ニッポン放送がラジオを作ろうとしている。テレビ局がテレビを作らないのと同じで、ラジオ局がハードウェアである受信機を作るのも前例のない取り組みなのだが、その狙いはどのあたりにあるのだろうか。

気配を感じさせるラジオを作る

「かっこいいラジオが欲しい」。ニッポン放送のラジオ開発計画は、同社の吉田尚記アナウンサーの想いが具体化したプロジェクトだ。同氏が考えるラジオの魅力とは、「寂しさを消してくれるが、過剰には干渉してこない」存在であること。新たに作るラジオの製品名は、英語で「気配」を意味する「Hint(ヒント)」とした。

吉田アナ(写真左端)の想いが具体化した今回のプロジェクト。発表会にはヒント開発に協力するデザイナーのメチクロ氏(左から2人目)、Cerevoの岩佐琢磨代表取締役(右から2人目)、グッドスマイルカンパニーの安藝貴範代表取締役社長(右端)が駆け付けた。メチクロ氏と岩佐氏が持っているのがヒントだ

ヒントは無指向性スピーカーを備える筒型のFMラジオだ。大きさはワインボトル程度で、生活空間にあっても違和感を感じさせないデザインとなっている。Bluetoothスピーカーとしても使えるので、スマートフォンに入っている音楽を聴いたり、スマホで「radiko」につないでラジオを聴いたりすることも可能だ。AM放送局であるニッポン放送がFMラジオを作るのはなぜかといえば、FM補完放送の開始により、AM放送の番組がFMでも聴ける環境が全国的に整いつつあるからだ。

ラジオの将来を変えうる新機能を搭載

ニッポン放送はCAMPFIRE(キャンプファイヤー)を使ったクラウドファンディングでヒントの商品化を目指す。目標調達金額は1,300万円。商品発表から5日経った7月25日時点の情報では、支援総額は337万円強、支援の募集期間は残り58日となっていた。

自らを「ヘビーガジェッター」と称する吉田アナが、クラウンドファンディングによる製品化を目指すヒント。これだけ聞くと、ヒントはガジェット好き向けのマニアックな製品になりそうな感じがするが、ヒントにはラジオ業界の将来を考えるうえで見逃せない装置も備わっている。それはラジオとネットをつなぐ機能を持つ「BLEビーコン」だ。