2016年は、日本の家電産業にとって、大きな節目を迎えた1年になったといえるだろう。シャープと東芝の2つの家電事業が、海外資本の企業のもとで再スタートを切ることになったからだ。

016年4月2日、台湾の鴻海精密工業は、シャープを約3,888億円で買収することで正式に調印した。10月5日までに払込が完了する予定であり、なるべく早いタイミングで払込が行われる方向で調整が進められている。

「目のつけどころがシャープ」のキャッチフレーズが浸透しているように、白物家電を中心に、ユニークな製品でファンを掴んできたシャープ。1912年の創業以来、104年の歴史を持つ企業が、大手電機メーカーとして初めて海外資本のもとで再生を図ることになる。いみじくも、社名となったエバー・レディー・シャープペンシル(現在のシャープペンシル)を発売した1916年からちょうど100年目の出来事となった。

白物家電のDNAは海外資本で生き残れるか

東芝本社ビル

そして、2016年6月30日、東芝は、白物家電事業を世界第2位の白物家電メーカーと言われる中国の美的集団(ミデアグループ)に売却した。白物家電事業を担当する東芝ライフスタイルの株式の80.1%を、美的集団に約537億円で譲渡。東芝も一部出資を維持するものの、連結対象からは外れることになる。

1894年に、日本初の電気扇風機を発売したのを皮切りに、冷蔵庫や洗濯機、アイロン、電子レンジなど、東芝は日本初の家電製品を作り続けてきた歴史を持つ。その歴史ある家電事業は、中国企業のもとで継続することになった。

シャープも東芝も、白物家電製品には引き続きぞれぞれのブランドを使用することが決定しているが、海外資本の傘下という点だけをとっても、これまでとは異なる環境のなかで開発、製造、販売が行われることになるのは明らかだ。長い歴史を持つ両社の白物家電事業のDNAが、今後も継続されるのかが気になるところだ。