全米で3週連続1位を記録したディズニー実写映画『ジャングル・ブック』が8月11日、公開を迎えた。1967年に公開されたアニメーション版からインスピレーションを受けながら、原作小説の要素も取り入れ、新たな物語としてよみがえった本作は、ジャングルの動物たちに育てられた人間の少年モーグリと、彼をとりまく動物たちとの絆や葛藤を描いた物語。壮大なジャングルや表情豊かな動物たちなど、モーグリを除いたすべてがCGで表現された映像美と、感動的な成長ストーリーが観る者を魅了する。

主人公の少年モーグリと陽気なクマのバルー

本作を手掛けたのは、『アイアンマン』シリーズで知られるジョン・ファヴロー監督。「自分の持ち味を最大限発揮できると感じた」と明かす監督のもとに、アカデミー賞常連のスタッフたちが集結し、最先端の映像技術によって実写映画化が実現した。先日、来日した監督に制作秘話についてインタビュー。本作において日本が誇るスタジオジブリの名作『となりのトトロ』を参考にしていたことを明かしてくれた。

――はじめに、今回の映画化が決まった経緯を教えてください。監督は子供の頃から『ジャングル・ブック』の物語が大好きだったそうですが、監督から映画化を提案されたのでしょうか。

ジョン・ファヴロー監督

ディズニーが『ジャングル・ブック』を映画化しようと考えたのが最初だね。僕も原作の本が大好きだったし、最新技術を駆使して何か新しく作れないかと話し合いをしていく中で、今日のコンピュータ技術によって実現できるのではいう話になった。『アバター』や『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』などでの技術を使えば可能だと思ったんだ。新しい技術を使って新しい形でこの物語を伝えられことができるというのは非常に興奮したよ。

――主人公モーグリ以外はすべてCGとのことですが、実写とCGの差がわからない映像に驚かされました。

動物に関しては、『猿の惑星』や『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』などを見てきれいに描くことができると感じたし、『アイアンマン』の経験もあったのでそのコンピュータ技術が生かせると思っていたんだ。自分としてはとにかく愉快でワクワクするような物語を伝えたいという思いで作り、完成した作品に対しても、とてもワクワクしているよ。

――監督はアニメーションの『ジャングル・ブック』が大好きだと伺いました。そのアニメーションからインスピレーションを受けて、本作でも大切に描こうと思ったポイントは?

幼い頃から何度もアニメーションの『ジャングル・ブック』を見てきて、本当に大好きなんだ。特にクマのバルーが好きで、自分の祖父を彷彿とさせる。祖父も大柄で力強く、思いやりのある人だったので。また、バルーが少年をおなかの上にのせて浮かんでいる映像が好きで、あの感覚を大事にしようと決めていた。アニメーションを見て感じたイメージや感覚を、自分の作品の中にも持ち込んで伝えたいと思ったんだ。

また、内容はとても単純だけど、当時自分が見て非常にリアルに感じる作品だった。ニューオリンズのジャズやディズニーの音楽という楽曲も楽しめ、愉快な子供向けの作品ではありながらもヘビやトラに恐怖も感じた。そういった自分がリアルに感じたところを取り入れてこの作品を作ったんだ。

――モーグリが動物との関係の中で成長していく姿にも感動しました。感情の部分を描くにあたって特に意識していたこととは?

モーグリは、バギーラからは規律を教えられるが、バルーからは自分らしさを大切に行動するようにと教えられ、自分の創造性を使って自分で考えて行動していくようになる。そして最後には、集団に対して自己犠牲的に、自分のことよりもまず周りのことを考えていく。そういった変化の中で、感情のバランスが非常に大切だと意識していたね。

――今回、アニメーションのようにストーリーの部分を特に大切にしたと伺いました。ディズニーのアニメーションの制作チームから学び、作品に生かしたことはありますか?

ディズニーのアニメーションよりも、今回の制作においてアニメーターたちには、ジブリの『となりのトトロ』の話をよくした。バルーはトトロをイメージしているんだ。バルーは大きくて怖い感じもあるが、抱きしめたくなるような優しさがある。トトロも叫んだり少し怖いと感じるところがあるけど、この作品ではバルーがそういうことをする。自分ももちろん宮崎駿さんが大好きだし、アメリカのアニメーターは宮崎駿さんのファンが多いので、みんな理解してくれたよ。ディズニーを参考にすることもあったけど、キャラクターの感情の部分…キャラクター同士の絆を伝えるところでは、ジブリ作品を参考に。ジブリ作品は常に感情があるからね。

■プロフィール
ジョン・ファヴロー
1966年生まれ。米ニューヨーク出身。『ルディ 涙のウィニング・ラン』(93)に出演、俳優としてキャリアをスタートさせる。『Made』(01)で長編映画監督デビューを果たし、その後、『アイアンマン』(08)、『アイアンマン2』(10)の監督・製作総指揮を務め、世界的大ヒットに導いた。そのほかの監督作に『ザスーラ』(05)、『カウボーイ&エイリアン』(11)、製作作品に『アベンジャーズ』(12)、『アイアンマン3』(13)、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(15)など。

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