レノボ・ジャパンは6月末、NECパーソナルコンピュータの米沢事業所(山形県米沢市)でサーバの初期稼働テストなどを行う「米沢ファクトリー・インテグレーション・サービス」(米沢FIS)を報道陣に公開した。同社では今年の4月に米沢FISを米沢事業所で実施することを発表している。現地に赴き、見学してきたので、その模様をお届けする。

PC事業で培われた「米沢品質」

米沢事業所の歴史は古く、戦時中の1944年に米沢製作所として創業した。1983年に米沢日本電気が発足、翌年にはノートPCの生産を開始し、2001年に開発・生産機能を統合した。そして2011年にレノボ・ジャパンと提携し、現在のNECパーソナルコンピュータが発足した。

主要取扱製品はコンシューマ(家電量販店)、コマーシャル(企業、官庁、学校)向けデスクストップ、ノートPCなど2万種をBTO生産している。多品種の製品の生産を実現するにあたり、同事業所ではさまざまな施策に取り組み、2000年からトヨタの生産方式を導入したほか、ERPやRFID、QIM(Quality Inspection Management:検査、品質管理)などのITを活用している。

セル生産方式を採用

部品のピッキング

また、人材育成にも注力しており、改善マンや作業者を認定するマイスター制度や表彰制度も整え、従業員のモチベーション向上を図っている。生産・品質改善や人材育成などを積極的に進めたことにより、2000年度比で米沢事業所の生産性は8倍に向上し、棚卸回転は半減以下、業界最短の3日間でのデリバリーを可能にしたという。

さまざまな施策に取り組み「米沢品質」を築き上げてきた

米沢FISでも「米沢品質」を追求

レノボ・ジャパン データセンター・グループ事業本部 DCGソリューション本部 副事業本部長の橘一徳氏

レノボ・ジャパン データセンター・グループ事業本部 DCGソリューション本部 副事業本部長の橘一徳氏は米沢FISについて「オーダーを受けたサーバ製品の内蔵オプションのキッティング、ラッキングおよびケーブリング、ソフトウェアインストレーション、各種設定サービス、出荷前のDIAG/エージングテストを行う。当面はサービスプロバイダーやハイパーコンバージドコンピューティングなど、まとまった台数のサーバをラックのソリューションとして使うユーザーを対象としている。われわれとしては大規模システムのユーザーであれば米沢の専用のファシリティを使い、専任のエンジニアが作るラックソリューションをユーザーが活用するとともに、販売パートナーも自社のビジネスインフラとして使用してもらいたいと考えている」と説明した。

サービスの流れ

サービスの内容

米沢FISは米沢事業所の一部スペースに開梱・外観・内観・キッティングエリアとラッキングエリア、機能検査・OSインストールエリア、梱包エリアなどを設けており、対象製品はSystem x、Converged HX Series、Flex System、NeXtScale、ストレージ製品だ。

米沢事業所の一角に作業場を設置

サーバにOSをインストール

ラッキング、ケーブリングし、提供することも可能

作業チェックシートは作業担当者の顔写真とサインが入る

NECパーソナルコンピュータ 生産事業部 生産事業部長の竹下泰平氏

同サービスは、海外工場から出荷されたサーバ製品を外観検査、構成チェック、コネクタ接続を目視確認し、内蔵オプションを実装したうえで、初期稼働確認、RAID設定、ファームウェア更新、OSインストール、ソフトウェアインストール、ラック搭載、個別カスタマイズを行い、その後は同梱物確認、外装検査、運搬・搬入する。

NECパーソナルコンピュータ 生産事業部 生産事業部長の竹下泰平氏は「2015年からThinkpadの生産を開始し、そしてファクトリーインテグレーションサービスをサーバの分野で可能とするのは大きなマイルストーンではないだろうか。トヨタ生産方式をサーバインテグレーションにも適用し、サーバ版マイスター制度も計画している。今後もITによる効率化を図り『米沢品質』でレノボに貢献する」と述べた。

これまで米沢事業所におけるPCの生産で培った生産・品質改善のノウハウを米沢FISに展開していくほか、マイスター制度などの採用も予定しており、同サービスに対するレノボの意気込みが伺える。

レノボ・ジャパン データセンター・グループ事業本部 事業本部長の上原宏氏

そして、レノボ・ジャパン データセンター・グループ事業本部 事業本部長の上原宏氏は「今後はサーバというシステムを核にストレージやネットワークをソフトウェアが定義していく世界に移行していくため、それらに対し米沢FISといった付加価値サービスなど、さまざまな取り組みを進め、市場でも存在感を高め、製品をユーザーに提供していく」と力を込めた。