「Pokemon GOの人気はすでにピークを過ぎた」というレポートが話題になっている。複数のデータを引用しつつ、ピーク時には4,500万人のデイリーアクティブユーザーがいたゲームは、8月中旬現在で3,000万人程度にまで減少しているというものだ。主要国でのローンチが一巡し、離脱するユーザーが増加分を上回り始めたのは確かだが、Pokemon GOの人気はすでに陰りが見えているのだろうか。このあたりを少しみていきたい。

本件の出所となっているのが米Bloombergの「These Charts Show That Pokemon Go Is Already in Decline」という記事だ。同紙ではApptopiaなど複数の調査データを引用しつつ、アナリストのコメントなどから「Pokemon GOの人気はすでに下降線をたどっている」と述べ、競合となる他の携帯向けサービスやアプリのユーザーの利用時間をこれ以上侵食することはないと結論付けている。実際、Bloombergが示しているApptopiaのデータでは日本国内のローンチ日である7月22日を前にすでに世界のアクティブユーザー数が減少を見せており、前述のように8月中旬時点でピーク時の3分の2程度となっている。

また、ダウンロード数も初登場からApp StoreやGoogle Playの各アプリストアのランキングでほぼ1位を死守してきたが、すでに過去2週間ほどはランキング5圏外に落ちていたりする。SensorTowerが公開しているデータによれば、Pokemon GOは1週間で1,000万ダウンロードを1週間以内という最速スピードで達成したアプリであり、ダウンロード数ランキング1位を長らく死守して4,500万という累計ダウンロード数を稼いだ以上(SensorTowerによる集計は4,400万)、「初期の配信タイミングでは行き渡るところに行き尽くした」ということでアクティブユーザーが減少するのは避けられないだろう。「1,200万以上アクティブユーザーが減った」というと急失速という印象があるが、むしろ1カ月を経ても3,000万がアクティブとして残っているほうが驚きかもしれない。

実際、人気のモバイルアプリはどれも似たようなピークからの減少傾向を見せ、比較的長寿のもので3~6カ月程度をかけてコアユーザー層へと収れんし、徐々にフェードアウトしていく。Angry Birdsなどでも見られた傾向だが、Pokemon GOもこれにならう形になるとみられる。ただ、3,000万という現状のアクティブユーザー数は他のモバイルアプリと比較しても極めて多く、これがアプリ内課金も含めた大きなビジネスチャンスとなっている。SensorTowerのデータによれば、国別では米国が全体の3分の1のユーザー数シェアを占めており、これに日本と英国が7~8%で続くほかは、各国でほぼ等分した程度に広く拡大している。

一方で、国別の売上は4割が米国な以外は、日本が38%とそれに続いており、極端に日本での課金率が偏っている傾向がみられる。ほとんどの国で課金額はユーザー数にほぼ比例しているのに対し、日本では課金するユーザーの比率が高い、あるいは特定ユーザーあたりの課金額が極めて高いかのいずれかということになる。こうした例外はあるものの、総じてユーザー数の多さは全体の課金額の底上げにつながり、Pokemon GOで生じるビジネスの大きさを示している。またApptopiaのデータによれば、アプリ内課金以外の広告収入が全体の2割弱を占めるという分析が出ており、これは日本におけるマクドナルドとの提携などにみられるスポンサード収益だと予想される。

Pokemon GOにおいてもう1つ興味深いのは、ユーザーの定着だ。例えば、前述のようにすでにPokemon GOを離れてしまったユーザーでも、新機能追加や新ポケモン追加などのアップデートで再び戻ってくる可能性があることが指摘されている。アプリを開発したNianticではトレード機能やポケモン増加について近い将来にアップデートを行うことを示唆しており、すでにアクティブユーザーにカウントされなくなった層が近いうちに再び戻ってくることになるかもしれない。こうしたユーザーの多くはある程度遊び尽くして現行バージョンではやることが少なくなったユーザーであり、アップデートしだいでは戻ってくる可能性がより高いだろう。実際、筆者が先行ローンチされた米国サンフランシスコで1週間ほど滞在してジム戦に参加するユーザーの状況をみていたところ、頻繁にバトルが行われるなど非常にアクティブなユーザーが多い一方で、その平均レベルは20前後という印象を受けた。おそらく日本の都市部のほうが平均値が高い気さえする。これが示しているのは、レベル20台後半に達したユーザーはすでに積極的にはゲームを遊ばなくなり、次のアップデートを待っている状態なのではないかと推察する。

アプリを開発したNianticのお膝元である米サンフランシスコ中心部では、ジムバトルが非常に盛んであり、深夜にもかかわらず常にバトルが行われ、周囲には花びらが舞い散っている

なお、Bloombergの記事で1点気になったのは、Google Trendsのキーワードで「仮想現実(VR)」と「拡張現実(AR)」の人気の差を比較し、Pokemon GOの登場でARの話題が盛り上がる一方で、すぐに収束していることを引き合いに出し、これがPokemon GOの人気衰退へと結びつけている部分だ。「AR」ゲームとして紹介されたことで一時的にGoogle検索を行うケースが増えたことは想像できるが、別にPokemon GOを「AR」だと意識して遊んでいるユーザーはほとんどおらず、ましてこれがアプリそのものの人気に直結しているとするのは少々飛躍しすぎではないかと考える。

枝葉末節の数字だけをみてブームが収束したと結論付けるのではなく、他のモバイルゲームとの比較やユーザー層の拡大具合、ビジネス全体としての規模や影響などを含め、もう少し広く長い視点での分析が必要ではないだろうか。