2016年7月9日(土)から、ウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンオーブ』の放送がスタートする。ウルトラマンシリーズの原点にあたる『ウルトラマン』(1966年)の放送から50年というメモリアルイヤーに登場する新たなウルトラマンは、歴代ウルトラヒーローの力を借りて戦う斬新なスタイルとなった。ウルトラマンオーブは、普段は正体不明の風来坊クレナイ ガイという青年に姿を変えている。彼ははるか昔に封印され、現代に復活した「魔王獣」を倒すことで、ウルトラフュージョンカードを入手。これを2枚組み合わせ、ウルトラヒーローの能力を使いこなすのだ。

田口清隆監督 撮影:大塚素久(SYASYA)

シリーズの世界観を構築し、全体のストーリーを組み立てる重要な役目を担うメイン監督には、昨年の『ウルトラマンX』に続いて田口清隆氏が選ばれた。ここでは、2年連続でメイン監督を務めるにあたり、前作とどう変化をつけるのか、そしてウルトラマンシリーズ放送開始50年ということで、どのような「仕掛け」を盛り込んでいるのか、などを田口監督にじっくりとうかがってみた。このインタビュー記事を読めば、新シリーズ『ウルトラマンオーブ』に一層の期待が高まること間違いなしである。

――田口監督に新作ウルトラマンのメイン監督を……というお話が来たのはいつごろだったのでしょうか。

『ウルトラマンX』劇場版の仕上げ作業をしているタイミングでしたから、昨年の暮れあたりですね。いきなり大岡(新一)社長に社長室へ呼ばれて、集められた今回のプロデューサー陣全員の前で「来年もメインをやってもらいたい」と言われたんです。それはもう、お断りできないですよ(笑)。

――ここ数年のウルトラマンシリーズで、2作続けてメイン監督を担当されるのは異例のことだとうかがいました。

基礎設定を作る際、今回のシリーズでは「防衛隊」に重きを置かないことが早々に決定していました。僕自身、防衛隊を描くのが大好きなものですから、得意な武器を封じられた感覚だったんです。そこで、僕の知りうる最強最後の武器として、メイン脚本を中野貴雄さんにお願いしようと思ったんです。

――中野さんは小林雄次さんと共に『ウルトラマンX』でもシリーズ構成に参加されていますが、メイン脚本として第1、2話から取り組まれるのは初なんですね。

中野さんも僕も『ウルトラマンギンガS』の「ガンQの涙」や『ウルトラマンX』の「激撮!Xio密着24時」のような、メインのお話と離れた脇のエピソードを担当して、思い切り遊ぶのが好きなほうなんです。でも今回は、初めからタテ軸(メイン)のお話しかやらせないぞ、と言われていて、だったらタテ軸回、遊びの回といった区分けをなくして、全話に遊びの部分を加味したシリーズにしたいと提案したんです。「通常は3番手、4番手で、いたずらをするタイプの僕たちが先頭に立って作ったら、何が起きるのか」というウルトラマンにしていこうと口説いて、引き受けていただきました。

――ウルトラマンシリーズの放送開始50年の年に放送する作品というのはどういった部分で意識されましたか。

実は、去年の『ウルトラマンX』を作った時、今年またもう一作メイン監督をやるなんて考えてもいなかったので、自分の中での「ウルトラマン」50年の集大成的な要素はすべて『ウルトラマンX』に盛り込んでいたんですよ。さらに劇場版も監督することができて、もう「ウルトラマン」の集大成はやりつくした思いでした。

そういった意味で僕にとって『ウルトラマンX』がゴールというべき作品だったので、次に担当する作品は新たなスタートを切る作品にしたかったんです。ヒーローキャラクター的にはウルトラマンやウルトラマンティガの力を借りて戦う設定が決まっていたので、そこからさらに設定や世界観で過去作品を思わせるような仕掛けはいらないだろうと割り切りました。