【レポート】

田代試験場ってどんなところ? - 三菱重工がロケットエンジン燃焼試験を公開

三菱重工業(MHI)は7月13日、秋田県大館市にある同社田代試験場において「LE-7A」ロケットエンジンの燃焼試験を実施、その様子を報道陣に公開した。また現在開発が進められている新型ロケットH3についても説明。同試験場における取り組みについて紹介した。施設を改修し、H3に搭載される「LE-9」エンジンの燃焼試験も実施する予定だという。

三菱重工の田代試験場

山中で燃やし続けて40年

この日、報道陣は12時半にJR大館駅前に集合。MHIが手配した大型バスに乗り込み、田代試験場へと出発した。田代試験場は、田代岳(標高1178m)にほど近い山奥にある。ロケットエンジンの燃焼試験では、凄まじい騒音が発生する。そのため、こんな人里離れたところに試験場が作られたというわけだ。

グーグルマップで経路検索をすると、田代試験場までの道程は36kmほど。道はどんどん細くなり、途中からは未舗装に。対向車とすれ違うのも一苦労な道だが、ここをロケットエンジンを載せたトラックが通るというのだからちょっと驚きだ。そうこうしているうちに、出発から1時間15分ほどで田代試験場に到着。

JR大館駅前。まずは忠犬ハチ公の銅像が出迎えてくれる

途中にある五色湖。このあたりまでは舗装されていて快適

道はかなり細い。大型バスがなんとか通れるような感じ

崖なのにガードレールも無い。落ちたら確実に死ぬポイント

田代試験場は1976年(昭和51年)の開設で、今年がちょうど40周年。当時は、N-Iロケットの1号機が打ち上げられたばかり。田代試験場は、このN-Iロケットの第2段エンジン「LE-3」の試験から使われたという。この40年間で実施した燃焼試験は1000回以上。まさに、日本の液体ロケット開発の歴史とともにあったと言えるだろう。

試験場は2カ所ある。LE-7Aの燃焼試験が行われるのは第2試験場だ

N-IからH-IIA/Bまで、田代試験場は歴代のロケットに関わってきた

わずか50秒間の爆音上映

今回、実施したのはH-IIAロケットの第1段エンジン「LE-7A」の燃焼試験だ。意外に思う人もいるかもしれないが、LE-7Aエンジンは必ず、ロケットに搭載する前に、燃焼試験を行って、正常に動くかどうか確認している。LE-7Aエンジンを本番で使うのはたった1回。だが、その1回で確実に動いてもらわないと困るからだ。

そのため、同社名古屋誘導推進システム製作所(名誘)で組み立てられたLE-7Aエンジンは、一旦田代に陸送。燃焼試験を行った後に、再び名誘に戻される。完成したエンジンは、名古屋航空宇宙システム製作所(名航)飛島工場に送られ、そこでロケットに取り付けられる。ちなみに何号機に搭載されるのかは、まだ決まっていないそうだ。

ロケット製造の流れ。エンジンの燃焼試験は2週間程度かけて実施する

二村幸基技師長(右)と安井正明H-IIA/Bエンジンプロジェクトマネージャ

燃焼試験は最大2回行う。1回目は無調整のまま実施する「作動確認試験」で、ここで推力と混合比を確認。誤差が許容範囲内であれば合格となり、2回目は行わない。もし許容範囲外だったら、オリフィス板の穴の大きさで液体水素と液体酸素の流量を調整して、2回目の「性能確認試験」を実施する。2回目の試験で不合格となることはまず無いそうだ。

LE-7Aエンジンの推力は112トン。これは、エネルギーとしては900MWにもなるそうだ。燃焼の圧力は125気圧で、ノズルから排出される燃焼ガスの速度は音速の5倍にも達するという。これを、400mほどしか離れていない場所から見学するわけだ。

LE-7Aエンジンは1基でジェットエンジン4基分の推力を発生する

燃料は液体水素で酸化剤は液体酸素。混合比はこの両者の比率だ

説明してくれた同社H-IIA/Bエンジンプロジェクトマネージャの安井正明氏によれば、これほど近いと「音ではなく、圧力波のような感じで体験できる」という。しかも打ち上げと違い、飛んでいかないので、エンジンはずっとそこにいる。燃焼試験の50秒間、轟音が変わらず続く。打ち上げ以上の迫力と言えるかもしれない。

この日は気温が高く、エンジンの予冷に時間がかかってしまい、試験の開始が予定よりも遅れたが、午後4時に点火。この轟音はとてもPCのスピーカーでは再現できないが、以下に動画を掲載するので、迫力を感じ取って欲しい。

LE-7Aの燃焼試験を行う「100トン級エンジンシステムテストスタンド」

エンジン本体は左側に隠れて見えない。赤い燃焼ガスが激しく吹き出す

LE-7Aの燃焼試験(ズーム)

LE-7Aの燃焼試験(ワイド)

H3ロケットでは第1段を再現

H-IIA/Bロケットの後継機として、現在開発が進められている新型ロケットがH3だ。H3ロケットの第1段には、新型の「LE-9」エンジンが搭載される。このLE-9エンジンはいまエンジニアリングモデルを製造中で、今年度後半に、種子島宇宙センターでエンジン単体の燃焼試験が行われる予定だ。

H3ロケットの概要。2020年に1号機が打ち上げられる予定だ

第1段エンジンは新型のLE-9、第2段エンジンは改良型のLE-5B-3に

では田代試験場で行う試験は何か、ということであるが、これはその後、2018年度に実施する予定のステージ試験になる。ステージ試験では、エンジンのほかに燃料/酸化剤タンクも用意して、第1段をまるまる模擬する。田代試験場には、ステージ試験のためのテストスタンドも別途用意されており、H3ではこれを改修して使用する。

これがステージ試験を行う「100トン級ステージテストスタンド」

田代試験場におけるステージ試験は、2008年に、H-IIBロケットの開発で行われたのが最後。このときは、2基にクラスタ化したLE-7Aだったので、推力は合計224トン。しかし、H3では推力が3割以上アップしたLE-9が3基になる。推力は合計450トンで、今までの2倍の力が発生。とても現状のままでは耐えられないので、補強が必要になるというわけだ。

2008年に行われたH-IIBロケットのステージ試験

また、H3ロケットの第2段エンジンは、現行エンジンを改良した「LE-5B-3」になる。このエンジンについては、エンジン単体の燃焼試験が田代試験場にて実施される予定とのことだ。

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