アップルはこれまで、中国市場に非常に力を入れてきた。そのことは、最近のアップルの発表イベントを見ても明らかだ。中国市場への言及や、OSの中国語対応の強化、そして中国で人気のあるアプリとの連携強化を紹介するなど、完全に「米国と中国」が想定される市場の中心となった。

実際、中国は米国に次ぐ第二の市場として成長を続けてきた。2016年第3四半期決算までは……。2016年第3四半期の決算を見ると、中国市場での売上は前年同期比33%減と急減速し、下落幅が小さかった欧州市場に再び追い抜かれてしまった。いったい何が起きているのだろうか。

iPhoneの急減速と中国市場の変化

アップルが中国市場を急成長させる原動力として活用したのは、2014年に発売したiPhone 6・iPhone 6 Plusだった。この2機種は伝家の宝刀とも言える「大画面化」を図った戦略モデル、と振り返ることができる。

アップルの中国市場急成長の原動力となったiPhone 6(4.7インチ)、iPhone 6 Plus(5.5インチ)

iPhone 6発売以前、100ドルのAndroidスマートフォンですら、当時アップルのフラッグシップだったiPhone 5s(4インチ)よりも大きなディスプレイを備えるのが当たり前となっていた。アップルの高いブランド価値は拡がっていたが、製品に明らかな競争力不足を抱えていた。iPhone 6シリーズは、その競争力不足を解消し、中国でのiPhoneのシェアを一気に伸ばすことに成功したわけだ。

しかし再び、iPhoneの競争力に陰りが見えている。その結果が、前述の前年同期比33%減に現れている。ただ、中国市場の変化の煽りを受けたのは、アップルだけではない。

IDCによると、アップルは中国市場において、2016年第2四半期に860万台のiPhoneを販売、マーケットシェアは7.8%だった。2015年第2四半期は1260万台を販売し、マーケットシェアは11.9%、第3位のシェアを獲得している。つまり、2016年第2四半期は前年同期比で31.7%下落している。この数字は、売上高の下落幅にほぼ一致する。そして、2016年第2四半期において、アップルは中国市場における第5位のメーカーだったという。ちなみに、サムスンの名前はすでに上位にはない。

アップルの出荷数量とマーケットシェアが大きく落ちていることが分かる。対してファーウェイ、オッポ、ビーボが伸ばしている(出典:IDCプレスリリース)

これまで中国市場でトップを走っていたシャオミはアップル以上となる38.4%の販売減となり、かろうじて1000万台を確保する4位に落ち込んだ。変わって、昨年同期で2位だったファーウェイが1位となり、2位にオッポ、3位にビーボが入った。

オッポとビーボは、いずれも昨年同期に800万台程度を販売していたメーカーだったが、2016年第2四半期はオッポが1800万台、ビーボが1470万台と急成長した。ちょうど、シャオミとアップルの販売台数がそのままオッポとビーボに移った様子が分かる。