TOKYO MXほかにて2016年7月4日より放送中のTVアニメ『SHOW BY ROCK!! しょ~と!!』。サンリオによるバンドをテーマとしたキャラクタープロジェクトとして2013年に始動し、同年にアプリゲームをリリース。2015年にはTVアニメ第1期の放送が開始され、「サンリオキャラクター大賞2015」では10位以内に3バンドがランクインするなど、まさしく『SHOW BY ROCK!!』の年だったといえる昨年。

稲川英里(いながわえり)。1993年10月28日生まれ。賢プロダクション所属。主な出演は『SHOW BY ROCK!!』シアン(聖川詩杏)役、『アイドルマスター ミリオンライブ!』大神環役、『Tokyo 7th シスターズ』夜舞サヲリ役、『迷家-マヨイガ-』ニャンタ役など
撮影:西田航(WATAROCK)

今回は、現在放送中の『SHOW BY ROCK!! しょ~と!!』と10月からスタートする第2期を記念し、シアン(聖川詩杏)役の稲川英里にインタビューを実施。しゃべるたびにころころと表情が変わり、時に笑い、時に涙ぐむ、天真爛漫という言葉がぴったりな稲川に、シアンに対する想いや、これからの展望、そして自身の8割を構成しているというゲームについて熱く語ってもらった。

サンリオさんのキャラクターや~~~!

――まず、稲川さんがシアン役に決まった経緯からお伺いしたいと思っています。

最初はアプリゲームという話でもなく、サンリオの新しいキャラクタープロジェクトとしてオーディションを受けさせていただきました。私が声優デビューしてまだ一年経っていない頃だったので、2012年から2013年くらいですね。シアンの家は骨董品店で、そこでギター・ストロベリーハートと出会ったり、ゴスロリ服は自分で作ったりと、当時からキャラクター設定はしっかり決まっていましたね。

――オーディションは最初からシアン一択?

はい、黒猫が好きなので!「シアンの顔は白いけど、耳や尻尾は黒いので半黒なのかな? うれしいな~」って思いながらオーディションを受けました。

――オーディションで印象に残っているセリフはありますか。

「なんとかかんとかで行くよ! ストロベリーハート!」みたいなセリフがあったんですけど、その時の声で「シアンだ」と思ってくださったみたいです。その後、最終選考くらいまで残っているというお話は聞いていたんですけど、オーディションが終わってから半年くらい連絡がなかったので、もうダメだって思っていたんですよ。

――そこで合格連絡が。電話ですか?

そうです! 事務所から電話がかかってきて、もう「おっひょ~!」でした。「サンリオさんのキャラクターや~~~!」って、もう泣きましたね~。人生で数えるくらいの嬉し泣きでした。正式に発表があるまで誰にも言っちゃダメだったんですけど、内緒で母にだけ伝えたら、母も「ササササンリオさんの……」と言いながら「びえ~~~ん」ってふたりで手をつないで泣いていました。初めてオーディションに受かったキャラクターですし、某キティさんや某マイメロさんと同じサンリオチームに入れる機会をいただけるとは思っていなかったので、もう忘れられないですね。

――最初にシアンとして演技をしたのは、2013年5月10日からニコニコ動画やYouTubeで配信されたwebアニメですね。

あの時はもう……フルボッコでしたね。できなさすぎて。演技してもドラネコみたいな感じになってしまって、いろいろとディレクションしていただいて、「ひぃぃぃいい~~」って思いながらアフレコをした記憶があります。当時の自分としては一生懸命やった結果があれなんですけど、とにかく自分の技術や芝居の足りなさ、欠点をすごく自覚したとともに、ガクっと挫折しました。


――ものすごく鍛えられたんですね。もともとあったキャラクターに声をあてているのではなく、『SHOW BY ROCK!!』もシアンも初めてのキャラクターなので、一緒に成長していっていますね。

そうなんですよ。じっくりと向き合っていただけたのでありがたかったです。年齢性別問わず、幅広い人に好きになってもらえる作品になるといいな、私もその手伝いができたらいいなと思っていましたし、シアンに成長させてもらった実感は強いです。

――その後、2013年7月30日にiOS版としてアプリがリリース(Android版は2014年6月27日から)。そして、2015年4月5日にTVアニメ第1期がスタート。最初にアニメ化の話を聞いたときはいかがでしたか。

「うわぁ~~」って、とにかくビックリした記憶しかないですね。バンドも相当数いるし、どうやってアニメ化するんだろう。またwebアニメみたいなギャグテイストかなって。でも、キャラクターたちがテレビの中で動くんだと思ったら、一ファンとしても感動しました。

出したあとにまた引っ込めないといけない

――よく稲川さんがおっしゃられているのが、「アプリのシアン」と「アニメのシアン」の違いを掴むのが大変だったと。

シアンは音楽が好きという根底の感情や、素直で物事をまっすぐ見ることの出来る子ですが、いかんせん生まれも育ちも違うじゃないですか。どうするべきかはすごく悩みました。

――アニメでは、シアンが「MIDI CITY」に迷い込んでしまった人間として登場しましたね。

そうなんですよ~~。「本名も聖川詩杏? オオオオー?」って。性格もおどおどしているし。でもいままでこういう役をレギュラーで演じさせていただいたことがなかったのでとても刺激になりましたね。

――アニメでシアンを演じる上で、どんな説明を受けましたか?

「内に入れて」とすごく言われました。シアンは引っ込み思案なので、自分の感情を出してしまうと、強くて芯のある子になってしまうんです。「どうせあたしなんて……」というセリフのときは「体を引いて、内に入れて」と指摘されました。私自身、人見知りだけどグイグイ行ってしまうタイプなので、常に意識していましたね。でも、シアンはステージ上では音楽のおかげで素直に楽しめる強い子になるんですけど、ステージから降りるとまた戻ってしまう。出したあとにまた引っ込めないといけないので、これは大変だなと思いました。

――「特にここが苦労したな」という話数は。

やっぱり1話です。1~2話は自分から発信するセリフが多かったんですけど、3~4話から、相手のセリフを受けて返すというシーンが増えてきて、この辺りで掴めてきましたね。相手がグイっと来てくださるから引ける。自分から発信ばかりしているとだんだん前に出てしまうんです。

――そこで腑に落ちたんですね。

自分の中で飲み込めたと感じたのは、「シアンがいろいろな経験を積んで成長して、自分自身を解放できたときに、ロックでキュートでチャーミングな女の子になるのかな」と思った瞬間ですね。そこでやっと折り合いが付けられたかなって。

――アプリの音声は基本的に一人で収録しますけど、アニメになるとほかの役者さんとの掛け合いが発生します。収録の際に感じたことなどは。

『SHOW BY ROCK!!』は芯のあるキャラクターが多いので、その芝居に引きずられてしまうことが何回かありました。相手の言葉や気持ちを受けて反射的に出てしまうことがあったので、序盤はリテイクを重ねてしまい、苦労しました。

――2016年6月11日に行われたイベント「『SHOW BY ROCK!!』」全12話一挙上映! すっごくぷるぷるでうるおってきたわぁ~の巻」でも、「1話の演技を観るとお腹が痛くなる」とおっしゃっていましたね。

もう観たくなーい! 『SHOW BY ROCK!! しょ~と!!』に向けてDVDを全部観なおしたんですけど、お腹が痛かったなあ。何度も、DVDを停止してディスクを出したいって思いました(笑)。当時の自分としては精一杯の結果だと思うんですけど、いま考えると「もうちょっとここできたな」って。でも、そういう反省点が出るということは少しは成長できたのかな。