説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、『iPhoneのファイルシステムが変わるってどういうこと?』という質問に答えます。

***

ファイルシステムとは、記憶装置の使い方に関する仕様です。データを記録するときの手順や、どのような付随情報をどこへ保存するかといったルールを定義することで、ファイル利用の統一性を実現します。パソコンやスマートフォンでは、OSに含まれる基本機能として提供され、ハードディスクやフラッシュメモリなどのストレージは決められたファイルシステムに沿う形式で初期化(フォーマット)されています。

Mac(OS X)やiPhone(iOS)、Apple TV(tvOS)は登場以来「HFS Plus」というファイルシステムを利用してきました。長いファイル名を利用できる、英大文字/小文字を区別できるといった基本的なことはもちろん、現在の技術では使い切れないほどの大容量に対応し、耐障害性機能を備えるなどファイルシステムとしては一定の水準に達しています。

しかし、設計段階を含めると誕生から約30年という技術であり、ほかのOSで利用されている最新のファイルシステムと比べ見劣りする部分があることも確かです。そこでAppleは、新たに「Apple File System(APFS)」というファイルシステムを開発し、6月に開催された開発者会議(WWDC)で発表しました。

APFSのメリットは、ひとくちでいうと「秘匿性と安全性」です。ファイル単位での暗号化がサポートされ、盗難時・紛失時に重要な情報が漏れ出す危険性は低下しました。ファイルのスナップショット(ある時点における状態を保持したもの)を随時作成することで、ディスク破損時の損害を減らすことも改善されました。実感しにくい機能向上ではありますが、進化であり改良であることは確かです。

このAPFSは、デフォルトの(初期状態の)ファイルシステムとして、macOSとiOS、Apple TV向けに提供されます。ファイルシステムを変更/アップデートするときは初期化作業を伴うものですが、WWDCで公開された情報によれば、ファイルを残したままアップデートを実行できるそうですから、それほど苦はなさそうです。iPhoneの場合、システムアップデートとともに提供される可能性があるので、気長に公開を待ちましょう。

新ファイルシステム「APFS」はiOSにも採用され、2017には正式公開される予定です