国立西洋美術館が世界文化遺産に登録され、盛り上がる上野公園。博物館の展覧会目的の人が今まではほとんどだったが、公園付近の建物そのものも歴史的な価値の高いものが集まっていることに目が向き始めた。折りしもその流れは政府の政策の流れに合致する。それはどういうことだろうか。そして建築物ブームは来るだろうか。

観光先進国を目指す政府は、訪日外国人観光客の数を2020年には4000万人、2030年には6000万人を目指す。さらには、訪日外国人観光客による消費額を2020年に8兆円、2030年に15兆円にすることを掲げている。

東京・銀座

訪日外国人観光客についてのニュースでは、爆買いの勢いが特に印象に残るが、訪日外国人観光客の増加がここのところ鈍化しており、一人当たりの買い物にあてる消費額も減少している。これは、爆買いを主にしていた、中国人観光客の旅行動向の変化によるものだ。リピーターの増加に伴って、買い物は十分した人が増えたことや、越境ECの普及によって、日本に訪れてまでしなくてもよくなったことが1つ言える。さらには、ここのところ円高傾向、中国政府による規制強化などが影響している。政府は消費税の免税対象品目の拡大などを進めることによって、ショッピング需要のさらなる拡大を図っている。

買い物需要の促進を図る一方で、リピート客の目的は、レジャーや日本文化の体験などにシフトしていることは以前も述べたとおり。もちろん、政府が進めているのは買い物需要の拡大だけではない。日本にある観光資源の魅力をより知ってもらうための方策に力点が置かれている。その中には、今までの文化行政の流れを大きく転換するものが入っているのを知っているだろうか。

観光の力点は爆買いだけでなく文化資産の活用

宮内庁が管理する施設の公開はここのところよくニュースで目にするが、それだけでなく昨年から文化庁が始めた日本遺産などに顕著に現れている 。日本遺産の認定は、国宝や重要文化財などを中心とした歴史的なストーリー作りでその地方の魅力の発信を促進していくことなどに力点が置かれている。今まで、文化庁が相手にしてきたのは、国指定の文化財だけで、文化財指定されたものの保存などを主な任務としていた。そこから文化財だけでなく、それをとりまくストーリーを掘り起こし、その価値も認め、どうやって活用していくかというところまでみていくというのは学者気質の文化庁にあっては大きな転換と言っていいだろう。

迎賓館赤坂離宮。7月26日

政府が3月に発表した「明日の日本を支える観光ビジョン(案)」を見てみると、この点に主にかかってくる2施策は、最初に載せられている。「1魅力ある公的施設・インフラの大胆な公開・開放」では、赤坂や京都の迎賓館を一般向けに公開し、そのほかの公的施設についても積極的に公開していくとしている。「2文化財の観光資源としての開花」については、文化庁が「文化財活用・理解促進戦略プログラム2020」を策定している。その中で、2020年までの目標として、文化財単体だけでなく地域の文化財を一体とした面的整備や分かりやすい多言語解説の整備など1000事業程度実施。さらに日本遺産などの文化財を中核とする観光拠点を全国200カ所程度整備するなどとしている。全体としての政府のメッセージは、「埋もれていた観光資源を掘り起こし、保存から活用する」というものだ。

都心にある埋もれた観光資源

本来、博物館において建物は、所蔵品を管理するハコモノで、展示物という主役を引き立てる存在だった。しかし、施設そのものが文化的価値をもつものが、上野エリアを中心として都心に実は多い。「埋もれた観光資源」そのものという訳だ。それを観光資源として活用する機会に、世界遺産登録が追い風となる。