VAIOは7月26日、都内で2016年度経営方針および新製品発表会を開催した。ソニーから独立する形で起業したVAIOだが、設立2年目を迎えた今回、2015年度の営業利益黒字化に成功したと述べている。好調な結果を残したVAIO 取締役社長 太田義実氏の経営手腕とは?

VAIO 取締役社長 太田義実氏

VAIOはソニーのPC事業売却に伴い2014年7月1日に設立した企業だが、2年目となる2015年度は大幅な売り上げ増加につながり、営業利益黒字化に成功。2014年度は約20億円の赤字を生み出しながらも、V字回復に至っている。VAIO 取締役社長 太田義実氏は社長就任時にPC事業部の設計・製造技術、経験豊かな人材、そして"VAIO"というブランドという3つの強みを活かしたビジネス展開を目標に掲げた。

現在、長野県安曇野市に本社を構えるVAIOは、同ブランドを冠に持つPC事業とEMS(電子機器の受託生産)事業の2本柱で経営を行っているが、「(社員の)責任と目標が曖昧だった(太田氏)」と過去を振り返る。安曇野工場では製品企画から設計&製造、品質保証から営業、修理/アフターサービスまですべての機能を備える施設を持っている。だが、その強みを生かし切れなかったからこそ2014年度の赤字につながったのだろう。

この教訓から2015年度は、各施設を活かした一貫した体制を整えるため、営業部の設立や技術営業部隊の設置を行った。その結果、ダイレクトな法人営業や顧客の声を商品企画に反映させるといった手法の確立や、部品などを使用可能な状態まで組み上げるキッティングサービスの要望へも即時回答できるなど、営業面の強化を図っている。また、収益責任を持つ組織へ移行するため、ユニット長(設計リーダー)が売り上げまで責任を持つ体制を組み上げた。「PC業界ではあまり行われていないと聞いているが(太田氏)」、各モデルの事業計画とP/L(損益計算書)を作成を実行し、前日までの販売台数や利益率を日々レポート出力し、情報の可視化を実現。その結果として社員の意識改革につながり、「問題が発生した場合も素早く対応できる(太田氏)」ような効率化が自然に行われたという。

また、2015年度は前述したEMS事業をスタートした会計年度だが、同事業はVAIOの黒字化に大きく貢献したそうだ。「ソニーから独立したことが実現できた(太田氏)」EMS事業は立ち上がりからビジネスとしての展開も素早く、同社第2のコアに成長した。太田氏はVAIOブランドの強みとして、上流設計体制やAIBO時代に培ったロボット製造技術、高品質を担保する検査体制などを並べ、「(前述した)オペレーションの効率化や全体的な売り上げ向上、そしてEMS事業(太田氏)」が黒字化に大きく寄与したと説明する。

VAIOは2016年度を迎えて、「安定と発展」「第3のコア事業立ち上げ」と2つの目標を掲げた。前者は2015年度に確立したPC事業およびEMS事業を安定させ、着実に発展させる。後者は財務体制健全化の実現により投資を行い、VAIO第3の柱となるビジネス創生を目指す。具体的には同社の"もの作り"能力を基盤とし、第3のコア事業の開発/事業化に投資やジョイントベンチャーも視野に入れて進めるという。

VAIOが目指す2016年度の目標

新たな柱となる「第3のコア」が大きな注力分野となる

この"第3のコア"については現在多くの企業と交渉中のため、詳細については言及しなかったが、太田氏は「法人や消費者に対するマーケティングや、EMS事業で各種企業ベンチャー企業と接点を持つことができた。そこから生まれる、もの作りのフローと相手企業の足りない部分が合致させていく(太田氏)」と大まかなな方向性を示し、あらゆる可能性を追求すると語る。

VAIO 執行役員副社長 赤羽良介氏

"第3のコア"という展望を掲げる理由は、PC市場の収縮も大きい。そのためVAIOは数量を追わず、頻繁なモデルチェンジを控えて、ターゲットユーザーを明確にする姿勢は維持。そして国内は法人向け販路拡大、海外は販売エリアの拡大を実施する。既に米国やブラジルへ進出済みのVAIOだが、新たにチリのMUSFER、アルゼンチン・ウルグアイのIFSAと協業し、現地でのVAIOブランドPCの製造や販売、サービスなどを行う。VAIO 執行役員副社長 赤羽良介氏は「VAIOブランドを理解し、我々と同じ気持ちでビジネス運営をしてもらわなければならないが、(米国やブラジルの展開は)正しかったと確認できた」と説明し、この海外進出も2015年度の黒字化に大きく寄与したことを明かした。

アルゼンチン・チリ・ウルグアイと南米への展開を進める

VAIO 商品企画部 小笠原努氏

また、新たなチャレンジとして、スペックにこだわらないファッショナブルPC「VAIO C15」を8月5日から市場投入する。「雑貨や福のように直感で購入できるPC。インテリアに馴染むことを考えてデザインした(VAIO 商品企画部 小笠原努氏)」という。ハイエンドモデルに位置するZラインや、メインストリームのSラインと異なるラインと異なり、インテリアやファッションをキーコンセプトにしたラインは非常に挑戦的な製品だ。

今回発表された「VAIO C15」シリーズ

2016年度について太田氏は「ようやく離陸した段階。今後も多くの困難や挑戦を迎えるだろう。多岐にわたる挑戦が必要だ。『日々此改善』の気持ちで邁進したい(太田氏)」と意気込みを語った。

日本マイクロソフトやNTTドコモ、ダイワボウ情報システムと連携し、Windows 10 Mobileデバイスの市場拡大を目指す

VAIOのロボティクスを活かしたEMS事業も順調と太田氏は語る

阿久津良和(Cactus)