2016年年明けから、株式相場は急落。その後1万5,000円~6,000円台のボックス圏で推移しています。イギリスのEU離脱での下落、参院選後の急騰と、政治によって株式相場が左右され、これから投資を始めようとする人にとっては、タイミングをつかむのが難しいと思ってしまうことでしょう。でも、株式相場に一喜一憂しない投資の方法があります。それが株主優待銘柄に投資することです。

株主優待投資を始めるなら「9月」がオススメ

銘柄数の多い9月を狙えば探しやすい

2015年8月末時点で、上場銘柄3,889社中1,262社、32.5%が株主優待制度を設けています(野村インベスター・リレーションズ発行 『知って得する株主優待 2016年版』より)。なかでも3月、9月を「割当基準月(株主優待や配当を受けられる権利が確定する月)」としている会社がもっとも多く、初めて株主優待銘柄を選ぶとしたら、3月、9月は、自分にとって魅力のある優待内容を探しやすいでしょう。

3月、9月の銘柄が多いのは、企業の決算が3月に集中しているためで、株主への配当が中間決算、期末決算の年2回とするところが多く、それにあわせて、株主優待の割当基準月としているためです。もちろん、企業によって決算月が異なりますので、1月から12月まで、様々な企業の株主優待を受けることが可能です。

株主優待の内容は、自社製品を始め、商品券などの金券、食事券、娯楽施設の優待券、交通機関の乗車券や割引券など、実に多岐にわたります。更に株主優待銘柄が多い月の中から選ぶことができれば、より自分にとって使い勝手のいい優待を受けることが可能になるでしょう。

株主優待を受けるためには、カレンダーに注意

株主優待を受けるには、株主であることが条件です。そのためには投資カレンダーに注意が必要です。割当基準日に株主名簿に記載されていなければなりません。例えば2016年9月30日が割当基準日の銘柄であれば、その3営業日前の9月27日までに株式を購入する必要があります。

人気の銘柄だと、この権利付きの最終日に向けて株価が上がる傾向にありますので、余裕をもって購入のタイミングをみておくようにしましょう。また権利付きの最終日の翌日は、株主優待を受ける権利を得た上で売却する、という投資家も多く、株価は下がる傾向にもあります。

株主優待銘柄に特有の動きですが、慌てることのないように、権利付き最終日前後の過去の株価の推移も確認しておくといいでしょう。

なお、株主名簿に記載されるための手続きは不要です。通常は証券会社に口座を開設する際に、「ほふり(証券保管振替機構)」の利用にチェックしているはずなので、売買が成立すれば、自動的に株主名簿へ記載されます。

株主優待銘柄であっても、手放すことも考えておく

株主優待の優待品が実際に手元に届くと、かなりうれしいものです。その会社の商品が好き、会社の方針に共感する、などといった理由で銘柄を選んでいるはずで、もともとよく使う商品だったりもするでしょう。中には株主優待専用のオリジナル商品を用意しているところもあり、ちょっとした優越感を味わうこともあるでしょう。株主優待が満足いくものであれば、日々の株価の変動に一喜一憂することもないでしょう。

ただし、優待品が好きだから、もらってうれしいから、ということに引きずられてはいけません。思うように株価が上がらない、悪い材料が出てきた、というように、投資した当初の思わくとズレが生じてきたら、投資を続けるのか、売却するのかは、冷静に判断すべきでしょう。

今は、証券会社のサイトを始め、株主優待に関するサイトがたくさんあります。銘柄選びも優待品から選べるようになっています。自分が本当に使いたい優待品かどうか、投資に見合う内容かどうか比較検討もしやすくなっていますので、9月までの1カ月。十分検討してみてください。


伊藤加奈子
マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。