スマートフォンやタブレットが生活におけるツールとして完全に定着する中、デザイン・設計ソリューションを提供する各ベンダーもモバイル端末に対する取り組みを進めている。特に、タブレットはスペックの向上に伴い、クライアントとのコミュニケーションを活性化したり、場所にとらわれない柔軟な設計業務を実現できると考えられており、ものづくりにおける重要なツールの1つになり得ると目されている。数あるタブレット製品の中でも、機能・性能面で注目されるのがiPad Proだ。本稿では、オートデスクのAutoCADおよびAutodesk Formitを例に、ものづくりのプロセスにおいてiPad Proを使うメリットを見ていきたい。

設計からシミュレーションまでiPad Pro1台でカバー

iPad Proに限らず、タブレットを使って設計をするときはスタイラスペンを使って線を引いていく。補正機能が働くため、フリーハンドでもきちんとした線が引けるほか、重要な寸法も簡単操作で変更することが可能だ。また、何かを取り除きたい場合は斜線をぱっと引くだけで削除できるなど、直感的な操作で作図を進められるのはタブレットならではだろう。また、レイアウト図など新しい図面に各種データをドラッグ&ドロップでインポートして、クライアントと相談しながらその場でレイアウト決めを行うことが可能。また、実際の施工現場と図面を照らし合わせる時などはメッセージツールや搭載のカメラが便利だ。

見えづらいが、画面右に寸法が表示されている

レイアウト図も直感的に編集可能

建築モデリングソフトウェアAutodesk FormitにAutoCADで作成したデータを読み込むことで立体的な建築モデルを得られる。衛星写真を読み込んでその上にモデルを被せれば「あそこにこの建物を建てたらどんな感じだろう」とざっくりとしたイメージをつかむことできる。モデルは、エネルギー消費量の算出に重要な日照シミュレーションに活用できたりと応用範囲が広い。

衛星画像にモデルを重ねるとこのような感じ

日照シミュレーションの様子

iPad Proがものづくり分野にもたらすメリット

筆者は一連の流れを操作者の隣に座って見ていた。3Dモデルはファイルサイズが大きくなりがちだが、どの操作もサクサクと動いていてiPad Proの性能の高さを感じた。また、画面が大きい(12.9インチ)ので覗きこまなくても操作者の手元が見られるため、程よい距離感を保ちながらの会話が可能で、クライアントとの議論もフラストレーション無く進むだろう。

今回ご紹介した内容は建築分野に向けたものだったが、ものづくり業界全体において設計・開発期間がどんどん短くなっていることを踏まえると、他の分野でもクライアントとの意思疎通がスムーズになるのはありがたい話だろう。そういった意味で、設計・検討フェーズにモビリティを与えるiPad Proは多くのデザイナー・エンジニアにとって頼もしい味方になりそうだ。