夏のボーナスも入ったし、もうすぐリオ五輪も始まるし、そろそろ4Kテレビに買い替えようかと検討している人もいるだろう。国内では4Kテレビの普及が進み、メーカーがイチオシする大画面テレビは4K対応のモデルが中心になっている。まさに買い時を迎えているところだが、その4Kテレビに関連して「HDR」というキーワードが注目されているのをご存知だろうか。本稿では、これから4Kテレビを購入するならばぜひ知っておきたい「HDR」とは何かについて、探っていきたい。

HDRの登場により、人の目で見る情景に限りなく近い映像をテレビに映せるようになった

HDRは「High Dynamic Range」(ハイダイナミックレンジ)の頭文字をとった用語で、従来では表現できなかった明るさ情報の幅を拡大するための高画質化技術である。人間の目は、自然界にある明るさのダイナミックレンジ(最小値と最大値の幅)を「100,000:1」のレベルで認識できると言われているが、従来のテレビ技術では、1,000:1の範囲までしか表現できなかった。HDR技術の登場により、映像伝送の能力が100,000:1の領域にまで到達したことから、人の目で見ている情景に限りなく近いレベルでの明るさや色合いをテレビに映せるようになったのだ。

UHD Allianceが発表した「ULTRA HD プレミアム」ロゴ

HDRコンテンツの魅力を味わうためには、HDR対応のカメラで撮影されたコンテンツと、HDR対応のテレビやディスプレイ機器が必要だ。2016年の年初には、世界の大手テレビメーカーやハリウッドのメジャー映画スタジオ、配信サービス事業者などによる団体「UHD Alliance」が、4K HDRの品質基準を明確化しエンドユーザーにその違いを正確に伝えるため、「ULTRA HD プレミアム」ロゴの認証プログラムを立ち上げた。4K HDR対応の表示装置、コンテンツ配信サービスとは何かを明瞭にすることがねらいだ。ソニーも頃合いを同じくして、年初に独自の「4K HDR」ロゴを発表。BRAVIAシリーズなど4K HDR表示の品質を満たすソニー製品に適用している。今後はこれらのロゴが、4K HDR対応の機器やコンテンツサービスを見分けるための指標になりそうだ。

2K(フルHD)よりもさらに高画質であることをうたってきた4K品質の映像を、さらに高画質で楽しめるようになる技術がHDRである。そして、その実力を味わえるテレビが国内各メーカーから出そろい、コンテンツが徐々に増えているのだ。国内ではNTTぷららが提供する、動画や音楽コンテンツを含むマルチメディアサービス「ひかりTV」が、昨年の11月30日から4K HDRのVOD(ビデオ・オン・デマンド)をスタートした。今回はNTTぷららの技術開発陣を訪ね、「HDRの魅力」を語ってもらった。

左から、NTTぷらら コンテンツ戦略部 映像技術担当の朝川大輔氏、技術本部 技術本部 技術開発部長の宮里系一郎氏、技術本部 技術開発部の山本裕氏、ネットワーク管理部 チーフエンジニアの土井猛氏