群馬県沼田市は、2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』にも登場する「沼田城」があることから、現在"真田丸フィーバー"中。そんな沼田には、「東洋のナイアガラ」とも呼ばれる、息をのむような絶景「吹割(ふきわれ)の滝」があり、涼しげな絶景スポットとして"夏旅"の旅行先にオススメだ。今回は、沼田城址を見学した後、吹割の滝周辺を散策してみよう。

吹割(ふきわれ)の滝はそのダイナミックな様子から、「東洋のナイアガラ」と呼ばれている

五層の天守閣があったのはここと江戸城のみ

東京方面から沼田ICまでは、関越自動車道の練馬ICからおよそ1時間半。沼田ICを下りてから、沼田城址のある「沼田公園」までは車で7~8分ほど。電車で行くなら、JR上越線沼田駅より徒歩約15分となる。

越後や会津に通じる交通の要衝に位置する沼田に最初に城を築いたのは、土地の豪族の沼田氏で16世紀の半ば頃と伝わる。その後、上杉、武田、徳川、北条など戦国武将たちがこの地の争奪戦を繰り広げた。このような戦国時代の動乱を経て、天正18年(1590)に豊臣秀吉が小田原の北条氏を滅ぼし天下を平定すると、沼田城は正式に『真田丸』の主人公でもある真田氏の居城となる。

初代沼田城主となった真田信之と小松姫の像

沼田城主となった真田信之(1566~1658年、信繁の兄)は城郭の大改修を行うが、この時、驚くべきことに五層の天守閣を築いたのだ。江戸時代の初期、関東で五層の天守を持つ城と言えば、慶長12年(1607)に徳川家康により造営された江戸城の慶長度天守と沼田城の天守のみで、あの小田原城ですら三層の天守だった。

その後、天守は天和2年(1682)に幕府の命により取り壊され、現在は、真田氏時代の城の痕跡と言えば西櫓(やぐら)台の石垣がわずかに残るのみだ。かつて天守があったとされる場所に立ち、当時の様子を想像する以外、昔をしのぶ縁(よすが)はない。

なお、かつての本丸・二の丸・三の丸の多くが「沼田公園」として整備されており、公園入口の観光案内所で申し込めば、園内をガイドしてもらえる(ガイドは予約優先)。

ガイドさんが手にするのは、五層の天守閣が描かれた沼田城天守想像図

沼田公園から見た沼田市街地。かなりの高低差があり堅牢な城だったのがうかがえる

●information
沼田公園(沼田城址)
群馬県沼田市西倉内町594番地
アクセス: 関越道沼田ICから車で約7分、もしくはJR上越線沼田駅より徒歩約15分
駐車場: 普通車78台、混雑期は臨時駐車場あり
※2016年10月までは平日もガイド実施予定

緑豊かな渓谷の奥に「東洋のナイアガラ」

沼田城址の見学を終えたら、国道120号をいったん沼田IC方面へ戻り、さらに日光方面へ車を走らせよう。国道120号は、ドイツの「ロマンチック街道」になぞらえた「日本ロマンチック街道」の一部になっており、沼田市と栃木県日光市を結んでいる。沼田ICから20分ほどで、吹割の滝周辺にたどり着く。国道沿いには市営駐車場のほか、ドライブインなどもたくさんあり、よほどの混雑期以外は駐車するのに苦労することはないだろう。

吹割の滝の遊歩道入口

市営駐車場の近くに、「吹割渓谷 遊歩道」の入口を示す道標が立っているので、ここから遊歩道散策を開始する。緑豊かな木立の中を大自然の恵みを身体いっぱいに享受しながら歩いて行こう。しばらくは上り階段が続くので、しっかりした運動靴をはいていないと、意外にキツいかもしれない。

緑豊かな遊歩道。階段が多いので運動靴で!

遊歩道沿いには3カ所の展望台(観瀑台)が設けられており、それぞれ違った角度から吹割の滝を見下ろすことができる。浸食によってできた深い滝壺(たきつぼ)に向かって両岸から勢いよく水が流れ落ち、飛沫(しぶき)が吹き上がる様は、まさに「東洋のナイアガラ」の名にふさわしい。

展望台(観瀑台)からの眺め。「東洋のナイアガラ」というにふさわしい

観瀑台からの絶景を存分に楽しんだなら、遊歩道を下り、今度は滝を間近から眺めてみよう。本当に滝のすぐそばまで行くことができ、少し怖い気もするが、迫力満点だ。吹割の滝のやや下流には、もうひとつ「鱒飛(ますとび)の滝」もあるので、あわせて楽しみたい。

滝のすぐ近くまで行くことができ、大迫力

●information
吹割の滝
群馬県沼田市利根町追貝
アクセス: 関越道沼田ICから車で約20分、もしくはJR上越線沼田駅よりバスで約40分
駐車場: 市営駐車場(無料)のほか、ドライブインなど多数

イワナの塩焼きに舌鼓を打つ

絶景に満足したなら、そろそろ空腹を満たしたいところ。沼田と言えば味噌をつけてこんがりと焼き上げた「味噌まんじゅう」が名物として知られるが、今回はせっかく渓流に遊びに来たので、「イワナの塩焼き」(700円)と「ざる蕎麦」(700円)を食べてみた。柔らかいイワナを頬張り、滑らかな口当たりのひんやりとした蕎麦をすするにつけ、満ち足りた気分になってくる。

「ざる蕎麦」(700円)を「イワナの塩焼き」(700円)とともに

この城がきっかけで戦国時代に終止符!?

もし、時間に余裕があるなら、「戦国時代を終わらせるきっかけになった」と言われる「名胡桃(なぐるみ)城址」にもぜひ立ち寄りたいところだ。名胡桃城址は、沼田市の隣の群馬県利根郡みなかみ町にある。

秀吉の小田原攻めのきっかけとなった「名胡桃(なぐるみ)城址」

名胡桃城は豊臣秀吉の裁定で真田氏のものとされていたが、これを北条氏の家臣が攻め取ってしまい、この事件が引き金となり秀吉の小田原攻めが開始されたとされる。結果、小田原北条氏が滅亡し、戦国時代にピリオドが打たれたと考えられている。

名胡桃城は小さな山城に過ぎないが、現在、当時の郭(くるわ)の跡などがよく整備され、案内所や分かりやすい解説パネル等も設置されているので、観光という意味では沼田城址よりもむしろ見応えがある。また、城址の北端にある「ささ郭」からは周囲の山々や利根川の流れを一望できる。取材に訪れた日は残念ながら雲が多かったが、天気が良ければ谷川連峰や赤城山も見え、雄大な景色を楽しめるそうだ。

「ささ郭」からの眺望。天気が良ければ谷川連峰や赤城山も見える

●information
名胡桃城址
群馬県利根郡みなかみ町下津
アクセス: 関越自動車道月夜野ICから車で約2分、もしくは、JR上越線後閑駅または上越新幹線上毛高原駅よりタクシーで約10分

沼田は東京から決して近いとは言えないが、真田氏ゆかりの史跡を訪ねればドラマもより興味深く鑑賞できるだろうし、夏にピッタリな涼しげで迫力いっぱいの絶景もある。歴史ファンならずとも、今年の夏の旅行先に、もってこいではないだろうか。

※記事中の情報は2016年6月時点のもの。価格は税込

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に撮影・取材を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。