【インタビュー】

「WWDC16」から帰ってきた近大生の山田良治さんを直撃! - 海の向こうの人は気軽にエンジニアになるんやと思いました

アップルの開発者会議「WWDC16」にスカラシップ(奨学金制度)枠で参加した近畿大学経営学部3回生の山田良治さんが帰国。果たして、どれくらい「楽しんで」こられたのか? 根掘り葉掘り、イベントの様子を訊いてみた。

山田良治(やまだ・よしはる) 1995年生まれで京都生まれ京都育ち。京都市立日吉ヶ丘高校の理数科を卒業し、近畿大学経営学部経営学科に入学(理数科を卒業しているが数学と理科は赤点で、生物と英語のほうが得意だった)。現在3年生で布施ゼミに所属し、サービスデザインの考え方に基づいて、ビジネスアイデアの発想やアイデアを形にする方法を学んでいる。大学入学直後の5月から独学でプログラミングの勉強を始め、同年10月に初アプリ「麻雀点数計算」と「サンマ点数計算機」をリリースする。その後、2年生の4月に「欠席管理アプリ」(現在のSchooLife)をリリースするも、自分の実力のなさに気づき1年間気持ちを腐らせて過ごす。3年になって心機一転気持ちを外に向け、新しいチャレンジをするぞという思いがあり、今回のWWDC参加を決意。また、近畿大学のビジネスプランコンテストに出場が決まっている。写真は、初日のkeynoteを待っている時に撮ってもらったもの。風も吹いていて、12-3度の気温で寒いので厚着をしている(以下、写真のキャプションは山田さんによる)

WWDC(Worldwide Developers Conference)は、アプリの開発者や技術者に向けて例年6月に開催されている。アップルがそこで実施しているスカラシップは、世界各国の学生を対象に同イベントのチケット代金を無償で提供するというものである。基調講演では、今回、350人分の枠が用意されていたことが明らかになった。

会場となったモスコーニ・センターの中にあるWWDCの看板

モスコーニ・センターを外から撮影した様子

応募資格は13歳以上で、学生であれば、パートタイムでも可。13歳以上のSTEM(科学技術教育)団体メンバー、あるいは卒業生も応募できる。今回はなんと9歳の女の子がその枠を獲得し、話題となった。

筆者は渡米直後の山田さんの動向をFacebookを通じてチェックしていた。最初のうちは会話するのも難儀だったとか。

山田さん 大変で凹みもしました(笑)。日本で練習してた時は、相手がわかりやすくというか聴きやすく喋ってくれていたんだなあって。実際向こうへ行くと、ベラベラっとスピード速いんですね。「ちょっとちゃうな」という感じで、学生の集まりに入りきれなくてショック受けました。

――という状況下で、居直るというわけではないが、3日目くらいからは、皆が単独行動をとるようになったのを見て、そんなに固まって動かなくてもいいんだと思うようになり、気ままに振舞うようになったという。友人もできたようで、Union SquareのApple Storeで会った学生とは、Facebookで友達になったと報告してくれた。友人になったのも、世界各国、いろんな地域から来た人々だとのことだった。年齢も、教師用のプログラムを活用してきた高校の教員から、前述の9歳の子までさまざまだったと話す。

クレイグ・フェデリギとの2ショット。ちょっと照れくさくて肩をひいてしまった

――今回参加してみて、一番勉強になった点はどんなところか訊いてみたところ……。

山田さん えーと……世界は広いってところですかね(笑)。日本と向こう=海外との違いはよくわかりました。日本はエンジニアが少なくて、割とひどい扱いとか、難しいと思われていたり、というのは、まさにそうでしたね。向こうの人は女性も結構2割か3割いらしてて、モデルとかの方でいらっしゃりそうな格好いい人でもエンジニアやし、っていうのはありました。やっぱり気軽にエンジニアになるんやと思いましたね。あと、「君のアプリどう?」とかって互いのアプリを見比べたりしたんですけど、意外と、学生レベルだと大差ないかと思いましたね。

――つまり、集まっている人は同じスタートラインに立っているような状況なのだろうか?

山田さん なんか、そんな気はしました。確かに日本から来ていた、ほかの社会人の方とかも、プロでやってる方は凄い人が集まっていたという印象です。アマチュアとプロとで、すごい差があるけど、日本と海外の学生の間の技術的・製品的なレベルの差はそう感じなかったです。

――となると、スカラシップ参加者は皆、プロレベルまで自分をどう高めていくかが問題として重要なのだろうか?

山田さん うーん、と言うか、最初から会社に入ってやっているわけじゃないので、面白いことをやろうとか、新しいジェスチャーを試そうとか、根本的に製品レベルで物事を考えていないんですよ。面白いこと、新しいことをしようという意識でやっているからそんなに感じなかったというのは、あります。

――言い換えると、良い意味でアマチュアリズムが活きているということなのだ。実際、Apple Design Awardにおいて、学生部門で表彰されたアプリでも、この機能のここが面白いという初期衝動一発のアイディアが昇華されていることが伺えた。

WWDCではお馴染みの、濃厚100%フルーツジュース「odwalla」。サンドイッチとハンバーガーに頼る食生活のなかで唯一の栄養源

モスコーニ・センター1階のSwiftでいろんなことが書かれた壁の前でセルフィー。ちょっと目がチカチカする

keynoteのために朝3時から並んでいて、その時の写真。だいたい6時か7時くらいには明るくなってくる

時間がもっと早くて暗い時バージョン。4時くらい

――他には、デザインセッションが面白かったとのことだが……。

山田さん やはりアップルさんはデザインの概念すごい大事にしてらして、作るのと同様にデザインをどう見せるかが重要やと思うんですけど、それを如何に考えていくかということなのかなと。説明するの難しいんですが、ふたりのスピーカーさんがいらっしゃって、レストラン経営するとしてアプリを作るときに8個くらいデザイン案出して、「オレはこれ嫌いだ」「こっちが嫌いだ」って言っていって1つ残すっていうのがあったんですね。出すだけ案を出して最後に勝つのをひねり出すというセッションだったんですけど。それをkeynoteを使って実際のデザインを作るというのもやってはったんですが、帰ってきて僕はAdobeのXDていうソフト使ってアプリのプロトタイプを作るっていうのをやってみました。向こうで美しいプロトタイプを作るのを見て、その後、自分で取り組んでみて、かなり上達したのではないかと思ってます。プログラミングは、皆さんコードを書いてみないと分からないという感じだったので、視覚的にああ凄いと感じるのは全て、デザインのほうですね。

――もうひとつ楽しみにしていたというユーザーインターフェースのコンサルタントのほうはどうだったのだろう?

山田さん こっちも凄かったです。自分でアプリ作っていると、「こうじゃなきゃいけない」という思い込みがどこかにあったのですが、そういった凝り固まった考えを壊してもらえた気がしてます。「君は何が大事なんだい?」とか言われて。相談ごとを誰かにするときって、意外とこちらが質問することに相手がこう答えるというのを頭で決めていたりするんですけど、彼らは一緒に答えを探してくれました。丁寧に、ていねいに。

――セッションに色々参加してもちろん技術的に学ぶことも多かっただろうが、それ以外のことでも多くのことが得られたという印象だ。

山田さん そう、そうです。セッション終わったあとも本当に、試したい人はすぐそこのラウンジに行ってガーっとコード書いたり、というのが何十人もいたりとか、何だろう、こう、普段大学生活をしている中で、得られないような、向こうのエンジニアの当たり前とか、そういうエネルギーを感じたというか、「自分って頑張っていないんだなあ」とか、メンタル面で大きく影響受けましたね。あと、さっき言ったとおり、デザインに関する概念が更新されたところも。開会前日にオリエンテーションがあったんですけど、そこのセッションも、プログラムの話をするのかと思ったら、デザインとパッションの話だったんですよ。そういうのもあって。

セッション後にみんな一斉にプログラミングを始めた。自分もこの様子を見て火がついた

モスコーニ・センター3階のバルコニーから。前の映画館にもWWDCの看板が

オリエンテーションの案内看板

――現在、山田さんには自身の中で、4つ大きなテーマがあるという。それは「エンジニアリング」「会計」「英語」「音楽」だそうだ。ひとつひとつ、どんな目標を掲げているのか、また、取り組みをしていくのか訊いてみた。

山田さん エンジニアリングは、自分のレベル不足に気づかされたので、中途半端じゃなく、どっぷり浸かりたいと思いまして。目標としたら100万DLされるアプリを作る。アイデアは実はもうありまして、それを作るというだけですね。まずXDでデザインのプロトタイプをつくって、あとはデザインをする。やるだって状態になってます。

会計は、大学の講義で「意思決定会計」というのがあって、企業の財務諸表を読んで経営状態を探れって内容なんですが、興味のあるアプリのを見ていたら、ゲームのアプリ会社の売り上げに対する収益率がえげつないんですよ。確かにこれを見るとアプリのゲーム会社やりたくなるなと。で会計を勉強したいなと思って日商簿記一級のテスト受けて合格するぞと、インターネット見て勉強しています。

英語は、まさにこのWWDCでショックを受けて、ちょっとやり方が間違ってるなとか、努力が足りていないと真剣に思った時に、書く・聞くはしているんですよ。でも話すって、していないなって。これまで受けてきた教育で話す練習って特にしていなくて、話す機会を持たなきゃいけないと思いまして、今「HelloTalk 相互学習 無料で英会話」っていう、言語交換のアプリを試してみたりとか、近畿大学にある英語村に毎日通ったりとかチャレンジしています。一対一のコミュニケーションだと話待ってくれるけど、6人とか10人とかで集まると、誰も待ってくれないんですよ。ババっと会話が進んでしまって。なのでありきたりな答えしか出せなかったりとか、会話の質の違いがあって、それが今回できなかったので。

音楽は、14歳からギターを始めて、ジェフ・ベックとか、エリック・クラプトンをやっていると言っていたんですけど、実際にこう適当に曲を聴きながら弾き流していただけというか、本気で真面目に音楽に取り組んで挑戦した経験がなかったんですよ。いまエンジニアとしてやってるなかで、真剣に取り組んで何かに挑戦するというやり方がわかったので、WWDCを経て、全部のことを全力で頑張ろう、というので、音楽ももう一回やり直そうと。Youtubeで毎週一曲ぐらいコピーしてアップロードすることで、スキルも上がるし、誰かに見てもらえるというライブ感覚もネットで得る。この2つをやろうかなと。

――音楽だけ一見関係ないように思えたが、山田さんの中では密接に4つが絡み合っているのだ。今後やってみたいことはそれら4つ以外に何があるのだろう?

山田さん 働きたいというのはありますね、真剣に。この夏もインターンの予定入れましたし。エンジニアインターンで申し込んだんですけど、長い期間やれるのが、割と給料出るのが多くて。エンジニアばかり向かず他にもと思って、あとは金融系やコンサル系など色々なところに応募します、それは短いもので。

――WWDCのスカラシップにも、また挑戦したいそうだ。これについては……。

山田さん 来年も申し込みます。行かせてもらえるなら、行きます。3回来ているという人がいましたよ。いま17歳の子やったんですけど、インドの。「これで3回目」と言っていたので、たぶん14歳くらいからの3回目で。来年はもっとコミュニケーションもとって、今回できなかった楽しさを更に味わおうという目標が立ってます(笑)。

――先ほどの4つの目標を達成したら、それを手土産に、また是非WWDCに乗り込んでいって欲しい。山田さんは、とても素晴らしい経験だったので、一人でも多くの学生に知ってもらって、来年は日本からたくさんのスカラーが参加するといいなと最後にコメントしてくれた。誰でも枠に入れるというわけではなく、ある程度のスキルが必要ではあるが、我こそはと思う方には、ぜひ挑戦していただきたい。

最終日前日の夜に行われるパーティ「Bash」の様子。演奏に合わせてリズムをとったり踊ったりしてる人もいた

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