より高速かつ軽量に処理を行うソリューションを実現しようということだ。「現在、Arria 10を活用してセンサ統合を図ろうとしているカスタマでは、スタンドアロンのCPUに比べて、処理性能は20倍ほど向上しているという評価を得ている」(同)とするほか、「1000枚の画像分割をGPUとArria 10それぞれに行わせた場合、必要とする消費電力はGPUの場合で数百Wだったが、Arria 10では41Wで済んだ。すでにMicrosoftのProject Catapultに代表されるように、実際の検索エンジンにFPGAを適用することで10倍の検索速度の向上を10%程度の消費電力増加で実現できることが報告されており、FPGAの優位性が示されつつある」とする。

FPGAをそれぞれの分野に最適化されたアクセラレータとして提供することで、増大するデータを省電力かつ高速に処理することが可能となる